夏思いが咲く

ぴおに

第1話 嘘

 彼と例のテーマパークへ行きたかった。

 私の住む街からは遠いので泊まりになる。

 アルバイトをして旅費を準備した。

 後は、親に何と言って出るか。


「友達の家に泊まりに行く」


「誰の家に行くの?連絡先を教えて」


 そうだよね、そうなる。


「友達と旅行へ行く」


「誰と行くの?」


「○○ちゃん」(ごめん!)


「何処へ行くの?宿泊先の連絡先を教えて」


 これなら大丈夫かな?


「念のために○○ちゃんのお家の連絡先を教えて」


 そうなるとマズい。




 どうしようか考えていた私に、悪魔が囁いた。


「夏休みに理科の校外学習として海辺で一泊二日の合宿があります。希望者は期日までに申込用紙と費用を提出するように」




 これしかない。




 費用とハンコを親に貰わなければいけない。

 お金はあるから貰うのは気が引けるけど、自分で出すと言うのも不信だ。怪しまれるかもしれない。

 母は日々節約している。一万円の出費は安くはないはずだ。だけど……高2の夏には代えられない。




 緊張して手汗がすごい。全力で『普通』を作った。


「お母さん、コレ行きたいんだ」


「合宿?……一万円……分かったわ。用意しておく」


 学校から配られたプリントには宿泊先も連絡先もすべて書かれている。

 拍子抜けするくらいあっさり信じてくれた。





 お母さん、ごめん。






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