鏡の中の少女

勝利だギューちゃん

第1話

「合わせ鏡」


午前0時に合わせ鏡をすると、何かが見えるという。

守護霊だったり、自分の未来の姿だったり・・・


オカルト好きな連中は、やたらと騒いでいるが、

俺は全く信じていない。

世の中は、合わせ鏡だらけ。

気にしてたら、生活できない。


しかし、興味の尽きない年頃でもある。


今夜辺りやってみよう。

【ウソだと照明するために】


もし本当なら、再現VTRに出ている連中は、ただではすまないだろう。

やらせなのだ。


「そういえば、未来の結婚相手が見えるてのもあったな。

俺を選ぶ物好きな女がいたら、ぜひ、拝んでみたい」


午前0時


少し前に洗面所の鏡の前に立つ。


「お兄ちゃん」

「どうした?」

妹に声を掛けられる。


「合わせ鏡をしても、何も見えないよ」

お前もやったんかい。


さすが、我が妹。

血は争えない。


しかし、一応やってみよう・・・


5・4・3・2・1


午前0時になった。


「やあ、やっと会えたね」

鏡の前に女の子がいた。

歳は俺と同じくらい。

妹とは違う。


「君は、誰だ?」

「私、君の未来のお嫁さんだよ」

「お嫁さん?名前は?」

「それは言えないな・・・もし、気不味くなったら、あれだから・・・」

あっけらかんと答える。


「俺と君とは、もう会っているのか?」

「まだ、会ってないよ。直接はね」

「直接は?」

「うん」

俺には、ペンフレンドはいない。


SNSもしていない。

ユーチューバーでもない。

バーチャルでの交流は、全くない。


でも、どこかで出会っているような、そぶりだ・・・

どこで、出会っている?

少なくとも、俺の事は知っているようだ・・・


「じぁあ、何でそこにいるんだ?」

「未来の君が教えてくれたんだよ。○年の△月×日に、合わせ鏡をしたって」

「そんなの、今の俺が知るか」

「ごもっとも」

鏡の中で頭をかいている。


「で、未来の俺はどうしてる?」

「それは言えないな・・・でも、元気で幸せに暮らしてるよ」

「本当か?」

「私が、奥さんだもん」

自分で言いますか?


「でも、若いな。いくつだ?」

「女性に歳訊くな・・・なーんてね。今の君と同じ歳だよ」

「何か違和感があるな・・・」

「お互いにね」

未来から来たのなら、その姿でないのは、なぜだろう?


「そろそろ時間だから、行くね」

鏡の中で女の子は、手を振る。


なんだったんだ?

一体・・・


「最後に、未来の君からの伝言」

「何?」

「たまには、旅をしなさい」

「わーったよ」

女の子は消えた。


そこには、俺の姿が写っていた。


旅か・・・

行ってみようか?

今度の休みに・・・


もしかしたら、正体がわかるかもしれない・・・

もしかしたら・・・

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