虫の知らせ

乃木希生

第1話

「ミーン、ミンミン。ミーン、ミンミン。」

セミが大きな声で鳴いている。地上で生きられる僅かな時間を嘆くかのように、ただただ力の限り泣いている。その泣き声は、自分がこの世に存在していた事を誰かに覚えていて欲しいと懇願しているように。僕には、それが親しい人の死を知らせる【虫の知らせ】のように思えた。きっと、今も世界中のどこかで【虫の知らせ】を受け取っている人がいるのだろう。

『何故かって?』

それはこれから僕が人を一人、殺そうとしているからに決まっているだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る