コント『一足先』

さかなへんにかみ

コント『一足先』

A:強気。

B:弱気。

2人が教室隅でしゃべっている。


A:いいか設置する爆弾は三か所だ。朝9時に同時に爆破する。

B:なあ、やめようよこんなこと。

A:何言ってんだ何か月も前から相談してきただろ。

B:そうだけどさ。やっぱりよくないよ。その、体育祭が嫌だから爆弾仕掛けるなんて。

A:おい!俺たち体育欠席連盟の意志を忘れたのか!「自分の意志でさぼると変な感じになるから仕方なく欠席した感を演出する」、ほら復唱。

B:「自分の意志でさぼると変な感じになるから仕方なく欠席した感を演出する」。大体連盟っていっても僕たち2人だけじゃないか。

A:うるさい!天気予報では体育祭当日は快晴。仕方なく体育祭を中止にするにはもはや爆破しかない。

B:そうかな。ていうか普通に休めばいいじゃん。風邪ですって連絡して。

A:馬鹿野郎!(Aを殴る)

B:え

A:全然自然じゃない!普段からやる気ないやつが当日休んだらばれるだろ!あいつやったな、って思われるだろ。

B:それは嫌なんだ。

A:嫌だよ!体育会系のやつから何か言われるに決まってる。

B:本当に体育会系の人嫌いだね。

A:嫌いだよ!なんだ体育「会」って。勝手に団結するな。俺を疎外するな。

B:別にそういう意図があるわけじゃないと思うけど。

A:なんだ体育会系の肩を持つのか。

B:そういうんじゃないけど、今のAにはついていけない。

A:ふん。俺だって、お前みたいな腰抜けはいらないね!

B:腰抜けは、どっちだよ。

A:え?

B:腰抜けはどっちだよ!自分の苦手なことから逃げて!言い訳して人の悪口言って!そんなの、かっこよくないよ。

A:B(名前)

B:前のかっこいいAはどこいったんだよ。みんながサッカーしてるときにセーター編んで、笑ってる君が、かっこよかったんだよ。僕は、ぼくはきみにあこがれて体育をさぼってたんだぞ。(泣き出す)

A:おいちょっと泣くなって。みんな見てるだろ。(周囲を気にする)見世物じゃないぞ!(周りに向かって)

B:ごめん。

A:いや、なんか悪かったな。俺が間違ってたよ。俺は運動下手でかっこわるい自分から逃げてただけかもしれない。

B:2人で体育祭、参加しよう。

A:そうだな。

B:うん。実はさ、Aには言ってなかったんだけど僕リレーの選抜選手になったんだ。(嬉しそう)

A:え?

B:え?

A:おいー。お前―。そういう感じ?

B:そういう感じって?

A:(座り込む)何リレーの選手って、超かっこいいじゃん。勝ち組じゃん。ヒーローじゃん。聞いてないよー。

B:なんか、ごめん。

A:あ、どうせたまたまだろ?ぎりぎりなんだろ?

B:ごめん、アンカー。

A:英雄じゃん。タイムは?

B:100m10秒8

A:風じゃん!お前そっちだったのかよ。

B:でもAに比べたら、僕の足なんて本当になんでもないんだよ。

A:もう信用できない。

B:そんなこと言ってないでさ、機嫌直してよ。あ、そうだゼッケン縫ってよ。Aが縫うと全然こう、なんていうかピラピラしないんだ。

A:分かんないけど、もういい。もうお前応援するよ。

B:ほんと?

A:ほんとほんと。その代わり絶対1位になれよ。

B:うん。それじゃ、2組の子からラブレター貰ったから会ってくるね。

A:え?

B:じゃ!

A:おい。・・・あいつ、はっやいなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コント『一足先』 さかなへんにかみ @sakanahen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ