コント『キセイ』

さかなへんにかみ

コント『キセイ』

A:寄生されちゃった。

B:は?

A:いや、寄生されちゃった。

B:え、寄生って。寄生虫とかそういうの?

A:うん。

B:大丈夫なの病気とか?どういうのに寄生されたの?

A:なんかでかいナメクジみたいなやつ。

B:なんだよそれ。

A:(こめかみに手を当てる)なんだよそれ、だって。うん、うん、何か地球外から来た生命体だって。

B:いや漫画かよ。

A:漫画かよ、だって。うん、うん、漫画じゃないって。

B:知ってんの漫画じゃないのは。

A:だから何を疑ってるんだよ。

B:むしろ何を疑わないんだよ。

A:もう勘弁してよ〜、(こめかみに手を当てる)なあ。

B:そっちで喋るな!何かお前が寄生されているっていう証拠を見せろよ。

A:えーそんなん言われてもな。うーんちょっと手貸して。

B:はい。(手を出す)

A:ほれ。(手を握る)

B:痛い痛い痛い!え、本当に?(まだ手は握ったまま)

A:本当本当、なあ(こめかみに手を当てる)。

B:まじかよ。

A:(握る)

B:痛い痛い痛い!(手を離す)2回目はいらなかっただろ!

A:(こめかみに手を当てる)2回目はいらなかったんじゃないの?うん、うん、いらなかったかもだって。

B:いらないんじゃん。何お前体の主導権ないの?

A:ないよ。

B:……怖くない?

A:怖い。

B:怖いんじゃん!

A:(うずくまる)どうしよう、怖い〜。だってずっと声聞こえるんだもん。力もすごい強くなってるし。

B:そのお前の中に寄生してるその人っていうか、そいつは何が目的なんだ?

A:(すっと立ち上がり、Bの手を握る)

B:痛い痛い痛い!(飛びのく)三回目!?

A:(無言)

B:おい、おい!

A:(無言)

B:聞こえてないのか?

A:聞こえてるよ。

B:聞こえてんのかよ。

A:ただ主導権はない。

B:……怖い!もう面倒くさいよ状況が。

A:(切り替わる)悪いな。

B:はいはい。

A:ただ言葉には気ぃつけ。

B:ん?

A:他人のこと、そいつなんていうもんやないで。

B:えっと、もしかして寄生されてる方?

A:せや。

B:ああ、そうですか。出来れば一回変わってもらえます?

A:おう、ちょっと待って。兄ちゃんおるか。(切り替わる)はいもしもし?

B:電話かよ!え、そういうシステムなの?

A:そう。

B:ていうか、お前の中の人ああいう感じなの?

A:そうすっごいおじさん。声でかくて怖いんだよ。

B:そういう怖さかよ。

A:俺今後一生関西弁のおじさんと一緒なのかな……。

B:一生、か……。

A:(切り替わる)一生やで!

AB:怖い!!

A:うぅ(泣く。長めにやりたい。)

B:あのおじさん、いいですか?

A:(切り替わる。すっと起き上がる)なんや?

B:僕の、友達が凄く困ってるんです。彼に体を返してやってくれないでしょうか。(頭を下げる。以降ちょくちょく頭を上げては戻す。)

A:(切り替わる)うぅ、お前。(切り替わる)うぅ、ええ友達やないか。(切り替わる)はい…。(切り替わる)そうやな。わしもな色々考えとったんや。こないな若者の体を奪ってしまうわけやしな。ただこっちも何とか生き延びないとあかんから入ってしもたんやけど友達のこと見て色々思い出したわ。おじさんもな小さいころ、2cmくらいのころな仲良い子がおったんや。タケゆうてなごっつ喧嘩の強いやつでな。泣き虫のわしを守ってくれてたんや。今頃どうしてんのかな。とにかく出てくわ、わし。邪魔したな。(切り替わる)おじさん、ありがとう。(切り替わる)ええんやええんや。短い間やったけど楽しかったわ。(切り替わる)おじさん…。(切り替わる)友達と仲良うやれよ。(切り替わる)はい!(切り替わる)ほなな。(切り替わる)はい!(切り替わる)そろそろ行くわ。(切り替わる)さよならおじさん、さよなら

B:(そーっと様子をうかがう。体を起こし息を大きく吸う。)長いな!

A:おじさん帰っちゃった。

B:なんでちょっと名残惜しい感じになってんだよ。

A:あれ何か聞こえる!(こめかみに手を当てる)うん、うん、本当!?

B:どうしたどうした。

A:おじさん盆と正月は帰ってくるって!

B:帰省か!

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コント『キセイ』 さかなへんにかみ @sakanahen

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