第17話 そして幼馴染の二人は見せつける。

               ◇◇◇◇◇



 修学旅行直前にかおり、佐藤と一緒に本田の彼女へのプレゼント探しの手伝い……というのはまあ言ってしまったことなのでいいのだけれど、ただそれだけで貴重な日曜日を終わらせてしまうというのもどこか勿体ない。


 昨日そういう話になって、今日は亮と中野さん、それと日向を誘って、本田プラス俺たち修学旅行の六班メンバーで駅に併設されているショッピングモールへとやってきていた。


 なし崩し的に買い物に付き合うと言ったのは俺ではあるが、やっぱり女子へのプレゼントは女子にアドバイスをもらうのが手っ取り早い。


 当然のようにそう話は進み、プレゼントが決まるまでの間、本田には言い出しっぺの俺と中野さん以外の女子三人で付き添うことにした。


 さすがにこれで中野さんにまで協力してもらうと亮が一人きりになってしまうので、お二人さんには仲良く時間をつぶしてもらおうというのが、全員一致の意見だった。


「やっぱり女子は、可愛いものに目がないからね。おしゃれな雑貨とかいいんじゃないかな?」


 日向が無難だがもっともなことを言い、最初は雑貨屋から見て回ることに決まる。


 俺や本田は女子の好むものというのがいまひとつ理解できないので、日向とかおり、それに佐藤が思いおもいに持ってきたものを本田が確認して、気に入ったものに目星をつけていくというやり方で次から次へと雑貨屋を回っていった。


「じゃあ、これにしようかな」

「もう決めちゃっていいのか?」

「うん。いつまでもみんなを付き合わせるわけにもいかないし、それに俺、これなら喜んでもらえると思うんだ」


 都会なら話は違うかもしれないが、山梨の駅の中には雑貨屋が数えるほどしかない。

 そんな数少ない店のなかでもちょうど三軒目の雑貨屋で、本田はプレゼントを決められたらしく、そそくさと会計を済ませて俺たちに礼を言った。


「わざわざ休日に、みんなありがとな。じゃあ俺は先に帰るから、あとはみんなで楽しんで」

「もう帰っちゃうの? 今からみんなで修学旅行に必要なものとか色々見て回るけど」

「あぁ、いいんだ。同じ班のメンバーに俺だけ混じっても悪いしな。それに修学旅行の買い物は昨日、美紅としたから」

「ならいいな!」


 どうせなら本田もこの後一緒に……なんてことも一瞬だけ思ったが、余計なお世話だったらしい。ほんとにこいつ、隙あれば惚気てくるよな……。


「まあ、そういうことなら仕方ないね。じゃあ本田くん、また明日!」

「おう! みんな、今日は本当にありがとな!」


 結局、一時間も掛からずに用も終わり本田と別れて、あとは亮たちと合流して自分たちの買い物をしようと、そんな流れになって歩いているときだった。


「ちょっと待って。あれ、神木たちじゃない?」


 日向の言葉に、俺たちは全員足を止めた。


 少し遠目ではあるけれど、日向の視線をたどるとその先にいたのは確かに亮と中野さん。俺たちといるときよりも明らかに距離感が近くて、ぱっと見カップルにしか見えない二人の姿だった。


「あの二人、仲が良いとは思ってたけどあそこまでとはね」

「まあ中野さんなんて全校生徒の前で亮に告白しちゃうくらいだしね」

「え⁉ なにそれ、初耳なんだけど!」


 あ、そうか。日向は選挙のときにはまだいなかったから知らないのか……。


 日向が詳しく教えろとせがんできたので、仕方なく亮たちの様子が見えるベンチに腰を掛ける。


「――えっ⁉ そんなことあったんだ。すずって思ったより大胆!」


 俺が日向に一通りの説明をしている間、お二人さんはとろっとろの甘い笑顔で見つめ合ったり、見せつけるようにお互いのドリンクを交換し合ったりと、思う存分いちゃつきまくっていた。


「ねぇ、なんか二人に悪いし、このまま四人で買い物しない?」

「いいね!」

「うん。そうしようか」

「……そうだな」


 かおりの提案に俺たちは異口同音で賛成したが、俺は密かに、今度亮のやつをこのことでからかってやろうと心に決めたのだった。

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