第44話 なぜだかお隣さんと海の家でバイトをする(1)。
「それじゃあ二人とも、しっかり働いてくれよ? この時期はどんどん客が入ってくるからポンポンさばかないと店まわんなくなるからな」
「「はい! よろしくお願いします!」」
家で迎え火を焚いたのが昨日で、今はお盆休み真っ只中。
まだ朝だというのに真夏の熱海のビーチはテントでびっしりだった。
「とりあえずは厨房から出てきた料理の配膳とお客さんの食べ終わった皿の片付けね。あと新しく入って来たお客さんの席までの案内。二人で協力してテキパキやるように。そろそろ開店だからよろしく!」
母さんの知り合いという割にはだいぶ若い彼女は
なんでも母さんの親友のお姉さんの娘さんらしい。
ここまではちょうどお盆前に山梨まで帰ってきていた母さんの親友のお姉さんが静岡に帰るということで、車に乗せてきてもらったのだった。
日奈さんは俺たちの返事を聞く気もないらしく、早足で厨房へ入っていった。
「日奈さん、綺麗な人だね」
「そうだね。まだ大学卒業して三年って言ってたから……俺たちの八個上か」
「そうくん、女性の歳を数えるのはマナー違反だよ!」
雑談をしながら開店間近のテーブルを台拭きできれいにして回る。
「よし、店開けるよー」
朝の九時ちょうどの開店で、店の前を通りかかった数人が店に入ってきた。
「焼きそばとイカ焼き、あとたこ焼きを一つずつで」
「少々お待ちください」
席に男三人衆を案内して、注文を厨房まで持っていく。
「日奈さん、お願いします」
「あいよー。今のうちに要領覚えちゃいな。忙しくなってくると本当に大変だからね」
「了解です!」
日奈さんはすでに鉄板の上に作ってあった焼きそばを温めて、それと同時進行でイカ焼き、たこ焼きを焼いていった。
「お待たせいたしました。焼きそば、イカ焼き、たこ焼きになります」
プラスチックの容器に入れられた食べ物をテーブルに運ぶ。
客はさっきから増えておらず、三人がいるだけだった。
「なんか、聞いていたほど忙しくなさそうだね」
「まあ、まだ朝っていうのもあるんじゃない?」
余裕綽々でそんなことを抜かしていた俺たちだったが、昼が近づくにつれて客足はどんどん多くなり、昼食時にはそれはもう言葉を交わす暇すらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます