ラスボス倒したヒーローが魔法少女の世界に行ったらこうなった

リクルート

第1話 ラストバトル

――ファイナルフォーム……タイムアウト――


 機械音が静かに、弱々しく鳴る。

 音が鳴ったところには一人の青年がフルメイルに身を包み、目の前の存在を見つめる。


「ふっ……我が野望もここまでか……まさか、貴様のような人間、一人に敗けるとはな」

 

 言葉を発した存在は人で言えば2メートルほどの背丈の人物であるが肌は黒く、爬虫類を思わせる鱗に身を包んでおり、腹部を大きく穿った状態で倒れ伏していた。


「一人じゃないさ。お前たちと言う非日常に対して、変わらずに日常をくれていたあいつらがいるから俺はここに居るんだ。戦うのは一人でも生きるのは一人じゃできないからな」


「理解ができん」


 突き放した言葉に青年はただ、頷く。


「俺はただ……守りたいと思えたからここに居る。ただ、それだけだ」


「ぐふっ……そうか。そうか。やはり、貴様とはわかり合えそうもないな。我にとっては――」


 そこで、異形の生物。ゾロアークは言葉を区切り、ゆっくりと青年に目を向ける。

 初めて立ちはだかった時から今に至るまで青年は一度たりとも立ち止まることなく、ゾロアークの野望を邪魔し、ついには阻止して見せた。

 全くもって忌々しいとゾロアークは思う。

 何故、他人のためにそこまで自らを犠牲にできるのか? 何故だ? なぜ? ずっと疑問だった。

 しかし、ここに至り……会話を、対話をして気づく。

 

「我には守りたいとはとても思えんだ。そうか…………ふっはっははは!!!」


 青年には聞こえないほどの声で呟き、大きく嗤う。


「これが悪たる我の最後だ。いいか、皆のヒーロー。貴様が光だと言うのなら、我は最後まで悪を貫こう。いいか、世界が求めたヒーロー。我はこの世界が嫌いだ。この世界が貴様を求めるのなら反逆するのが悪だ!! 平和などという下らない悪に貴様を染めてはやらんっ!!」


 高らかにそう叫び、最後の力をゾロアークは振り絞る。

 膨大なエネルギーが辺りに満ちる。

青年が逃げようと出口を見るが、すでにゾロアークが作り出した力が空間を歪め、逃げ場をなくす。


「ゾロアークっ!」


 青年がゾロアークに詰め寄る。

 血を吐きながらもゾロアークは笑う。


「き、さまと我が力は似ている。……世界の力だ。さぁヒーローよ。次の世界は…………どこだろうな?」


――守りたいなら守れ。壊したいなら壊せ。それが……――


 そう呟き、怪人ゾロアークは消滅する。

 それと同時に空間は縮小し、完全に世界から消える。


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