最終話 ハッピーエンドは、まだまだ先だ!

「今までの私は、君を騙して利用しようとしていた。今の私は君に悪い事をしたと思っている。だから、今まで通りの生活はできないかもしれない。それでもいい?」

「もちろん!

 君は、本当の君でいてくれていいよ。親しき中にも礼儀ありとは言うけれど、礼儀何ていらないから」

「うん」


 僕と泉さんは、本当の意味で彼氏と彼女の関係になれた。


 そんな気がした。



***



 あれから一週間。


 僕は田中と仲直りした。

 泉さんとも、今まで以上に充実した楽しい日々を送れている。


 まだ、僕が泉さんを好きだと思っている理由を見つけていない。それはきっと、泉さんも同じだろう。


 僕と泉さんとの間に『好き』という感情が無かったとしても、今が幸せならそれでい。


 今みたいな日々がずっと続けばいいなと僕は思う。



***



 人生とは、コンティニューすらできないRPG――要するにクソゲー……そう思っていた。


 この世界では、生きとし生ける存在もの全てがそれぞれの自分――主人公を演じ、物語ストーリーを進めている。


 でも、僕たち《この世界の住民プレイヤー》は、ただ物語ストーリーを進めているだけではない。

 富でも名誉でも家族でも何でもいい。自分にとっての最高の宝物を手に入れ、ハッピーエンドを迎えるために物語ストーリーを進めている。


 確かにこの世界は、学校や仕事などの辛い強制イベントが多い。

 しかしそれは、ハッピーエンドへと続く道筋シナリオの一部ではないだろうか?



 長い道筋を巡り、最高の宝物を手に入れる事が出来たとしても、それを失ってしまう事もある。

 それは富という宝でも、名誉という宝でも、家族という宝でも、永遠不滅ではないからだ。


 だから、ハッピーエンドを迎えるために手に入れるべき宝物は、永遠に変わらないもの――幸せな日々の思い出だと思う。

 僕の彼女の泉さんは、それを僕にくれた。

 僕は、最高の宝物を手に入れた。


 しかし、僕はまだハッピーエンドを迎えるつもりはない。

 僕は泉さんと一緒に、出来る限り多くの最高の宝物を手に入れていこうと思う。


 僕たちの物語ストーリーは、まだまだ始まったばかりだから――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る