ひとときの雨

姫亜樹(きあき)

ひとときの雨

8月の昼下がり

突然降りだした雨に

ボクは買いたての弁当を持って

慌てて車の中へ飛び込む

太陽に熱せられていたアスファルトは

瞬く間に霧を生みだす

雨はあっという間に嵐に変わり

遠くで雷も鳴っている

ボクは車の中で様子を見ていたが

「そのうち止むだろう」と思い

車の中で食事をすることにした


カーラジオの音は雨の中で

とぎれとぎれに聞こえる

一人の時間が心地よく流れる


広い駐車場の中を

使い捨てられたタイヤたちが

風に運ばれ転がっていく

ボクはそれをじっと見つめていた

コロコロとタイヤが転がっていく

もうすぐ昼休みが終わる

このまま雨が止まないでくれれば

時が止まってくれれば

この雨が疲れるほどの

人間関係を流してくれたら


タイヤが壁にぶつかって

いくつも倒れていく

ボクもこのまま大きな壁にぶつかって

倒れてしまうのだろうか

「時が止まってしまえ」

そう願っても雨は去っていき

再び夏の太陽が

アスファルトを熱しはじめた


ボクは車のエンジンをスタートさせ

駐車場を出て行った

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ひとときの雨 姫亜樹(きあき) @Bungo-2432Da

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