第5話「魔剣 赤禍狼」

 通貨の事を忘れてたのでここに書きます。

 今回の話で出てくるクォーツと言う通貨単位は日本の円と同じ使い方で覚えてもらって構いません。

 要するに1円=1クォーツと言った感じです。

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 ムグルが奥から持ってきた、燃えるように紅く、それでいて細部には朱色に染まった紅葉を思わせるようなその大剣は、ラウやミリアの剣の素人から見ても他の剣とは圧倒的に違う存在感を放っていた。


 喉がひりつく様な熱さを無意識化に感じ、ゴクリと喉を鳴らす。


 そんな、呆然とその持ってこられた大剣を見ている二人と剣の状態を見て満足したのか、ムグルにお金を渡そうとする赤髪の少女。


 だが、次の言葉がいけなかった。


「じゃあ、ムグルのおじちゃん。これ、千万クォーツね」

「千万!?!?」


 クアンが、魔法バッグから取り出した硬貨が沢山入っているだろう布袋を取り出し、布袋を古い木目の木机にジャラっと重い音と共に置く。


 お金を渡した瞬間、そんな声が店内に響いた。


 それもそうだ、今までクアンはキミルの普通の宿に部屋を借りて一人で暮らしていると聞いていたし、自分達と遊ぶ頻度も多かったため冒険者としての収入はそれほど無いと思っていたからだ。


 それがいきなりクアンが千万と言う大金を頑張ったと言ってたとはいえ、十一歳の子供が持つにはデカすぎるお金をポンと出したのだ。

 不安にもなる……。


 そんな不安はラウとミリアが多大に感じており、「いや……金は」とムグルが話そうとするが、それに被せる様に――――


「ク、クアン!? だっ、駄目だよ!! そんな身を売るような真似しちゃ! ねぇ、クアン? もうそんな仕事辞めて私の家に行こ? ね?私がクアンの為に働くから! そんな仕事はしないで! ねぇ!?」


 とラウが勢いよく喋り出したので黙ってしまう。

 途中「ラ、ラウ?」と戸惑った様に呟くが混乱の最中にいるラウは聞いちゃいない。


「そうだよ!? クアン! ラウちゃんが心配になるのも頷けるよ! そうだ、何だったら私もラウちゃんの家で一緒に働くから、ね? 自分の体は大切にしなきゃ駄目なんだよ?」


 ミリア、お前もか。


「あ、じゃあ今から冒険者の仕事も危ないから断ってくるね!? 大丈夫だよ! 私が一生二人とも養ってあげるから、安心して!!」


 こちらもミリアなら止まってくれるかもと淡い期待を寄せて口を開いてみても、ラウという爆弾と反応し、更に燃え盛る始末。

 ずっと暴走されるのも困るので二人を止める為に久々に声を荒げてみる。


「そもそも、二人ともなんで私がそういう仕事をしてるって勘違いしてるのよ!! そんなことやってないわよ!! これは正真正銘私のお金よ!!」


 が、恥じらいながらも声を出して帰ってきたのは、


「「……」」


 こんななんとも言えない信用してない表情だった。

 ラウとミリアは二人でクアンの方を疑心暗鬼な目で見つめ、ムグルは当に諦め他の事をやりだす。


「何よ! その本当か? みたいな眼差しは!?」

「「やったら二度と口聞かないからね!?」」

「やらないわよ!! というより、やってないわよ!!」


 否定はしたものの、内心は心配してくれる二人に感謝の気持ちを持つが、ラウがいきなり「二人は私がもらうんだから!!」と言い出した為、ミリアと共に黙ってしまう。


 そして、二人とも出た声が「「えっ……」」という理解が追いついて無い声だった。


 しかし、それでも諦めず「貰うんだから!!」と言うため、『まあ、勢いで言っただけだろう』と「はいはい」「ふふふ」呆れたうな微笑ましい物を見たかの様な、曖昧な答えを返してしまった。


 これが後に「狂蒼銀雷伝記 第一章」に載せられ、多くの人に「あの人に曖昧な返事だけはやめろ」との教訓が語られる事になる「修羅場発端事件」である。


 そんなこんなで、ムグルがお金の事で話そうとしたところで二人に遮られたので黙っていたのだが、やっとクアンの疑惑が晴れたので会話を再開する。


「そろそろいいか?」

「ああ、ごめんなさい。どうぞ」

「クアン、金は五十万でいい。どうせ、クアンが現れなきゃずっと倉庫入りだった可能性があるやつだしのぅ。まぁ、餞別にあげるわい」


 通常の武器は十万そこらだが、今回持って来た武器クラスになると二千は軽く超える。

 そう考えると破格の価格設定になったと言えるだろう。


「えっ! 本当!? でも、それならそうと早く言って欲しかったわ……」

「まぁ、そこは許してくれ。一依頼で大金を稼ぐ冒険者とはいえ、一流冒険者も千万なんて大金を聞くとほとんどは諦めるか癇癪を起こすが、クアンは嫌な顔せずに集めて見せたからの」

「あら。そんなに、私の事買ってくれてた「ク、クアン!?」の? はいはい、ちょっと黙っててねぇ~」

「む〜」

「まぁ、正直言うと本当に集めてくるかは半信半疑だったがな! がはははッツ!!」

「結局、疑ってたんじゃない!?」

「すまんすまん!」


 そうムグルは笑いながら言う。

 そんな二人の横で大剣を話を聞きながらチラチラ見ていたラウは思っていた事を聞いてみる事に。


「ところで、その剣ってそんなに変わってるの?」

「ん? あぁ、この剣はいわゆる魔剣と言われる類のものでな。魔剣は聞いた事があるかも知れんが、武器自身が自分の所有者を決めるんじゃよ」

「魔剣?」

「そうじゃ。魔剣というのは意思を持った武器の形態の一つ、剣のことをいうんじゃ。例えばお嬢ちゃんが最初見ていた槍の形態だと魔槍と言うんじゃよ。ちなみに、魔剣などに至っていない自我が無い武器をまとめて魔装というんじゃ。武器の形態は十二種類があるが、今まで一つの武器には一つの魔装しか見つかっていないんじゃ。だから、嬢ちゃんが知らなかったのも不思議じゃないぞ。逆に知ってるとしたら帝国、和国のあの連中、ドワーフ達ぐらいじゃないか? まぁ、うちの場合は知っていても、わしが気に入ったやつにしか見せなかったがな! まさかこんな貧相な所に魔剣があるなんて思わんじゃろ! がははは」


 ここで簡単な説明を入れるとまず魔装まそうと呼ばれる主な武器の形態に変化する形状がる。これは武器事に様々な形状をしているとされているが、未だ多くは解明されていない。


 次に魔装自体が長い年月を掛けて自我を得、武器形態が確定した状態に移行する。


 それは剣であったり、鎌、斧、銃と様々だが、全部に言えるのは通常の武器より格段に強いという事だろうか。


「私も魔装欲しい! それでまだ、誰にも発見されてない魔装を手にいれるんだから!」

「そうか、そうか。じゃあこれは知ってるか? 今、発見されてる魔装は魔鞭・魔鎌・魔斧・魔銃この剣を含めてまだ5種しか発見されてないんじゃ。しかも魔装はまだまだ謎が多く発見場所はてんで規則性は無いし、その魔剣だって儂の祖父がいうにはいつのまにか武器倉庫の奥にあったって話だしのう」


 ずっとムグルの話を静かに聞いていたミリアはふと疑問に思い聞いてみることにした。


「そういえば、この剣って名前ないんですか??」

「おお、言うのを忘れておったわ! ————この魔剣の名はな、赤禍狼じゃ!」

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