2.期待した未来
2年前の4月。これから続く社会人としての長い人生に、純粋にわくわくしていた。
仕事なんてしたくないと嘆く同級生も多かったが、もともと学生時代から遊ぶよりもアルバイトをしたり、ボランティアに参加したり、同級生より年上の社会人と接する時間が長かった私は、早く仕事がしたくてしょうがなかった。
就職活動も納得するまでして、やってみたかった広告代理店の営業職を勝ち取った。
売るものが決まっていない分、クライアントのためになるものを一緒に作り上げていく。自分の腕次第で幅の広がる仕事。
大手ではないが中小がゆえ、一人の債権も大きくやりがいを感じる仕事。
一人暮らしも始めて、完全に自立。
家族と仲はよかったが、社会人たるもの、親の世話になるのは如何なものか。と、生意気で、少し背伸びをしたがる思考は、今思えば物心ついた頃からそうだったのかもしれない。
とにかく、プライベートもしっかりしてこそ真の社会人だと思っていた私は、最低限の家事はもちろん、お昼はお洒落な手作りお弁当を持参、夜はジムにでも行ってスタイルを維持。ジムかどこかで素敵な人に出会って、28には結婚。
そんな人生設計を夢に新生活に突入していた。
……こんなに自分の将来に純粋に期待していたのはいつ頃までだっただろうか。
平凡ではあるが、希望とか夢、期待みたいなものを、小さいながら、確かに光るそれが常にどこかにあるのを感じていたはずだった。
いつ、その光が消えたのか。
確かに覚えているのは、2年目の6月頃から、朝の「もしも」と頭痛と吐き気のルーティンが始まったってことだけだ。
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