仮面と手を繋いだその先に見えるもの
高遠 そら
1.選択によって出来上がった『わたし』
もしも、長女として生まれてこなければ。
もしも、大学に進学していなければ。
もしも、あの彼と今も付き合っていたら。
もしも、この会社に勤めていなければ。
今のこの状況は変わってたのかな…
そりゃそうだろう。
と自分で自分に突っ込みを入れる。「もしも」を全部その通りにしてれば、もはやそれは今の私ではない。「もしも」の選択をしてこなかったから、こんなことになっている今の自分がいるのだ。
なんて、毎朝どうにもならない次々に頭によぎる「もしも」と、激しい頭痛と吐き気を抑え込み家を出て仕事に向かう。
また長い一日が始まる。
自分が自分でなくなる一日が。
文字通り、家を出てから家に帰るまでの私の一日は長い。始業は9時だが、7時に家を出て8時前には会社につき仕事を始める。
大抵前日に仕事が終わらず、無理矢理帰っているからこんなことになる。残業は減らせという時代の流れに形だけ則った会社の方針の皺寄せだ。
段取りが悪い自分が悪いと自身を責めた時期もあったが、それだけではないと最近になって気がついた。
それ以降、よりいっそう会社に向かう足が重くなった。仕事を終えるのは大体22時頃。繁忙期には日付を越えることも少なくない。それでも、この業界にしたらまだましな方だと誰かに聞いた。
24歳 社会人3年目 広告代理店 営業兼ディレクター。
仕事ぶりは会社に評価され、今期は若手ではじめて教育係も任されるようになった。ゆくゆくは女性はじめての管理職。1年目から自己評価を遥かに上回る期待の声を背負うことになって早丸2年。期待に応えなければと先急ぐ。
私生活はほったらかしで、社会人になって始めた一人暮らしの生活はいつの間にか、もはや人間の生活とは思えないものになっている。当然、彼氏が出来るわけもなく、休日はひたすら家に籠って生気を養うのみ。
これが「もしも」の反対の選択をしてきた結果の私。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます