だぶる・ぱんちっ!(#だぶぱんっ)

篠騎シオン

第一章 双子との出会い

第1話 ただいま、日本

「ただいま、日本。おかえり自分、ひゃっほぅ!」


飛行機から降り立った俺は、一人でぴょんぴょんと飛び跳ねる。

恥ずかしくないのかって?

もちろん、普通なら恥ずかしいさ。


誰かに、ね。


でも、現代においては、空港にひとなんざ、ほとんどいない。

俺が今日乗ってきた飛行機だって、チャーター便だ。


どんな金持ちかって?

いやいや、現代ではこれが普通。

俺の家の収入レベルは中の上くらいの、ちょっとだけ恵まれている程度。

上には上がいることは俺がよく知っているからな。謙虚に評価するぜ、俺は。


で、なんで空港に人がいないのか説明しろってか。

ふうむ。結構こういう説明は難しいな。

現代において俺みたいのはちょっと浮いてる。

俺はオールディーな感覚や、情報、映画なんかがとても好きで、自分でも体験したいと常日頃思っている。

さっきまで海外留学に行っていた俺だが、今じゃ普通は体ごと外国に行ったりしない。だって結局、授業は全部フルダイブ空間で行われるし、その空間で世界遺産や都市の街並みだのなんだの匂いから音からなんでも再現されてるんだ。

みんなは、それで十分って思うみたいなんだ。


でも俺はさ、空気を。

その土地の空気を楽しみたいんだよ。

やっぱ外国って空気の雰囲気ぜんぜん違うじゃん?

そこで生まれてくる思考があるんじゃないかってこと、現代の人は忘れてると思うんだよね。

昔の音源であるCDは、人間の耳には聞こえない音域のものははじいちゃってたんだって聞いたことある。

それと同じでさ、たぶん仮想空間に再現された世界も全く同じじゃないと思うんだよ、俺は。なにか足りないものがあるんじゃないか、って思うわけよ。


で、とりあえず、何十、何百年前か詳しくは知らないけど過去の皆さんに現代の説明をさせていただきますと、

ロボットたちが甲斐甲斐しくお仕事している恩恵を受けているのが、現在の人間。

事務仕事や単純労働というのは、ほとんど世界からなくなり、クリエィティブやアーティスティックな仕事がメインで生き残っている。

人間に今、課せられているのは多様な人類という種の保存と継承。

んで、俺みたいなオールディー好きで昔の感覚を持ち合わせた人間はちょこっとだけ重要視されていて、国から補助をもらって留学してたってわけ。


変わっているのがステータス。

でも、演技やなんかだと簡単に、AIに見抜かれる。

ある意味、完全に才能で生きていくシステムになっているのが現代日本の現状だ。


んーと、これで導入説明OKかな。

俺は過去の文章書くのは自信がないんだよ、ほんと。

今と昔じゃ小説の在り方も違うからな。できるだけかみ砕いて書いてるつもりだけど、どうだ。

うーん、そっちの世界で言うと、古事記とか日本書紀を記してる感じ? わからんけど……。


さて、そんなこんなで空港についた俺なのですが、もう少しで迎えの車が来るはずなのですよ。

そして、この車の持ち主こそがこれからの俺の運命を支配する超のつくお金持ち、日本で一、二を争う会社の会長さんなんだなー、これが。


うん。

はい。

オールディーなラノベみたいに、ことが起こってから驚くのは苦手なんで、

前のり前のりで言っちゃいますね。


さてさて、深呼吸をしてー、すーはーすーはー……。


なんと。

俺。

会長のお孫さんのどっちが跡取りにふさわしいか選ぶことになりました!

そして、その跡取りと結婚することになりました!!

そしてそして、その跡取り候補の片方はなんと男だそうです!!!



……





…………






………………




どうなってるんだろうね、この世界。

おそらくお前らとおんなじ感覚の俺は、ちょっとどうしていいかわからないわけだ。


うん、助けてくれ。

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