ただの男、中村。

古谷茶色

1話 タイトルは後で。

帰宅途中。普段とは違う道で。

たまにやりたくなる。そういう気分。



門のある建物を発見。豪邸。

家…。いや、ほぼ屋敷。

庭…。いや、ほぼ森。


森に囲まれた屋敷の前を通過するところで、表札が目に入る。



『蓼丸』



なんとか、まる。

いや、『丸』でさえ『まる』とは読まないかもしれない。


『がん』か…。


それよりも『蓼』だ。

見たことある気はするが、思い出せない。こういうのは考えても出てこないもんだ。

でも、ググったら負けな気がする。そういうもんだ。


その屋敷の前を通り過ぎた。

すると、前から女子小学生。二人。


すれ違う。


すぐに後ろから女子小学生の声。


「じゃーねー!」

「じゃーねー!」


振り返ると、二人は手を振りあっている。

ほほえましい。


「じゃーねー!はなまるちゃーん!」


そうか。

『蓼』は『はな』なのか。

意外。というか、なんか微妙な気分。

魚の小骨が喉につっかえた状況は、その小骨が取れたのかわからない状況に早変わりした。

まあいいか。


少し歩いて、また後ろから女子小学生の声。


「じゃーねー!」

「じゃーねー!」


まだ手を振りあっている。

やはりほほえましい。

心の中で、笑顔で二人に手を振る。じゃーねー。



二人に別れを告げて、歩みを早めようとした時、



「はなまるちゃ-ん!ばいばーい!」

「うん!ばいばーい!」

「はなまるちゃーん!きをつけてねー!」



はなまるちゃん、と呼ばれた女子小学生は屋敷の前を通り過ぎて行った。

はなまるちゃん、と呼んでいた女子小学生は『蓼丸』家の門をくぐっていた。




おかえり。『蓼丸』ちゃん。






ググった。

『蓼』は『たで』。


イコール…


『蓼丸』は『たでまる』。

Q.E.D.




『はなまる』と『たでまる』。


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