よし、戻って来い(by 佐吉)
第3話:俺があいつであいつが俺で(物理)
ドスドスドスドス…
どこからか足音が聞こえる。歩き方からして男性かな…?そう思っていると部屋の前でその足音を立てていた影が止まった。
スッー
「…おや、小紅は此処にいたのか。佐吉…いや颯輝、これに着替えろ」
入ってきたのは風呂敷包みを持っている正澄さんだった。
なんでそんな唐突に…と思っていると
「できれば早く着替えてくれ。父上と母上がお前…いや、佐吉を待っている」
そう言って俺の上に寝ている女の子…小紅ちゃんを抱き上げて、俺に風呂敷包みを渡した。
俺の服は学校の制服だ。確かにさっきまで和服だった佐吉が戻ってきたら訳の分からない服を着ているだなんておかしいよな…
そう思っていると気付いたらいけないんじゃないかと思う疑問に行き着いた。
襖を小さく開けて、すぐ近くにいた正澄さんに声をかけた。
「澄兄ぃ…澄兄ぃのお父さんにはばれなかったの…?」
「あ、あぁ。父上がきた時は俺の羽織を被せていたんだ。ほら、颯輝が少し前まで寝ていたから放ったらかしになっているが、俺の羽織があるだろう?」
部屋を見ると確かにあった。部屋の隅でシワシワになっている。
「ご…ごめん」
「いいんだ。それより早く着替えてくれ。着替える前に小紅が起きたら面倒な事になるぞ」
そう言われて俺は静かに部屋に入って、風呂敷包みを解いた。
…そう言えば俺、うっかり正澄さんのことを澄兄ぃって呼んでたな。
そう思ったけど後でいいかと思って風呂敷包みの中身を見た。
風呂敷包みの中には正澄さんが着ている服に似ている和服があった。俺はすぐに制服を脱ぎ、その服に腕を通した。家では毎週のように和服を着ているから着方はわかる。最後に袴の紐をしっかりと結んで、正澄さんの羽織を持った。
「…兄上?着替えたよ…」
小声でそう言う。
「あぁ、わかった。出てきてもいいぞ」
襖の向こうから正澄さんの返事が聞こえた。
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