ビートボックスの特訓しているJK二人組ですが、百合カップルと勘違いされています

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第1話 誰にも言わないから

かけいさん! 私、二人のこと、誰にも言わないから!」


 石倉いしくらさんが、いきなりわたしにそう告げた。


 わたしと四条院しじょういんサオリさんは、唖然としている。


 いきなり屋上に呼び出されたから、何事かと思ったじゃん。


「お話が見えませんわ。ワタクシが筧 トワコと一緒にいるのが、そんなにおかしくて?」


 サオリさんは、余裕の表情で石倉さんに語りかける。黒髪ストレートで背が高いから、圧が凄い。


 一方、わたしはどっちかっていうと平凡なJKだ。

 一応、毎日清潔にはしているけれど、編入組の二年生で、まだお嬢様学校には馴染んでいない。

 アカペラ三昧だったヤンチャな中学時代の匂いは消えなかった。


 高校の花であるサオリさんが、わたしのようなちょいヤンキーとつるんでいたら、やっぱり目立つよね。


「違うの! 私は別に、二人の仲を引き裂こうっているのではないの」


 半ばサオリさんとの友情をあきらめかけていたが、どうも石倉さんにわたしを責める気はないらしい。


「筧さん。四条院さん。私、見てしまったの」


「いったい、貴女は何をご覧になったの?」





「二人が夕暮れの教室で、キスしているところを」





 夕焼けよりも顔を真っ赤に染めて、まるで秘め事を告るかのように、石倉さんは発言した。


「確かにココは女子校で、そういった趣向の方も多少は存在すると、理解はしているつもりよ。でも、教室であんな激しく身体を寄せ合うなんて。とても、情熱的だった」

 

「へえ、そうなんだぁ」

 わたしは、笑いを含ませて言う。


 ビートボックスの練習していただけなんだよなぁ……。

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