――第108話――

 ショーンとは 短い間だったけど森へ行ったり、薬草を取ったりして……仲良くなったショーンを俺は見捨てる事が出来なかっただけだ。

 それは他の人から見れば偽善ぎぜんと呼ぶものかもしれない。

 確かにネロの言う通りショーンと俺たちが今一緒に行動することは自殺行為に近い。

 でも……

 だけど……


「ショーン自体が危険物だって可能性は低いと思う」


「あ?」


 ネロは訳が分からないと言った様子で聞き返してきた。

 俺はネロの瞳をしっかりと捕らえ言葉にする。


「ネロの言う、“ショーン自体が危険物”って意味は、ショーンが黒幕の一部かもしれないってことだろ?」


「……まぁな」


「なら、それは限りなく低いと思うんだ」


「……」

「ん~? どーしてぇ??」


 俺の言葉にネロはあごに手を置き考え、その間にラルフの質問が飛ぶ。


「ショーンは“手伝いを頼まれた”“初めて頼ってもらえた”って言ってたんだ。あのままだったら、黒幕の一部として仕込まれていたかもしれないが、今はまだ引き返せる場所にいると思うんだよ」


「なるほどね~ッ!」

「……なるほどな」


 ラルフとネロは納得してくれた様子だったが、さらにネロは言葉を続けた。


「だが、ショーンが黒幕じゃなかったとしても、俺たちと一緒に行動出来ないのは分かってるか?」


 ……。

 そこなんだよな~!

 痛い所を言ってくれるね、さすがネロ。


 ショーンは問題なくても、身内の黒幕さんが放っておく訳ないもんなぁ。


 ショーンが生きているって知られると、うまく使って俺たちの情報を抜き取ろうとして、ショーンにスパイみたいな事をさせそうだよな。

 あとは、あの人間を人間だと思ってない黒幕さんたちだから、ショーンを人間爆弾……とかもして来そうだし。

 ショーンに問題なくても、ショーンの周りに問題がありすぎるんだよ!

 どうしようか……。


 俺にはどうしたらいいか分からないかった。


 無責任に連れて帰ってきたが……どうしよう。

 聞いたら怒られるかな……。

 でも聞かないと分からないし……。 


「どう、したらいいと思う?」


「はぁ!? 考えてなかったのか!?」


「あはははははは! ルディは行きあたりばったりだね!」


 やっぱりな!

 聞いたら聞いたで、そう言われると思ったよ!!


 二人してそんなに責めないでくれよ。

 ごめん、と俺がぽつりと言葉をこぼすと、ネロが呆れたように顔を横に振り、言葉を放つ。


「ったく。まー、分かってたけどよ。少しくらい考えとけ!」


「う……おっしゃる通りで……」


 返す言葉もございません。


 俺の反省が伝わったのか、ネロは今日何度目かになるか分からない溜息を溢した。


「はぁ……まぁ、何とかしようと思えば出来るけどな」


「本当か!?」


「こんな時に嘘言ってどぉすんだよ」


 ネロににらまれてしまった。

 ごめんって。


「それもそうだな。……で、どうするんだ?」


「ショーンは他の人に預ける。んで、そこに……あー……『神狼族』の人に影から警備してもらう。それだと、何か異変があった時すぐに分かるしな。ま、何もないのが一番なんだけど」


 “神狼族”と言うときに言語を変えながらもネロは説明してくれた。


 ん?

 だけどさ

「え、っと『神狼族』の人を護衛?警備?してもらうのは良いとして、里からここまで数日はかかるんじゃないのか?」


「あー……丁度、別の件で<リシュベル国>にいる人がいるから、問題はない」


「あはははは! 前からネロは知ってたみたいだけどね! 二人で地図を見ながら、ルディが印付けてくれた所を回ってたら偶然―――」

ゴチンッ!

「―――ッ!! いたーい!! ネロ!? 痛いよ!?」


 ネロはラルフの言葉を聞くとすぐさま動き出し、急にラルフの頭を殴った。

 なんの前触れもなく。


 どうした!?

 ……ネロ~、暴力はいけませんよ~……。


 今の俺は声を掛けられないけど。


 ネロはラルフを殴った手をそのままラルフの肩に回し、ひそひそと「ルディには言うなって言われてんだろぅが!」「あー! そうだった!」と言葉を交わしていた。


 ほとんど聞こえなかったが、俺には内緒ってどういう事だろう?

 ま、今回の件には関係なさそうだから いっか。うん。


 一通り話し終え、ネロとラルフは俺に向き直る。


「そういう事だから、ショーンに関しては大丈夫だろう」


「そーだね! あの人達がショーンについていれば安心だね!」


「ショーンが下手な事をしようとしても止めてくれるだろうしな」


「あははははは! 暴走しないと良いね!」


「俺はそっちの方が心配かもしれん……」


 なぜか遠い目をしだしたネロにラルフは笑っているだけだった。


 後半はよく分からなかったが、二人のお陰でショーンの問題が解決したようだ。


「二人とも、ありがとう」


「いーよー!」

「……ふん」


 ラルフは笑顔で、ネロは照れ臭そうに鼻を鳴らしたかと思うと、意地悪な笑みを浮かべて口を開いた。


「……で、ルディも もう分かってんだろ?」


 ……はい?

 何が?

 ネロよ、主語が無いと何の質問をしているのか分からないぞ。


 俺が頭に疑問符を浮かべていると コチンッとあまり痛くない拳を頭に受ける。


「はっ。黒幕が誰かって事だよ。その花畑な脳ミソでも、もう理解しただろ?」


「……あぁ、それね」


 ネロは自分のベットに戻りながら言葉を放つ。

 俺は痛くないが拳をぶつけられた頭を撫でながら答えた。





















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