──第106話──

俺はすぐにショーンの元へ駆け寄り、ショーンを抱き上げる。

ショーンは身体に力が無く、ぐったりとしていた。


「ショーン!生きてるか!?」


「……ぅ…………。」


俺がショーンに呼び掛けると、目を少し開いたショーンから力の無い声が返り、そのまま意識を手放した。


息は……してる。

良かった。

防御膜が効いてたんだな。


ショーンは上半身が燃え、シャツは原型を留めていなかったが、多少の火傷で済んでいた。

おそらく、吹き飛ばされた時の衝撃で気絶しただけだろう。


俺はホッと胸を撫で下ろして、ショーンを寝かせた。


生きてる。

……でも、まだ眠っといてもらった方が良いかな。

…………これからの事を思うと、ショーンは見ない方が良い。


俺はショーンを降ろし、怪我を治癒で治してから結界を張り、ショーンに攻撃をした人間に言葉を放つ。


「……何で攻撃した?仲間なんじゃねぇのか?」


「そこの小僧はただの雑用係だ。仲間等では無い。」


ローブの人間が言葉を発すると、援護する様に他の人間からも声が上がる。


「主様が言うから雑用をさせてやってたんだ。」

「主様はお優しい……。こんな救い様の無い子供にまで。」

「あの子供が死んでたら魔術をかけるのはどうだ?」

「それは良いな。まだ子供では試してない。」

「やってみる価値がありそうだな。」

「ただ、子供の身体で耐えられるかどうか……。」


俺は、既にショーンを素材として見ている人間に怒りを覚え、言葉にする。


「てめぇら……いい加減にしろよ。」


「いい加減にするのは そちらの方だろう。……全員やれ!」


一人の人間の掛け声を きっかけに杖から光が溢れ、魔法が飛び出してくる。


俺、ネロ、ラルフは方々に散ると目の前にいる敵を薙ぎ倒して行く。


「接近戦出来ねぇ奴が前に来んじゃねぇよっ!」


ネロは敵のあまりの弱さに拍子抜けし、相手に対して怒鳴りちらしていた。


確かに魔法は強い……方だと思う。

比較対象がライアの魔法だから……なぁ。

それと比べると弱いんだよな……うん。


ネロとラルフは、魔法を避けると相手の懐に入り攻撃を仕掛けていた。

二人は魔法を使わずに肉弾戦で対応していた。

おそらく、魔法を使うとレベル差により殺してしまう可能性があるからだろう。


手加減してるな……。


俺はそう思っているが、杖を持ったローブの人達はそう思っていない様子で魔法を当てようと躍起やっきになっている。


繰り広げられる魔法で周りはフラッシュライトの点滅が至るところで起こり、壁や床が崩れていた。


「戦うの苦手なんだねーっ!」


ラルフの言葉となかなか俺達に攻撃が当たらない様子に、人間達は苛立ちはじめていた。


「くそっ!こいつら化物ばけものか!?」

「人間の皮をかぶった化物ばけものめ!」

「やはり、主様の言葉は正しかったんだ!」

「銀髪の仲間も化物なんて聞いてないぞ!?」

「いいからやれ!」

「何で攻撃が当たらないんだっ!?」


化物呼ばわりはヒドくないか!?

俺は人間っ!

人間に化けてるのはそこの狼二匹っ!!

……化物じゃねぇけど、あながち間違って無いってーのも何か腹立つなぁ。

……。

攻撃当たらないのはお前らが遅いからだよっ!

発動が遅いんだよ!

魔力操作下手くそか!?


俺は人間の言葉に色々と思う事はあったが、俺が言うより先にラルフとネロが言葉を返していた。


「僕は化物なんかじゃないよー!?」


「お前らの攻撃が下手くそなんだよ!」


そんな喧騒の中、俺に向かって一人の人間の魔法が飛ばされてきた。

攻撃を仕掛けて来たのはショーンに魔法を放った人間。


俺は 赤く光る炎の魔法を俺は後ろへ飛び退き、口を開く。


「なぁ、何で銀髪が狙われなきゃなんねぇんだよ。」


「主様がおっしゃったのだ!銀の毛色を持つ者は人間を殺す化物だ、と!」


俺は不思議に思っていた事を聞いたが……。


聞いても意味が分からん!

なんだそれ!

「主様って誰だよ。」


俺は飛んで来る魔法を左右に避け、相手の懐に入り込んで言葉を溢す。

肋骨ろっこつな折れる音と共に、人間は俺の攻撃の衝撃で後退った。


「主様は神に認められたお方だ!まだお若い方だが、神のお声を聞き、神に選ばれ、神の意思を我らに伝える……まさに聖女のようなお方なのだ!」


いやいや、聖女が人間や魔物を無作為に殺すか!?

それ、聖女じゃなくて悪女じゃん。

詐欺にあってんじゃねぇの?

……てか、主様って女なのか!?

え、どうなんだ??


後退った位置から演説を始めた人間。

人間は肋骨ろっこつが折れ内臓に傷がついたのか げほげほ 咳き込むと血を吐き出した。


周りを見ると殆どの人間は気を失って倒れていた。

ネロとラルフは目の前の敵を昏睡させている所だった。


「ぜぇ……ぜぇ……主様がいなければ……」


え、まだ喋んの?


「そこの……小僧も……ぜぇ……ぜぇ……主様に救って頂きながら!裏切る様な真似を───ゴホォ!」


「お前、黙れよ。」


俺は人間の顔面目掛けて拳をぶつけると、人間の顔が地面にめり込んだ。


戦闘が終わったネロとラルフが俺の所へ駆け寄り、ネロが口を開いた。


「そっちは終わったのか?」


「弱かったねー!」


「こっちは うるさかったけど終わったぞ。」


俺達の周りには気を失った人間に、魔法で抉られた壁と床があった。


そろそろ帰ろうとしていると、足元で人間が動く気配がし、そちらに視線を向けると俺が顔面パンチした人間が口を開く。


「我らは死なぬ……。」


しぶといなっ!

大人しく寝とけよ!

殺して無いんだから死ぬ訳ないだろ!

バカか?

バカなのか!?

本気で手加減してるのに気付いてないのか。


息も絶え絶えにいつ意識を手放すか分からない人間を前に、俺、ネロ、ラルフはその人間を見下ろしていた。

















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