──第67話──

相手を捕まえ、三人で一息つくと、ネロ、続いてラルフが俺に質問してきた。


「何でコイツは爆発しなかったんだ?」


「本当だよねー?僕達の方は全滅だったよー?」


「最初のネロとラルフの戦いを見てたら、戦闘不能になったら爆発しただろ?」


「そうだな。気絶させたら吹っ飛んだ。」


「僕は足二本、腕一本までは爆発しなかったけど、もう一本の腕を落としたら爆発しちゃったー。」


「……うん、だよ、な?」


ラルフ……その物騒な台詞はオブラートに包んでよ。

思い出しちゃったじゃん。


俺は咳払いをしてから言葉を続ける。


「それで、俺は意識があって五体満足なら爆発しないって思ったんだよ。」


「それ、当たり前だろ。」

「普通の人は皆そーだよー?」


「いや……だって、まず、この条件をクリアしないといけないって頭に置いといて……次は捕まえた時に爆発しない方法は何か……何で爆発するのか、を考えてたんだよ。その時に思い出したのが、ラルフの言葉だ。」


「えー?僕ー??」


「そう、行動を起こすから結果が出る。それと、口の中に魔力を込めるって話だよ。」


「それがどうかしたのか?」


ネロの問い掛けに俺は一つ頷いて、さっきの状況を説明する。


「剣を交えた時に力比べになったんだよね。普通、力を入れる時って歯を食い縛るものだと思うんだ。そうしないと、力が入りにくいからね。」


「確かにそうだよな。一気に力を入れようとすると、息も止めるし……口にも力が入るかもな。」


「そう、力が上の相手の時は意識的にしろ、無意識にしろ……どうしても力が入る筈なんだよ。なのに、歯も食い縛らず、力比べに負ける……何か変だろ?」


「本気でやる気が無かったとかー?」


「ラルフ、それならあの殺気にはならないだろ。」


「ネロの言う通り、本気で俺を殺しに来てたのに、だ。おかしいと思って二回目も同じ状況にしたんだけど、奇声を上げるだけで、口を閉じないんだよ。だから俺は魔力を込める以外にもう一つ条件があると思ったんだ。」


「それが歯を食い縛るって事か?」


「確証は無かったけどね。多分合ってるんだと思う。そうじゃなかったら、今、コイツは捕まってない筈だしな。」


俺は床に転がっているローブの人を視線で示す。

すると、ラルフは笑顔で喜びを表した。


「ルディすごいねー!!よく分かったねっ!!」


「捕まえたのは良いが……腕を怪我せずに捕まえる事は出来なかったのか?」


「そうしたかったんだけど、手頃なモノが無かったからね。」


「だからって自分の腕でやる事無いだろ……。食い千切られたらどーすんだよ。」


「いや、治癒出来るからいっかなって。腕を食い千切られるのはラルフにもやられてたし。」


「お前……感覚おかしいぞ。」


ええ!?

そうか!?

昔、テンション上がったラルフに何回か食い千切られたよ!?

だから治癒で治るって知ってたし!!

治るなら別に良くない!?

いや、痛いのは痛いけどさ!

でも、心配して言ってくれてるんだろうな……。


「いや、うん?うー……ん……ネロから貰ったローブに防御の魔術があるから食い千切られはしないかなって思って?」


俺は他の言い訳を適当に言うと、ネロは頬を染めてそっぽを向いてしまった。


「……チッ!そんなもん当てにするなよ!」


おお、照れてる照れてる。


「あはは、うん。分かったよ。ありがとう、ネロ。」


「……ふん!」


「あはは!!ネロが照れてるー!!」


「うっせぇぞ!ラルフ!!」


わいわいと騒がしくなった俺達の所にエヴァンとクリス、そして王女様が俺達の所に来る。


「ラルフ……先程は助けてくれて、ありがとう。」


「あはは!全然大丈夫だよー!」


エヴァンがラルフに頭を下げ、ラルフは笑いながら頭を上げるように促す。

すると、今度はクリスがネロに向かい頭を下げた。


「ネロ様……いつも、ありがとうございます。ルディ様も、ラルフ様もありがとうございました。」


「……別に。」


「あはは!どーいたしましてっ!」


「う、うん。」


ネロ、ラルフ、俺はそれぞれ返答すると、次は王女様が俺に近寄ってきた。


「ルディ様、一度だけで無く、二度も助けて頂き……本当にありがとうございます。何かお礼でも………」

「いや、いらない。」


俺は王女様の申し出をピシャリと断る。


俺は俺のやりたい事をやってただけだし。

お礼を貰って、「これあげたんだから、次はこれやって。」とか言われるの、嫌だし。

前世であったんだよなー……。

お礼に奢るわって言われて奢って貰ったら、次に会ったときに、この前奢ったんだからさーって言われたんだよな……。


そう思い、申し出を断るが、王女様は尚も食い下がる。


「ですが……何度も助けられているのに、何もお礼をしないと言う訳にも……何かお礼をさせて貰えませんか?」


えぇー……。

本当に何もいらないんだけど。

お金は……里で使わないし。

今持ってる分だけで充分だと思うし……。

足りなくなったらギルドで依頼受ければ良いしな……。

土地とか物とかは邪魔になりそうだからいらないしな……。


「うー……ん。特に欲しいモノも無いから、何もいらないかな?」


「そ、それでは、私の気持ちが収まりませんわっ!」


いや、気持ちを収めて、何も出さずに納めといてくれ。

何もいらん。

でも、納得してくれないんだろうなー……。

うー……ん。


「俺は、笑顔でお礼を言ってくれるだけで充分、かな……?」


俺が適当な事を口にすると、ネロとラルフが小さい声で「うわぁ……」と言っている声が聞こえてきた。


……なんだよ。


王女様の顔がみるみる内に赤くなり、勢い良く頭を下げてきた。


いや、頭を下げろとは言ってないぞ。


「本当にありがとうございました!」


言葉を言い終えると王女様は顔を上げ、満面の笑顔を俺に向けた。


「どーいたしまして。」


俺も笑顔でそれに答える。


よし、これでお礼を貰った事になるだろう。

もう何も言われなくて済むな。


後ろでネロとラルフはこそこそと何かを話していた。


なんだよっ!!

言いたい事があるならちゃんと言えっ!!























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