──第61話──
ニーナとラルフは会話を楽しみながらカードを出していく。
ニーナは騎士、農民。
ラルフは農民、騎士。
の順番でカードが出された。
「う~ん……やっぱりラルフ君の考えが分からないよー!」
「考えすぎだって~。」
ニーナが天を仰ぎ、ラルフはそれを見て苦笑する。
「これで、私の勝ちは無くなった訳だけど……引き分けには持って行きたいなー……。」
「僕は勝ちたいかな!」
「そうだよね~……。うーん……。」
ニーナは手元の二枚のカードを眺め、ラルフはニーナの様子を伺っていた。
「そう言えばさ!何でニーナは魔術師になったの?」
「ん?気になる??」
「うん!僕の周りには魔法を使う人が多いからね!どうして魔法じゃなくて魔術を選んだのか気になっちゃった!」
「そうだなー、私は元々魔術が好きだったんだよねっ!」
「へぇ!きっかけ とか あったの??」
「私の両親が冒険者だったんだよね~!魔法や魔術を教えて貰ってたんだけど、魔術って自分の属性に関係無く色々な魔法として使えるでしょ??」
「うん!そうだね!!」
「その魅力に惹かれたんだよねっ!それに、庶民でも学べるしね!」
「へえ!そうなんだ!!」
「小さい頃は図書館でずっと魔術の本を読んでいたよ!読んでいる内に魔術はまだまだ発展出来るって思ってね!?それを研究するのが、凄く楽しいんだっ!」
「すごーいっ!頭良いんだね!!」
「そんな事ないよ~!研究に没頭してただけだよ?」
「それだけでも凄いよ!!」
「そうかな~!えへへ、ありがとうっ!!……うん!よし、決めたっ!!」
ニーナは照れ臭そうに笑うとカードを一枚、机の上に置く。
ラルフも続けて置き、掛け声と共にめくる。
ニーナが貴族。
ラルフは王様のカード。
「あ~ぁ、負けちゃったっ!」
ニーナは悔しそうに残った一枚の王様カードを机に投げ出した。
「楽しかったね~っ!」
ラルフはカードを片付けながらニーナに笑いかける。
片付け終わると、ラルフは俺と席を交代した。
「さて、最後はルディ君か!」
「……お手柔らかに。」
笑顔で迎えてくれたニーナに、俺は苦笑した。
だって、今までの見てたら勝てる見込みなくない!?
強すぎない!?
勝てるラルフがおかしいと思うんだけど!!
そして勝負は見事惨敗。
うん、なんか……
ごめんね?
初手で反逆を決められてしまい、そこからはもうニーナのペースでゲームは進んでいた。
ニーナが俺に話しかけるも適当に相槌をするくらいしか、俺には余裕が無かった。
真剣にやってたけど、惨敗。
俺……このゲーム苦手だわ。
そう認識した。
「じゃ、約束通り!サム様と話してもらえるかなっ!!」
「約束だしな……分かったよ……。」
ニーナが手を叩いて俺達に言葉を投げ掛ける。
それを俺が受け取り、肩をすくめながらも答えた。
そんなに念押ししなくたって、賭けをしていたのに、負けたからって「やっぱ嫌だ」なんて言わないよ。
約束は約束。
ちゃんと守るよ。
「団長!ちゃんと勝ったよっ!!」
「相変わらずニーナは強いな……。」
「……ところで、王女様にはいつ会うんだ?」
ニーナがエヴァンに報告をし、エヴァンが感心している所に俺は質問を投げ掛ける。
俺の質問にエヴァンが答えようと口を開いた。
「あぁ、それは……」
「よぅ!エヴァン!!どうなった?」
いきなり声を掛けて来たのは途中退出したウィルだった。
「賭けはニーナの勝ちだ。」
「へぇ!さすがニーナだなっ!」
「でしょ!でしょ!!これで、ルディ君を抱き締めても良いよねっ!?」
「「「……は?」」」
いきなりのニーナの発言で俺とエヴァン、ウィルの言葉が重なった。
その様子を不思議そうに首を傾げながらニーナは言葉を続ける。
「え?だって賭けに勝ったら抱き締めても良いんじゃないの?」
「そんな約束はしてない!!」
俺は精一杯否定する。
何で抱き付かれなきゃいけないんだよ!?
意味わかんねぇ!!
「そうだっけ?」
尚もとぼけるニーナに俺はエヴァンに助けを求める。
「そんな約束してないよな!?」
ネロやラルフに聞いても、口裏を合わせてるって言われるのは嫌だからなっ!
頼むぞ、エヴァン!!
ちゃんと真実を言ってくれ!!
「あぁ、それはしてなかったぞ。……ニーナ、〈神の子〉……伝説の人に出会え、抱き締めたいと言う気持ちは分かるが、本人が嫌がっているんだ。我慢しなさい。」
まるで子供に言い聞かせるかの様に静かにニーナを諭す。
気持ち分かっちゃうの!?
て、エヴァンもそう思ってるって事!?
絶対嫌だよ!?
何のご利益もないし!
俺自身は伝説でも何でもないから!!
「え~っ!減るもんじゃないし、ちょっと位良いでしょ!?」
ちっとも良くない!!
減るから!
俺の精神的ダメージがゴリゴリ減っちゃうから!!
お願いっ!
近寄らないでっ!!
エヴァンの言葉も届かず、ニーナはじりじりと俺に近付いて来る。
それを止めてくれたのはウィルだった。
「ニーナ!いい加減にしろよ!?」
「ぐぇ!?」
ウィルはニーナの首根っこを掴むと俺から引き離してくれた。
ありがとうウィル!!
でも、めっちゃニーナの首しまってるよ!?
「エヴァン、こいつ邪魔になりそうだから連れてくわ。」
「あ、あぁ。そうだな……」
ウィルはニーナを担ぐと、エヴァンにそう言いその場から歩き出した。
「ちょっと!私は荷物じゃないんだよ!?」
「うっせぇ!ニーナの扱いはこれで充分だ!」
「私は乙女なんだよ!!もっと乙女に似合う運び方をしてくれないかな!?」
「して欲しけりゃ、乙女らしくするんだなっ!!」
「どこから見ても乙女だよね!?ウィルの目がおかしいんじゃないかなっ!?」
「俺の目は正常だっ!」
ニーナとウィルは騒ぎながら食堂を後にしたのだった。
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