──第59話──

俺達と向こうとの空気は険悪になっていた。


普通に話し合いをしていれば、こんな事にはならなかっただろうに。


何で、そう……

答えを急いで出そうとするのかな。

こっちにだって考える時間くらいくれよ。

これで、信用は地の底どころか地獄の底にまで落ちたよ。

一緒に行動したりする協力は選択肢から消えたな。

でも、情報は欲しいんだよな……

うん、難しいな。


誰も何も言葉を発しない、静寂した空気。


そんな空気を破ったのはニーナだった。


「このままじゃらちが明かないから、賭けで決めるのはどうかなっ!」


この状況で賭けかよ!

この人、本当に状況分かってる!?


「賭け?」


ネロが眉をピクリと動かし、問い掛けた。

それに対し、ニーナは懐からカードを取り出す。


「そう!このカードゲームで勝負するんだよ!」


取り出したカードは以前教えて貰った“フォルテ”のカードだった。


ラルフがカードを受け取りながら言葉を投げ掛ける。


「勝負の内容はー?勝ったら負けた方の言う事を聞く……とかー?」


「それだと、君達は勝負を受けてはくれないんじゃないかな!」


「そうだねっ!」


二人は笑顔で会話を続けていく。


なんか、怖い。


「まず、君達が勝ったら、私達三人は二度と君達と関わらない事を誓うよ。それで、私達が勝ったらサム様と話して欲しい。協力するかどうかは、その時にまた決めてもらっても良いよ!……ね?団長もそれで良いよね?」


ニーナは振り向きエヴァンにウィンクをした。


「ん?……そうだな。それで構わない。」


「君達の方はどうかなー?」


エヴァンはニーナに答えた後、ウィルに耳打ちをするとウィルは食堂から出ていった。

その間に、ニーナは俺達に質問を投げ掛ける。


条件的には悪く無いと思うんだけど。


ネロは大きなため息を吐き、ラルフはナゼか笑い出した。


どうした、ラルフ。

ついに壊れたか?


「あははははは!僕は勝負を受けた方がかなって思うなっ!」


「そうだな、その方がだな。俺はルディの二の舞になりたくないしな。」


「あははははは!僕もだよー!」


え!?

なに!?

今までの流れで何がどうなってそうなったの!?

分かって無いの俺だけかよ!!

説明してくれよ!!

頼むからさ!!


「ルディは?」


何の説明も無しにネロが聞いてきた。


いや、俺には何が何だかさっぱりなんだけど。


「二人が良いなら良いよ。」


と言う他無いと思う。


「じゃあ、勝負を受けてくれるんだねっ!」


ニーナは両手を叩いて笑顔で喜んだが、ネロが人差し指を立て、ニーナに問う。


「一つ条件を付け足してくれたらな。」


「ん?なにかなっ!」


「俺達が勝った場合……俺達が求めた情報を開示かいじすること、だ。」


なるほど!

同じ目的を追っているんだから、それなら情報だけ貰えるなっ!

ネロ!

頭良い!!


「ん~……それは、どうなのかな?……ね?団長はどう思う?」


話を振られたエヴァンは腕を組み、少し悩んでから口を開いた。


「機密事項もあるからな……。どんな内容かにもよる、だろうな。欲しい情報の内容を聞いても良いか?」


「……今は言わない。」


え、今言わないの?

まぁ、ネロにはネロの考えがあるんだろうな。

俺には分かんないや。


「そうか、なら……俺達に出来る分だけの、伝えられる部分だけの情報の開示……になるが、構わないか?」


「それで良い。」


エヴァンは少し悩みながらも言葉にすると、ネロはそれを受け取った。


「よしっ!決まりっ!!さあ、勝負しようかっ!!」


ニーナは元気良く宣言すると、勝手に椅子を持ってきて俺達のテーブルに座る。


気を効かせてくれたのか、店員が料理の乗っていない皿を引き取りに来てくれた。


こういう心遣いって嬉しいな。


料理の乗っている皿があるものの、スペースのいたテーブルにカードが置かれる。


「私、“フォルテ”は得意なんだよねー!勝負は何回勝負にする?あ、そっちは三人だから一人一回の三回勝負でも良いよ!」


「……何回勝負でも良いが、そっちは、あんた一人でやるのか?」


ネロがニーナに問い掛けると、ニーナはエヴァンをゆびし笑顔で答えた。


「そうだよ!団長は正直者過ぎて弱いんだよねっ!」


「……俺が弱い訳じゃないぞ。ニーナが強すぎるだけだ。」


エヴァンは少し不貞腐ふてくされた様子で抗議する。


「うん!それで良いよ!私が勝負して良いよね?」


「初めからそのつもりだっただろう……。」


エヴァンの発言をニーナは笑顔でかわし、エヴァンは苦笑しながらも答える。

ニーナはエヴァンとの話が終わると、俺達に向き直った。


「と、言うことで、私と勝負しよっ!そっちも誰か一人でも良いよ?」


そう言われても、難しい所だな。

俺とラルフは、この前初めてやっただけだから、得意かどうかも分からないし。

ほぼ、俺とラルフは未経験者に近い。

ネロは経験者だけど、前の感じを見てると、強いって印象は無いんだよな。


「俺達は一人一回ずつの三回勝負で良いんじゃないか?」


俺が、ネロとラルフに提案すると二人とも頷いてくれた。


「そうだな、それで良いんじゃねぇか?」


「うん!なら順番はどうするー?」


「俺からやる。」


「じゃ、僕はネロの次ーっ!」


「俺が最後かよっ!!」


流れる様に順番を決められ、言葉に乗り遅れた俺が一番最後になってしまった。


いや、良いんだけどさ!

最後って、すげぇプレッシャーなんだけど!!


そして、相手はニーナに対し、ネロ、ラルフ、俺の順番で勝負する事になった。



















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る