声の主
樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須
声の主
「いってきまーす」と言って最寄り駅へと向かう。いつもと変わらない朝、のはずだった。
大好きな曲を聴きながら歩いていると「そこのお嬢ちゃん」と呼ばれた気がした。
ヘッドホンを外しながら「はい?」と返事をした。
キョロキョロして声の主を探していると、真後ろから腰の曲がった小さいお婆さんが「気を付けなさいね~」と一言だけ言って人混みへと消えていった。
不思議に思いながら横断歩道で信号待ちをしていると、右からけたたましい音が聞こえてきた。
車が猛スピードでこちらへ向かってきたのだ!
「危なーいっ!」と大声で叫んだ。
私以外にも横断歩道にはたくさんの人がいたが、危険を知らせたおかげで誰一人として怪我人は出なかった。
お婆さんに声をかけられずにヘッドホンをしたままだったら車にひかれていたかもしれない。
そう思うとゾッとした。
帰宅してから朝あった事を母親に話すと、声をかけてきたお婆さんは私のひいばあちゃんかもしれないと聞かされた。
写真を見せてもらうと、腰の曲がった小さいお婆さんが写っていた。間違いなくひいばあちゃんだった。危険を知らせてくれたみたいだ。
「ひいばあちゃんありがとう」と仏壇に手を合わせた。
声の主 樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須 @ituki505
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます