やり直せるなら

勝利だギューちゃん

第1話

俺は今、臨終の時を迎えようとしている。


俺の夢は、「普通に平凡に暮らす」というものだった。

「つまらない」と思われていたが、この世の中は、普通に生きる事が一番の贅沢な夢だ。

そう思っていたから。


間違っても、歴史にその名を残したくなかった。


自分が死んだ後で、知らない人にまで、

「好き」とか、「嫌い」とか、言われたくなかったからだ。


しかし、運命とは皮肉。

得てしてこういうタイプほど、平凡には生きられないものだ。


≪久しぶりだね≫

≪ああ≫

≪覚えているんだ、私の事、珍しいね≫

≪そりゃあね≫


20歳になったころ、

俺の前に、ひとりの天使が現れた。


そして、俺に告げた。

【君の寿命は、後、○○年よ・・・】と・・・


それが、長いと感じるか、短いと感じるかは、その人次第。

ただその時の俺は、宙ぶらりんな気持ちになった。


普通は消されるらしい・・・

その時の記憶を・・・


しかし、何故か俺は覚えていた。

なので、それを小説にしてみた。


『もし、ある日天使が来て、寿命を宣告したら、どう生きるか?

それを、オムニバスで書いたら、面白いかな』と・・・


そして、ダメ元で書きあげて投稿したら、それが入選してしまい、

気がついたら、売れっ子作家になっていた。


確かに金は入った。

可愛いお嫁さんももらった。


でも、プライベートな時間はなかった。

つまり、プライベートな時間を売って、報酬を得ていたのだ。


望んでいた、生活とは異なっていた。


でも・・・


≪後悔している?≫

≪いや、贅沢だろう・・・≫

≪正直に答えて・・・≫

≪ああ、ひとうだけ、後悔している≫

≪何を?≫

≪本名で活動していたことだ≫

≪何それ?おかしいね≫


後悔はたくさんある。

でも、もし本名でなければ、

少しは、プライベートな時間は、持てたかもしれない・・


≪じゃあ、逝く?そろそろ≫

≪ああ≫


俺の魂は、器から抜けた。


≪ねえ≫

≪何だ?≫

≪もし、生まれ変わったら、どう生きる≫


≪今回と同じ人生を生きる。ただ・・・≫

≪ただ?≫


【多少の修正は、するけどね】

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やり直せるなら 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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