第八章 魔神の神殿~ 永遠の命と裏切りの末路(3)
ここは、”力”の試練が試されている右側の部屋。
試練のクリア条件、それは、重さ数トンはある巨大な岩石を少しでも動かすこと。
赤き鎧の剣士クレオートはその条件を満たそうと、汗水垂らしてがむしゃらに力を示していた。だが、岩石は地に根を張ったようにピクリとも動かない。
力量の魔パワラルのせせら笑う声が響くたびに、クレオートの表情に自信喪失の色が映る。まるで、気力も体力も吸い取られていくかのごとく。
「おいおい、同じことの繰り返しだな。まぁ、よい。時間の制限はない。ゆっくり考えながらやってみることだ」
溜め息交じりで漏れたパワラルのそんな一言。クレオートはそのおかげで、少しだけ焦れる熱を冷ますことができた。
ただ力任せでどうなるものでもない。ここは一つ、冷静になって熟考してみることも大切だ。クレオートは瞳を閉じると、頭の中で攻略する糸口をイメージしてみた。
(重量のあるものを動かす……。押したり、吊ったりできないのならば、他の方法とは?)
クレオートの頭の片隅に浮かんでくる、おぼろげに具現化されたイメージ。硬い物を動かすためには、こちらも硬い物で対抗するしかない。
試してみる価値ありと、瞑っていた瞳を見開いた彼は、大剣ストーム・ブレードに手を宛がい、パワラルにたった一つの質問をした。
「道具を使ってもいいのか?」
「ああ、構わん」
パワラルはあっさりと承諾した。空中で胡坐をかきながら踏ん反り返る彼、その不敵な笑みは、クレオートが発案したアイデアを楽しみにしているようだ。
クレオートはどういうわけか、頭部を保護している紅の兜を外した。それを岩石の近くに置くと、次に大剣を鞘から抜き取る。
そして、暗闇の中でもかすかに輝く大剣の剣先を、岩石と床の間に滑り込ませた彼は、大剣の刀身を兜の上にそっと寝かせた。
これにて準備完了といった顔をするクレオート。果たして、この二つの道具を使って何をするつもりなのだろうか?
「フッ、なるほどな」
ニタリと薄気味悪く微笑んだパワラル。どうやら彼は、クレオートの手法を見破ったようだ。
その仕掛けこそ、いわゆる”てこの原理”。岩石の下にある剣先を作用点とし、兜が支点、そして大剣の柄が力点というわけだ。
重たい物に回転ベクトルを与える”てこの原理”だが、比重がかかる支点となる兜、さらに、力点と作用点を担う大剣にそれほどの耐久力があるのか、そこが重要な点となるだろう。
大剣の柄である力点こそ、一番に力を込めるポイント。できる限り助走をつけようと、クレオートは岩石から離れて一定の距離を置いた。
「そんな柔な小細工で、岩石を動かすことができるかな?」
安直とも言える攻略法を鼻で笑い、パワラルはふてぶてしくそう呟いた。
彼が嘲るのも尤もで、巨大な岩石と大剣の差は歴然、大きさで比べればゾウとウサギといったところか。
この作戦を実行すれば、相当な比重がかかるのは間違いなく、最悪の場合、兜がへこんだり、大剣の刀身が折れてしまうかも知れない。
それでも、クレオートに躊躇いはなかった。今の彼の頭の中にあるものは、己の最大限の力量で、どっしりと腰を据える巨大な岩石を動かすことだけだった。
「いくぞっ!」
クレオートは床を蹴り出して勢いよくダッシュする。力点となる大剣の柄に焦点を合わせると、彼は高々と暗闇の中でジャンプを試みた。
まるで空中を闊歩するかのごとく宙を舞う彼は、持ち合わせているすべての力を振り絞って、揃えた両足を大剣の柄へ叩き落とした。
ズシーン!と、地響きにも似た重低音が室内に反響する。
叩き付けられた反動により、兜を支点にして、大剣の刀身が弓なりに曲がった。
当然ながら、反り返った大剣は自然現象によって元の形に戻ろうとする。その時こそ、剣先である作用点にクレオートの渾身の力量が発揮される瞬間だった。
「むっ!」
訝しげに目を細めて唸り声を漏らしたパワラル。それもそのはずで、あの支柱のように根を張った巨大な岩石が、ビクッとかすかな微振動を起こしたからだ。
それは大きく動くことはなかったが、”てこの原理”が功を奏し、岩石の位置はわずかながらも数ミリほどずれていた。
「やったか!」
クレオートは喜びのあまり、思わずガッツポーズを披露してしまった。不可能を可能にできたのだから、その喜びもひとしおだったのだろう。
偉業を成し遂げたクレオートに脱帽しているパワラルだが、何よりも感服させられたのは、あの岩石を動かすほどの比重に耐え抜いた、傷一つ負っていない兜と大剣の頑丈さであった。
「お見事だ。約束通り、試練の合格と認めてやろう。おまえの力の根源には、その兜と大剣も含まれていたようだな」
パワラルは拍手をしながら、クレオート本人の力量、そして、優れた耐久力を持った兜と大剣に敬意を表した。
大活躍した栄えある武具を装着し、ホッと安堵の吐息をついた赤き鎧の剣士は、使命と言うべき”力”の試練を見事に乗り越えることができた。
「これならば、魔神殿に会う素質だけはあるようだ」
試練合格のご褒美ではないが、パワラルは封印されていた部屋の扉を解放した。
クレオートは勇ましく、光が差す方角へと歩き出す。その先にいるであろう、偉大な魔神と戦うために。
◇
クレオートとスーパーアニマルの奮闘により、”知恵”の試練、そして”力”の試練は攻略完了した。
残る一つは”心”の試練。それをクリアしなければいけないシルクは、真っ暗闇の部屋の中で一人佇んでいた。
精神の魔メンテラルの姿はここにはない。彼は細部を一切伝えることなく、この闇の中にひっそりと紛れてしまった後だった。
心を試すとはいったいどういうことなのか? 闇のしじまに精神を支配されていた彼女、背中に緊張の汗が湿り、心に不安と動揺が広がる。
その刹那、真っ暗な空間の中に、突如誰かのすすり泣く声が聴こえてくる。
声の鳴る方へ耳を傾ける彼女、キョロキョロと周囲を見渡し、その声の正体を突き止める。
えーん、えーんと泣きべそをかいていたのは、薄手のトレーナーに半ズボンを履いた、まだ年端もいかない人間の男の子であった。
「……君、どうかしたの? 怪我でもしたの?」
シルクは恐る恐る近づき、膝を抱えて蹲っている少年に声を掛けた。
彼は顔をくしゃくしゃにして涙ながらに訴える。ボクの友達が死んでしまった、と。
友達の死、それは少年にとっては計り知れないショックな事実であろう。彼女はその悲劇に同情し、彼と同じ目線になろうとしゃがみ込んだ。
「お友達は、どうして死んでしまったの?」
「殺されたんだ。……剣を持った女の人に」
シルクはゴクッと生唾を呑み込んだ。すぐに返事が思いつかず、凍ったように口を閉ざしたままだ。
少年の悲痛なる告白、何よりも憎悪に満ちた彼の表情が、彼女の心拍数を破裂させるぐらい速める。
違う、違うに決まっている――。自分のことではないと信じる彼女だが、なぜかその両手は小刻みに震え出していた。
彼はさらに言葉を紡いだ。まるで、戸惑いを振り払おうとする彼女を追い詰めんばかりに。
「闇の世界から脱出するために旅をしている、どこかのお姫様に殺されたんだ」
呼吸が停止し、心臓まで止まりそうになるシルク。
名剣をその手に従えて、闇魔界から脱出しようと旅を続けてきた一人の王国王女、それは紛れもなく、ここにいる彼女以外に他ならない。
この少年のお友達なんて知らないし、殺したりなんてするはずがない。彼女はこれまでの過去を振り返り、自らの心に嘘はないと頑なに誓う。
次の瞬間、少年は溢れる涙を零しながら、いきなり彼女の膝にすがりついてきた。
「どうして、ボクのお友達を殺しちゃったんだよー!」
「ちょ、ちょっと待って! あたしは、君のお友達を殺してなんて……」
「殺したじゃないかー、ボクの大切な魔物たちをー!」
少年の悲しみと憎しみを宿した瞳が、シルクの心にグサリと突き刺さる。
彼の口から飛び出す数々の魔物たちの特徴。それはすべて、彼女がこの世界で遭遇し、やむを得ずに死に追いやった魔物たちであった。
まるで一部始終を見ていたかのように、激戦の様子を鮮明に語っていく彼。友達を失ってしまった悲嘆の声が、この真っ暗な空間の中にこだました。
「そ、そんなこと言っても、相手は魔物なんだもの。人間の敵なんだよ」
「誰がそんなこと決めつけたのさ。魔物だって、人間と同じ生き物じゃないか!」
シルクは何も言い返せなかった。少年の言う通り、魔族でも人間でも生を持つ者同士。いわれもなく命を奪われる理由などどこにもないのだ。
ふと、彼は涙を拭いながら立ち上がる。そして、怨念を映した表情のまま、半ズボンのポケットから鋭く尖った何かを取り出した。
「……ねぇ、死んでよ」
不気味に輝くナイフを突き立てる少年。何の躊躇いもないその行為に、シルクはゾクッと背筋が凍りつく思いがした。
この闇魔界において、罪と罰とはいったい何か? 一人の人間として魔族を滅ぼすことなのか、それとも、魔族の存在を脅かす人間という邪魔者を排除することなのか?
その答えに迷走し、心の中が動揺に埋め尽くされそうになる彼女。しかし、救世主として使命を背負った強い信念は、そう簡単に崩壊することはなかった。
こんなところで死ぬことはできない。彼女は口を真一文字に締めて、右手で名剣の柄を強く握り締める。
「あたしは、人間を救うために戦ってる。もしあなたが、人間を虐げる魔族を仲間だと言い張り、このあたしを殺そうとするなら、たとえあなたが子供でも、あたしは容赦なく戦うわ」
シルクが勇ましくそう言い放っても、少年のナイフは突き出されたままだった。
少しでも気を抜いたら精神面で負けてしまう。警戒心を高める彼女の表情に緊張が走る。
まさに一触即発の雰囲気――。ナイフが突進してくるのか、はたまた、名剣が鞘から引き抜かれるのか。見つめ合う二人は、一瞬たりとも視線を逸らそうとはしない。
いつの間にか、彼の顔から涙も悲しみも消えて、人間とは思えない青白い冷血な顔色に変わっていた。
ゴクッと、彼女は熱い唾を呑み込んだ……その直後、鋭く尖ったナイフの先端がピクッとかすかに動いた。
「てやぁ!」
シルクの輝ける一閃、疾風迅雷の居合切りが放たれた。
名剣の剣筋は真っ直ぐな線を描き、少年の体をナイフごと真っ二つに引き裂いた。
後悔の念に苛まれ、悔しそうに唇を噛んだ彼女。己の宿命だったとはいえ、人間の少年を殺めてしまった事実は揺るぎなく、罪悪感に全神経が雁字搦めに縛り付けられる。
致し方がなかったのだと、彼女は罪の意識を振り払い、名剣をそっと鞘の中へ収めた。
(えっ?)
ふと違和感を察知して、シルクは真正面に目を凝らした。
彼女の視界に映ったもの、それは、真っ黒な影となって闇に紛れていく、切り裂かれたはずの少年の姿であった。
すると、その暗闇の中から白っぽいマントが現れるなり、心を試す役目を担う、精神の魔メンテラルが実体化していった。
「よくぞ迷いを断ち切り、自分自身の信念を貫き通しましたね」
メンテラルは薄気味悪く笑いながらも、シルクの精神力の強さに賛辞の拍手を送った。
少年の悲しみに感情移入し、魔族を死に追いやったことを躊躇い戦意を喪失した時点で、闇の支配者である魔神と太刀打ちなどできるはずがない。彼が課した心の試練の真髄は、どうやらここにあったようだ。
彼女は使命のままに、少年の姿に見立てた迷いを断ち切り、飽くなき信念を貫き通すことができた。その意思こそが、この試練の合格を意味していたことは言うまでもない。
「あなたと魔神殿はどこか似ておりますね。もしかすると、それは偶然ではなかったのかも知れません」
真っ暗闇の部屋の中に光が射し込み、シルクが進むべき出口となる扉が開け放たれた。
「さぁ、その扉を越えていきなさい。あなたの仲間たちも、それぞれの試練をすでにクリアしています。扉を越えてから正面にある階段を上っていきなさい。魔神殿がおられる王の間へ辿り着けるでしょう」
これからが本当の戦い、どうか幸運を……。メンテラルから送り出されたシルクは、暗闇を突き通す光の道を迷うことなく辿っていく。
すべての試練を乗り越えた彼女たちだが、メンテラルの言葉通り、これからが本当の戦いであり、これからが本当の試練の始まりでもあるのだ。
(いよいよ魔神に会えるのね。そう、この旅の終着点に、もうすぐ到着するんだ)
扉の向こうにあるものは、灰色のブロックで囲まれている大広間。そこで、意気揚々とするシルクを待っていてくれたのは、無事に試練を乗り越えてきた仲間たちだった。
クレオート、そしてワンコーとクックルーも多少疲れた表情は見せていても、彼女と同じく、これから迎える最終試練を前に胸を躍らせていた。
「みんな、ご苦労さま。この階段を上った先に、魔神がいる王の間があるそうよ」
「ついに、この時がやってきましたね、姫」
「魔神との対決だワン。ドキドキするワン」
「こうなったら、魔神なんて蹴散らそうコケ」
シルクたちはここに一致団結し、声を掛け合って士気を高める。
”心”、”力”、そして”知恵”を携えた者たちは、全身全霊を尽くす覚悟で、王の間へ続くという階段を一歩一歩駆け上っていった。
この神殿は地上何階まであるのだろうか。螺旋の形をした階段はいつまでも続き、王の間らしきものは影も形も見当たらない。
どんなに焦りを感じても、シルクたちの両足は止まることはなかった。それはなぜか? 上階に行けば行くほど、邪悪な気配がどんどん大きくなっていたからだ。
そんな矢先、先を急ぐ彼女にとって、予期もしないアクシデントが発生してしまう。
「クッ!」
「!?」
リズミカルに先頭を走っていたクレオートが、突然その足を緩めてしまった。しかも、ぎこちなく片足を引きずりながら。
その異変に気付いたシルクも急ブレーキで立ち止まり、苦痛の表情を浮かべる彼のもとへと駆け寄っていく。
「クレオート、どうかしたの? いったい何があったの?」
それはもう、シルクの心配は尋常ではない。あたふたと慌てふためき、まるで落ち着きのない幼女のようだ。
兜の下から覗く表情は痛みを堪えており、クレオートは蹲ったまま右足首を必死になって擦っている。
「……姫、申し訳ありません。どうやら、先ほどの試練の時、右足首を痛めてしまったようです」
クレオートはてこの原理で”力”の試練を突破したが、その時、右足に必要以上の比重を掛けてしまったらしく、今になって無理がたたってしまったようだ。
しばらく様子を見たが、彼は立ち上がることはできても、歩くことができない状態だった。
こんなところで立ち往生しているわけにもいかず、シルクの命令により、ワンコーの治癒魔法が施された。しかし、彼の右足首は回復に至らないのか、その表情は苦痛に満ちたままだ。
「おかしいワン、オイラの魔法が効かないなんて」
もしかして、傷が深いのだろうかと、ワンコーは怪訝な顔をコクリと傾げるばかりだ。
魔神アシュラとの決戦を目前にして、シルクの表情に不穏な影が落ちる。仮にも、一番の戦力とも言うべき剣士の離脱は、何としても避けたいというのが本音だろう。
クレオートの回復を待ちましょう。シルクはメンバーたちにそう提案する。ワンコーとクックルーはそれに反対する理由もなく同意したのだが。
「姫、ここまで来て悠長なことを言っている場合ではありません。どうか先へお進みください。足が良くなり次第、必ず追いつきますから」
魔神がいるであろう階段の先を見据えて、口惜しそうにそう言い切ったクレオート。ここに来ての離脱は、彼にとっても痛恨の極みだったはずだ。
そんなことできるはずがない! シルクはあからさまに拒絶を示した。その時の彼女の心の中に、真実の館へ向かう途中で経験した、あの哀切なる胸苦しい思いが駆け巡る。
片時も離れたくない胸のうちを叫び続けるシルク。その涙ぐましい声の裏側には、別れてしまったらもう会えなくなるかも知れないという、彼女の沈痛な気持ちが見え隠れしていた。
「姫、ご安心ください。このクレオート、追いつくことをここに誓います!」
「嫌よ! これから魔神と戦うというのに、あなたなしで勝てるわけがないわっ」
シルクは泣きじゃくり、ほとんど駄々っ子のようだった。根っからわがままなところもあるが、クレオートが絡むと融通が利かなくなって収拾がつかない。
いつも宥め役に徹するワンコーとクックルーも、この時ばかりは彼女の気持ちがわかるのか、黙りこくったまま互いに困り顔を見合わせるしかなかった。
クレオートはふぅと吐息を漏らし、無理やり穏やかな笑みを作ると、しがみ付いてくる彼女の肩に優しく手を置いた。
「一国一城の王女が、こんなところで泣いてはいけません」
涙で目を真っ赤に腫らしたシルクは、泣き顔を持ち上げるなり、クレオートの柔和な笑顔を見つめる。
彼女の潤んだ瞳に映ったもの、それは、穏やかさの中にも逞しさと勇ましさを備えた剣士の顔だ。何者よりも信頼できて、誰よりも頼れるパートナーの素敵な顔であった。
ほんの数秒間、視線を逸らすことのなかった二人。そして、肩からそっと手を離した彼は、そのまま彼女の震える両手を握り締める。
「どうか信じてください、姫。わたしはお約束したはずです。最後まで、あなたのことを守ると」
「クレオート……」
クレオートの両手から熱意が伝わってくる。その暖かさが、シルクの悲しみに咽ぶ心の中にゆっくりと溶け込んでいった。
支配者(ルーラー)として生まれた以上、いつまでも子供みたいに悲しんではいられない。信頼のおける仲間を信じて、強大なる敵に立ち向かわねばならないのだ。
信頼の絆を深さを感じ合い、彼女たちはそっと手を離した。
くしゃくしゃになった泣き顔を腕で拭い、彼女はコクッと小さく頷いた。それはもちろん本意ではないが、自分のためにも、また彼のためにも、使命を全うする王国王女のプライドと言えるものだった。
「わかったわ、クレオート。あたしたちは先へ急ぐわ。できる限り、早く追いついてね」
「お任せください。お待たせしないよう、精一杯回復に努めます」
ワンコーとクックルーに目配せをしてから、進むべき階段の先を見上げたシルク。
彼女はこの時、ピリピリと張り詰めた邪気を感じ取り、そして確信した。もうまもなく、魔神が鎮座している王の間に辿り着くことができるだろう、と。
みんな、行くわよ! 彼女は掛け声一つ張り上げて、優秀なスーパーアニマルと一緒に、決戦の舞台を目指して階段を駆け上っていく。
(…………)
勇猛果敢なシルクたちの後ろ姿を、遠目から見つめる邪悪な影が一つ。
汗ばんだ手で握り拳を作り、悪意に染まった臭気を放つその影は、悦びに満ちた表情で破顔し、不気味なせせら笑いを心の中で響かせる。
(フッフッフ、ついに、この時が来た。この闇魔界が、もうすぐわたしのものとなる!)
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