第一章 パール城~ 運命という名の旅立ち(1)

 「この世に存在しうる、ありとあらゆる大地、海、そして、そこに住まう民を支配できる者。生まれし時より神通なる力を授かり、その神とも言える魔力を振りかざす者……。それを支配者(ルーラー)と呼び、この世の民は、いにしえよりそれを崇めてきた」


 この世が誕生した時代から、伝説として言い伝えられてきたその言葉。

 ”ルーラー”と呼ばれる支配者は、他の人間にはない神秘なる神通力を持ち合わせ、この世界を救うことも、また滅ぼすこともできるという。

 今、平穏で平和な日々を繰り返している現世界に、伝説の”ルーラー”が運命という名の下に動き出す。

 それは、ある王国で生まれた一人の少女にとって、儚くも悲しい一つの伝説の幕開けでもあった――。


* ◇ *


 ジュエリー大陸――。現世界の四十パーセントを占めるほどの強大な大陸。

 物語の舞台は、このジュエリー大陸に存在するパール王国。

 山紫水明。山の稜線が澄んだように広がり、蛇行していく川のせせらぎが穏やかで、豊富な資源に恵まれた風光明媚なこの国は、他国との情報交流や貿易などが盛んに行われていた。

 パール王国の行政機関を受け持つのが、王国西部に位置するパール城である。

 落ち着きのあるシックな色合い、モダンチックな煉瓦造りで築かれた城壁が、この王国の悠久からの繁栄を象徴しているかのようだ。

 パール城には偉大なる国王、そして、彼のことを陰ながら支えている美しき王妃がおり、国の民は皆、彼らの絶対的権力のもと絶大的な支持を寄せていた。

 この王国で暮らす人々は、豊かな生活に安堵し、学ぶべきところも就くべきところも不自由なく、誰もが幸せを満喫しているかに見える。それもすべて、パール城の城主である、パール国王の民を心から想う人徳なのであった。


 ある日の澄み切った好天の朝。ここはパール城内、二階のとある一室。

 ピンク色をふんだんに使った艶やかな装飾、あちこちに転がる高級感のあるぬいぐるみ。そのすべてが、ここがどこかのお嬢様のお部屋だと感じさせてくれる。

 この華やかな部屋に住まうは、十五歳の誕生日を迎えたばかりの一人の女の子であった。

「う~ん、気持ちのいい朝だなぁ」

 それは豪華絢爛なベッド、ふかふかのシーツの上で、大きく伸びながら目覚めたこの少女。パール国王の一人娘であるシルク=アルファンス・パールである。

 ここで、シルクのことを簡単に紹介しておこう。

 ふんわりとしたボブヘアで、パッチリとした愛らしい瞳を持つシルクは、いつも明るく元気いっぱいで、困っている人がいると放ってはおけない、思いやりのある人優しい性格の持ち主だ。

 王国のお姫様らしく、幼い頃から礼儀作法をしつけられており、人前ではいつもお淑やか……と言いたいところだが、彼女は女の子ながらも剣術を心得ており、少しばかり男勝りで、お転婆なところがあるのだ。しかもその実力も、王国兵士たちを唸らせるほどの腕前というから困ったものである。

「さて、いつまでも寝てはいられない。そろそろ起きなきゃ!」

 シルクは肩まで伸びた艶やかな髪を揺らしながら、煌びやかなベッドから飛び出した。

 宝石をあしらった姿見の前で、彼女はニコッと可憐な笑顔を浮かべる。ほつれた髪の毛を丁寧に整えて、すぐさま動きやすい衣装に着替え始めた。

 彼女が袖を通したその動きやすい衣装とは、伸縮性のある生地で縫合された稽古着のようだ。これから彼女は、毎日の日課である剣術の稽古に勤しむつもりだったのである。

「おっと、これを忘れちゃいけないよね」

 シルクは思いついたような素振りで、宝石箱に片付けていたシルバーのイヤリングを手に取る。そのリング状のイヤリングこそ、十五歳の誕生日に、父親である国王から贈られた王女の証しなのであった。

 王国の守護神として崇拝されている”神聖なる天神”。ご加護を受け継いでいるというその不思議なイヤリングは、このパール王国の守り神でもあり、彼女のお守りでもあるのだ。

 これから稽古だというのに、どうして、そんな大切なイヤリングを装飾するのだろうか?

 彼女はこのイヤリングを付けると、神経をより集中させることができて、剣術にも磨きがかかるのだという。いわば、気力を奮い立たせるパワーを秘めたアイテムと言えるだろう。

 彼女の小さな耳たぶに飾られた王女の証しは、窓から差し込む朝日の光を浴びて、銀色の輝きをキラキラと乱反射させていた。

 稽古のお供となる練習用の剣を腰に従えて、パール王国のお転婆なお姫様は、軽やかにスキップを踏みながら自室を後にした。



「あ、おはようございます、姫様!」

「いつもお美しゅうございます。お姫様」

 城内を歩いているシルクを称えるように、従者たちがすれ違いざまに笑顔で挨拶をしてくる。

 彼女も微笑み返しとばかりに、満面の笑顔でそれに応える。

 このパール城に従事する者はたくさんいる。王国兵士ばかりではなく、王家の身の回りの世話をする男性や、清掃係や食事係の女性など、その就労内容は多種多様だ。

 いつもと変わらない朝の一時。いつもとまったく同じ日常。それがとても嬉しくて、彼女の躍る気持ちは清々しいほどに晴れやかであった。

 シルクが丁度、稽古場となる庭先へ到着したところ、彼女の後ろから大きな呼び声が鳴り響く。

「姫、おはようですワン!」

「あら、ワンコーね。おはよう」

 シルクのそばに近寄ってきたのは、ニンマリと口角を上げて、目尻をだらしなく下げる、彼女に忠実な愛犬であるワンコーであった。

 真っ白い毛色に長い耳を垂らしたその愛犬。彼は犬でありながら、人間のシルクと会話することができるのはなぜか?

 これは、彼女が犬語を理解しているわけではなく、ワンコー自身が生まれた時から人間の言葉を話せる、いわゆるスーパーアニマルなのである。

 このスーパーアニマルという存在だが、起源や根拠については現在も不明であり、何万年に一匹しか誕生しないと言われる、まさに生ける伝説として語り継がれていた。

「姫、まさかまたお稽古かワン?」

「日課なんだから当然でしょ。清々しく晴れ渡る青空の下で、ビシバシと剣を振るう。これが、あたしにとっての元気のバロメータってところかしら」

 納得したように頭を頷かせてはみるも、思わず呆れたような声を漏らしてしまうワンコー。

「あんまり稽古ばかりしてると、さらに元気になって、男っぽくなるから気を付けてほしいワン」

「ん? 何それ、どういう意味なの?」

 プクッと頬を膨らませるご主人様に恐れをなして、まるで悪戯をした子供が白を切るように、ワンコーはぶんぶんと前足を左右にばたつかせていた。

「い、いや、オイラが思ってるわけじゃないワン! ただ、稽古のお相手の兵士さんが、ちょっぴり愚痴をこぼしていたかな……なんて」

 そう言い切った直後、しまった!といった顔で、口元へ前足を宛がうワンコーだったが、時すでに遅し。

 シルクは腕組みしながら、目を細めて意地悪っぽい笑みを浮かべていた。

「ふ~ん、そう。兵士たち、あたしのことをそんな風に思ってたのね。おもしろいわ。もっと愚痴を言いたくなるぐらい、しごいてあげるから」

 不敵な含み笑いを零しつつ、恐るべき稽古の修羅場と化すであろう庭先へ足を向けるシルク。ガクガクと震えている愛犬をその場に残して。

「ひ、姫。お待ちくださいワン。さっきのは冗談、だから、どうか穏便にお願いしますワ~ン!」

 ずんずん突進していくシルクのことを、半泣きしているワンコーは大慌てで追いかけていくのだった。



 偉大なるパール城のほとりに佇む、花と緑に囲まれた広い庭先。

 美しく咲き誇るカラフルな色の花たちが、お城の厳かな城壁に明るい色取りを添えてくれる。

 いつもは物静かなこの庭園に、痛々しい打撃音と一緒に、悲鳴にも似た甲高い声が轟いていた。

 その叫び声の主こそ、シルクの稽古の相手をしている王国兵士。もう語るまでもないが、ただいま、熱のこもった稽古の真っ最中なのであった。

 彼女と剣を交える兵士とは、精鋭なる王国兵士の中でも下位クラスに在位する者で、決して剣術に長けているいうわけではない。とはいっても、十五歳の女の子よりは、腕っぷしは明らかに秀でているはずだろう。

 ところが、彼女の方はというと、そんなハンデなど物ともせず、いとも容易く兵士のことをねじ伏せてしまう。

 身軽な身のこなし、器用なまでの剣捌き、そして何よりも、相手の隙を突く戦術センスが、幼少の頃から培ってきた彼女の経験の賜物と言えるだろう。

「お姫様! ま、参りました。どうかご勘弁を」

 兵士は芝生にへたり込んだまま、白旗を上げるように許しを請う。

 それでも、シルクはまだまだやる気満々で、早く立ち上がりなさいと、それはもうスパルタ教官のようだ。

 いつもよりも手厳しいのではないか? 兵士は怪訝そうに首を捻っていたが、やる気満々のお姫様の命令には逆らえない運命なのであった。

 二人の稽古のやり取りを、ばつが悪そうな顔をして見届けているワンコー。こうなってしまった理由を知る彼は、ちょっぴり胸が痛かった。


 シルクのイジメ……ではなく稽古は、その後、三十分ほど経過したところで終了した。

 すっかり息が上がってしまった兵士は、剣も装備品も何もかも投げ捨てて、芝生の上に寝そべりぐったりとしていた。

 一方の彼女は、それこそ全身が汗ばんではいたが、疲れた表情など一切見せてはいない。まだ物足りないのか、爽やかな微笑すら浮かべていた。

 寝転がっている彼の隣に、ちょこんと腰を下ろしたシルク。

「弱音を吐いてたわりには、よくがんばったわね。立派なものだわ」

「ありがとうございます……。いつもお姫様に、鍛えられていた成果でしょうか」

 澄み渡る青空を見上げて、クスクスと笑い合うお姫様と兵士の二人。

 この兵士だが、まだ年齢は二十台と若く、兵役に就いたばかりであった。シルクの稽古の相手として、もうかれこれ一年が経過し、こちらの方はベテランと言えなくもない。

 パール王国を守りたい、城下町に住まう両親のために錦を上げたいと、自らの意思で兵士の資格を手に入れたという彼。こんな平穏平和な国で、彼のように血気盛んな若者は思いのほか少なかった。

「それにしても、国王や王妃、そして姫君を守るために兵士になったというのに、いやはや、これでは、ボクは反対にお姫様に助けられてしまいますね。お恥ずかしい限りです」

「あら、そんなことはないわ。あなたの腕前はぐんぐん上達しているし、それにガッツもあるから、いずれは立派な兵士長も夢じゃないわよ」

 まだまだ若輩者、兵士長なんて夢の先の夢ですと、若い兵士は恐縮しつつ謙遜した。

 そう言ってはみたものの、上空を見上げる彼の本音は、パール王国の兵士長という尊厳なる姿を、いつか城下町で暮らす両親に自慢したかったのかも知れない。

 そうしているうちに、時刻は午前八時を告げる。それはパール城において、王国兵士の朝礼が執り行われる時刻だ。

「それでは、お姫様。ボクはこれにて失礼いたします。また、稽古の際はお声掛けください」

「ええ。元気に行ってらっしゃい」

 シルクとワンコーは手を振って、夢ある未来を望む若者の後ろ姿を見えなくなるまで見送っていた。

「はぁ~、それにしてもいい天気だね」

「本当だワン。とっても心地よいワン」

 いつもの日課も滞りなく終わって、降り注ぐ太陽の日差しを目一杯浴びるシルクたち。

 今の季節は、色鮮やかな草花が咲き誇る春。吹き抜けてくる微風が彼女の頬を緩やかに掠めて、稽古終わりの火照った体をゆっくりと冷ましていくようだ。

 庭園の緑茂る芝生の上で、これでもかというぐらい大きく伸びをする彼女は、今日という新しい一日のスタートを心から喜んでいた。

 その刹那、穏やかな雰囲気を壊さんばかりの悲鳴が彼女たちの耳をつんざく。

「キャ~、痛いぃ!」

 いったい何事!? シルクとワンコーは驚愕の表情を見合わせる。

「何、今の? 女性の叫び声だったみたいだけど」

 ワンコーは自慢の聴力を生かして、叫び声の発せられた方向を瞬時に特定した。

「姫! こっちの方から声がしたワン」

「よし、ワンコー、行ってみよう」

 一目散に駆け出していくワンコーを、稽古の疲れも見せずに追いかけていくシルク。

 彼女たちは芝生を蹴り上げながら、お城の煉瓦造りの外壁沿いを駆け抜けて、少しばかり湿っぽい林藪へと辿り着いた。

 そんなシルクたちの目に飛び込んだのは、足から少量の血を流して、草むらのそばで倒れ込んでいる女性の姿であった。

「ど、どうかしたの!?」

「あ、お姫様」

 その女性は苦悶の表情を浮かべて、鮮血の滴る足を指し示した。

「じ、実は、その草むらで。どうやら、蛇に足を噛まれてしまったようで……」

「へ、蛇ですって?」

 シルクは驚きのあまり目を見開き、蛇がいるやも知れぬ草むらの周囲に目を配る。しかし、ガサガサといった雑音や、生物の気配を感じ取ることはできない。

 彼女が辺りを警戒している最中だった。血の気が引いている女性のそばで、なぜか、ワンコーの顔色からも血の気が引いていた。

「姫、そういえばその草むらには、”黒まむし”っていう毒蛇がいるって話だワン」

「ど、毒蛇――」

 ワンコーの切迫させる一言で、さらに血の気が薄らいでしまう女性。

「ああ、わたくし、もうおしまいです……。お姫様、これまでお世話になり、ま、した……」

 その女性はそんな遺言を残して、まるで天に召されるかのように地に伏せてしまう。

 この緊迫した状況を目の当りにして、シルクは青ざめた表情でただ焦りまくる。

「どうしたらいいの!? 解毒剤なんかすぐ手に入るわけがないし」

 ここパール城には救急看護施設が備わっているが、それはごく一般的な外傷を対象としているもので、このように毒蛇に対処した血清など、当然ながら常備してはいない。

 もし血清があるとすれば、城下町であるプラチナの街の病院となるだろうが、そこへ辿り着くには片道でも一時間は掛かってしまうため、シルクにとってはもうなす術がなかったのである。

 そうしている間にも、傷口から注入された毒が、血管を経由して女性の全身を蝕んでいく。

「あ~、もう! どうにかできないの?」

 シルクは二進も三進もいかず、頭を両手で抱えて右往左往するだけだ。

 それはいきなりのことだ。まごまごしている彼女を見るに見兼ねて、ワンコーが偉ぶった顔で毛で覆われた胸を叩く。

「ここは、オイラに任せるワン!」

「ワンコー、あなた何をする気? まさか、さらに噛みついて毒を吸い取るんじゃないでしょうね?」

「そんなことするわけないワン! そんなことしたら、オイラが毒で死んでしまうワン」

 ワンコーは前足を合わせて祈るような姿勢を取った。

 シルクは口を噤んで、彼の不可解な行動をじっと見守るしかない。

 伏せてしまった女性は毒が回っているのか、苦しそうな息遣いを繰り返している。

「補助魔法、解毒!」

 ワンコーがそう唱えると、突き出した指先から真っ白な光が放たれた。

 その輝く光はゆっくりと、横たわる女性の傷口へと降り注いでいく。すると、一瞬のうちに足の流血が止まり、さらに鈍色に染まった傷口までも、何事もなかったかのように跡形もなく消えていってしまった。

 突然のことに唖然とするシルクだったが、彼女以上に驚愕したのは、死の苦痛から開放された女性の方であろう。

「う、うそ……。痛みどころか、傷までなくなってるわ」

 ワンコーはニッコリと微笑んで、一つの人命を救った功績に胸を張る。

「もう心配いらないワン。オイラの魔法で傷口を治してやったワン」

 この摩訶不思議な出来事に、命を救われた女性も首を捻るばかりだ。しかし、実際に傷が癒えたのもまた事実、彼女は複雑な胸中ながらも、偉ぶるワンコーに深々と頭を下げるのであった。

 素早く起き上がった女性は、シルクたちに一礼してからいそいそと立ち去っていく。その後ろ姿は、どこか逃げ去っているように見えなくもない。

 降ってわいた災難が去っても、シルクとワンコーは根を張ったようにその場に立ち尽くしている。

「ワンコー。あなた、いつからそんな素敵な魔法を習得したの?」

「夢の中でお告げがあったんだワン」

 おしゃべりのみならず、魔法さえも司るスーパーアニマルのワンコー。彼の真っ白い全身が、まさに神様のごとく光沢を解き放っている。

 シルクは悔しそうに唇を噛んでいた。先ほどの女性に対して何もできなかった理由もあるが、それよりも、愛犬の特殊とも言える才能に、彼女はとてつもない嫉妬心を抱いていたのだ。

「ねぇ、ワンコー。あたしにも教えてよ。さっきのゲドクっていうの」

 すがるような瞳で羨ましがる姫君に、ワンコーは眉を顰めて困惑めいた表情を向ける。

「姫。前から言ってるけど、オイラの魔法は、生まれた時から身に付いている能力だから、いくら姫でも、人に教えることなんかできないワン」

 ワンコーが説明している通り、その摩訶不思議な魔法は、スーパーアニマル特有の生来から身に付いているものだ。彼は物心がついた時から、人間の傷を癒したり、人間の不調を回復させたりする、補助魔法を習得していたという。

 先ほど唱えた解毒という魔法も、深い眠りの世界にいる中で会得したらしく、彼はその夢のイメージのままにそれをお披露目したというわけだ。

「生まれ持っての才能かぁ。いつしか、あたしたち人間は、平和という世界を手に入れたと同時に、魔法という素敵なものを失ってしまったのよね」

 現世界は平穏平和そのものだ。

 人間同士が血を流す戦争もなく、邪悪なる悪魔や魔物たちの襲来も過去のこと。

 それこそ今から数千年も前では、人々は魔術や魔法を駆使して、世界を滅ぼさんとする悪魔たちと壮絶な死闘を繰り広げたという。

 人類はルーラーと呼ばれる支配者とともに、神の力を借りて、禍々しき邪悪なる存在を闇の世界に封印した。平和を取り戻した人々は、醜い争いを後世に残さぬよう、特殊な能力を捨ててしまったという伝説が、今もなお語り継がれているのだ。

「人間は魔法を忘れちゃったけど、みんなが楽しく暮らせる平和が一番だと思うワン」

「そうだよね。魔法なんてあっても、あたしはきっと、その使い道すら知らないんだから」

 シルクとワンコーは微笑みを向け合い、穏やかな朝日に包まれる城内へと戻っていく。

 この時の二人はまだ知る由もない。魔法という能力、そして、闇に蔓延る邪悪なる影に脅かされる宿命であることを。

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