復讐屋

和草ロウ

前編


 太陽の光が差し込む窓際の席。

 私は頬杖をついて外を眺めていた。

 ラムネ瓶のように青く透き通った空には入道雲がでかでかと存在を主張している。

 机に反射する太陽の光が眩しく少し不快だったが、少し開けた窓から時々入ってくる風はとても心地良い。

 その心地良さにうとうとしてしまった私を、隣の席に座っている男子生徒が指でつついてきた。

「……何?」

 急につつかれて驚いたため反応が遅れてしまったが、その男子生徒の方を向いて小声で言った。

「寝てんじゃねーよー。」

 明らかにからかい口調の彼に、私は睨みを効かせて

「だって、この授業つまらないんだもん。」

 と、また頬杖をついて言った。

「そりゃ、ここにいる皆が授業受けるのめんどくさくて嫌だろ。」

「そんなことないよ、真剣に板書してる子もいるよ。」

「あー……俺は多分そういう真面目な人とは話もできないだろうなー。」

「……私が不真面目とでも言いたいの……?」

「当たりー。」

 にやりと笑った彼に、私はまた睨みをきかせた。

「おい。そこ私語やめろよー。」

 先生に注意されて私達は肩をすくめた。

 私達が静かになり、先生が雑談を交えながらチョークで黒板に書く音や、扇風機の音だけが聞こえるようになった。

 いつも通りの日常。

 いつも通りの授業。

 いつも通りの友達。

 そんな何の刺激もない平和な日々を私は送っていた。

【 コンコンコン……。】

 教室のドアをノックした音の後にドアが少し開き、私担任の先生が顔をのぞかせた。

 担任の先生は少し焦った様子で授業をしていた教科担任に小声で何かを伝えていた。

 何かを伝えられた教科担任は

「悪い皆、今日の授業はここまでだ。残りの時間各自自習にする。」

 と私達に言った。

 それを聞いてざわつく教室内。

「おーい!静かにしろー!各自やること見つけて何かやれー。」

 板書をしていた先生と変わり、担任の先生が自習の監督をすることになった。

 それでも、教室内はなかなか静かにならず、ざわついていた。

「なぁ、叶華きょうか、何事だろうなー?」

 さっき、つついてきた隣の男子生徒が再び話しかけてきた。

愁弥しゅうや……何楽しそうな顔してんの?絶対何かあったってこれ。何があったんだろう……。」

「誰か事故ったとか?」

「ちょ。やめてよそういうの……!」

「相変わらず、怖がりなのな。」

「うるさいなっ。」

 愁弥は、小中高と一緒のいわゆる幼馴染というやつで、腐れ縁だ。

 愁弥は思ったことをそのまま行動や言葉に表す考えなしな性格で、私はそのおかげでメンタルが強くなった気がする。

 ただ、気がするだけなので本当に強いのかはわからない。

「でもさ、本当に誰かが事故に遭ってて生死の境をさまよう大怪我をしてしまったーとかあるかもよ?」

「なんで、そんなに具体的なの?あるわけないじゃん。」

「えー。」

「アホ。」

「アホにアホって言われた……。」

「……しばくよ。」

 私達は、小声でこんな会話をしながらこの授業を終えた。

 仲が良すぎる私達を見て付き合っていると勘違いしている人も多いみたいだが、私は、愁弥と付き合うことは絶対無いと思っている。

 それに、愁弥は結構モテるらしいのでクリスマスやバレンタインではプレゼントを貰っているのをよく見る。

 少しクセのある茶髪でネコ目なイケメンというのだろうか、容姿は整っていると思う。

 でも、愁弥とは、友達だからこそこんなに仲が良いのだ。

 そもそも愁弥は私に対してそんな気があると思えないので、私も特別意識したことは無い。

 周りの女子も私と愁弥の関係を理解しているみたいなので、嫉妬からによる嫌がらせ等のいじめの対象には1度もなったことがない。

 むしろ、相談をされるくらいだ。

 私はいつも相談を受ける側なため、私には恋の悩みというものはないのかと聞いてくる子もいる。

 自分で言うのも何だけれど、私も年頃の女の子だ。

 気になる人がいないことも無い。




「なぁ、叶華。お前、好きな奴いるんだって?」

 それは、帰り道で愁弥に突然言われたことだった。

「え……な、何急に……。」

 突然過ぎて挙動不審になってしまった私を見て、愁弥は私を見つめこう言った。

「誰。」

「何でそんなこと……。」

「良いから。」

「だ、誰って……好きなわけじゃないし……。」

「じゃあ、気にはなってるんだな。」

 少しの間沈黙が続いた。

 怖いくらいに突っ込んでくる愁弥の圧に負けて私は、聞こえるかわからないくらいの声で一言。

「うん……。」

 それを聞いて愁弥は、切ないような顔を一瞬した気がしたがすぐにいつも通りの様子に戻り、からかったような口調で言った。

「ふぅーん。叶華、好きな人ができたのかー。」

「だから、好きなわけじゃないってば……。き、気になる人……だよ。」

「はいはい。で?誰なの?」

「……あ、新しく出来たカフェで働いてる店員さん……。」

 私はなんだか恥ずかしくなって俯いた。

「かぁー!年上かよ!色づいてんなー。」

 愁弥は、空を仰いで大声で言った。

「う、うるさいよ……。そもそも、何で私に気になる人出来たとかわかるのよ。」

「んー……お前の友達が話してるのたまたま聞いちまった。」

「え!何て言ってた訳。」

「んー?なんか『叶華、この前行ったカフェの店員さんに一目惚れしたらしいよー』って結構大きな声で話してたから聞こえちまった。」

「んもー……声大きいんだよなぁー……。」

「俺もまたそのカフェ連れて行けよ。」

「え、なんでよ。」

「叶華が気になる人どんな奴なのかなーっていうのと、新しいカフェに前から行ってみたかったし。」

「前の方の理由は触れないとして……良いよ、行こっか。」

「よっしゃー。じゃあ、今週行こうぜー。」

「今週?はいはい。」

「『愛しの彼』に会えるな。」

 愁弥はにやりと笑って言った。

「だから、まだそんなんじゃないってば!」

「ふーん。『まだ』……ねぇ……。んじゃ、また明日。」

 まだ何か言いたそうだったが、愁弥は私に背を向けて私が進むのとは違う道を歩いて行った。

「また明日ー。」

 今までは、こんなに私について突っ込んでくること無かったのになと不思議に思うところがあったが、気のせいだと私は歩き出しイヤフォンを耳につけた。




 次の日の朝、学年全体がいつもと違う雰囲気なのがわかった。

「え、何?何かあったの??」

 私は教室にいた友達に聞いた。

「叶華おはよ。うん。ほら、昨日自習になった授業あったでしょ?それについての噂が流れてきたみたい。」

「噂?皆なんて言ってるの?」

 私は、深く考えずに興味本位で聞いた。

 その噂の内容はこうだ。

 周囲から問題児だと思われている3人組が生死の境をさまよう大怪我をした。

 今も意識が戻らず重体だと言う。

 昨日愁弥が冗談で言っていたことに酷似していたので気味が悪くなった。

 私は、前の方にいた愁弥に視線を送った。

 愁弥はいつも通り、他の男子とじゃれあっていた。

 ほっとしたと同時に、もやもやした気持ちがわいた。

 愁弥はこの噂になにか関係があるのだろうか……。

「実はもうひとつ流れてきた噂があってね?」

 友達は、声を潜めて私の耳元で言った。

「叶華、『復讐屋』って知ってる…?」

「復讐屋……?」

 初めて聞いたものだった。

「なにそれ?」

「あー、やっぱり知らないかぁ。今、新しい都市伝説だとか言って流れてるものなんだよ。」

「都市伝説……またどこからそんなの流れてきたの?」

「隣のクラスの子からだよ。私が聞いた話によると、その復讐屋に自分が復讐したい相手を言うと自分の代わりに復讐してくれるんだって。」

「えぇ……なにそれ。」

「ほら、今回の件。3人組が大怪我ってやつ。その復讐屋がやったんじゃないかって言われてるの。」

「……事故にあったんじゃないの?」

「それがさ、その3人組ってまぁ、結構な問題児だったじゃない?その3人組が誰かの怨みを買うのもおかしくないかなって思うし、誰かが復讐屋にあの3人を苦しめるよう頼んだって噂も流れてきたの。」

「へ、へぇ……。」

 それはあまりにも単純な理由で、あの3人に対する偏見と言っても良いものだ。

 私はあの3人と仲が良いわけでもなく、むしろ関わりがないため、周りが言っている通り問題児だというイメージしか持っていないが……その噂は決定打に欠けるものだった。

「見た目八割」と言うという言葉があるが、それにしたって、「復讐屋」という都市伝説に繋げたがりすぎてはないだろうか。

「叶華は誰かの恨み買うことないだろうけど、万が一ってこともあるから気をつけなよー?」

 友達は私を恐がらせようとしたのか、からかったように言った。

「万が一って何よ。そもそも私はそんな噂やすやすと信じないよ。」

「叶華らしいねー。」

 しかし、昨日の愁弥の発言のこともあり胸がざわつくものがある。

 もしも愁弥がその例の噂と関係があるとしたら?

 なんて、現実味のないことを考えている自分がいる。

 愁弥のことは小さい頃から知っているのだ、そんな物騒なことに関わりを持つとは思えない。

 それに、ここ最近いつもと違った様子を見せることはなかった。

 だめだ。

 噂をやすやすと信じないと言ったものの、気になってしまう。

 直接愁弥に聞いてみよう。


 放課後、私は愁弥に問いかけてみた。

「愁弥。今流行ってる噂知ってる?」

「噂?なんだ?」

 愁弥はきょとんとした顔をした。

 この様子だと知らないようだ。

 私は内心ほっとしながら続けた。

「今、新しい都市伝説だって噂になってる『復──」

「おーい!愁弥ー!」

 他クラスの男子生徒が愁弥に呼びかけた。

「あ、悪い叶華、今日はあいつらと約束があるから!」

「え、あ、うん。」

 愁弥は立ち上がりリュックを背負い

「明日、例のカフェ行く約束してただろ?その時に覚えてたら聞くわー。また明日な!」

 と手をひらひらさせて呼び掛けた男子生徒の方へと軽快に歩いていった。

 気になるから早く確認したかったんだけどな。

 仕方ない……愁弥の言う通り明日ゆっくり話そう。

「復讐屋」……か。

 また変な噂が流行してるものだ。

 そもそもその噂はどこから流れてきたものなのだろうか?

 そう思いながら私も家に帰ろうとしたところだった。

「叶華。」

 私の名前を呼ぶ可愛らしい声が後ろから聞こえた。

 振り返ると、朝、私に復讐屋について教えてくれた友達だった。

「ん?どうしたの若菜わかな。」

「うん……。」

 少し暗い表情をした若菜は何か言いづらそうにしていた。

「何かあったの?」

「えっとね、朝話した噂のことなんだけど……。」

「あぁ、『復讐屋』?」

「う、うん。それ、さ……」

「うん、何?はっきり言いなよー。」

「……っ。……なんじゃないかって……。」

 ……え?

 言葉が出なかった。

 なぜ?

 なぜ愁弥が?

 何を根拠に?

「あ。ごめん!急にこんな話……。」

「どうしてそう思うの?」

「私聞いたの。」

 そう言って若菜は詳細を話し出した。

 問題児3人組が重体になってしまった原因。

 それは、愁弥の恨みを買ったからだと言う。

 どうやら問題児3人組は愁弥に嫌がらせを行っていたらしい。

 愁弥はモテるからそれに嫉妬した3人組が子供じみたいたずらをしていたのだとか。

 なんとも呆れた動機だ。

 そして決め手になったのは

「叶華が狙われたからなんだよ。」

「え?私?」

「うん。叶華を狙って愁弥くんの困る顔が見たかったんだよ。」

「なんで私を狙うことで愁弥が困るの?」

「叶華、それ本気で言ってるの……?気づいてないの?」

 友達は目を丸くして驚いた表情をした。

「気づいてないって何に……。」

「う、ううん!なんでもないよ!2人は幼馴染で親友だからお互いのこと大切でしょ?だから、自分のせいで叶華が傷ついたって知ったら愁弥くんが責任感じるでしょ?」

「そうなのかなぁ……。」

「例えば叶華のせいで愁弥くんが傷ついたらどう?」

「責任感じる……。」

「そうでしょ?だから、愁弥くんは叶華を傷つけさせないために復讐屋にお願いして懲らしめたってこと。」

「なんだか、腑に落ちないなー。」

「それぐらい愁弥くんは叶華が大切なんだよ。」

 若菜はふふふと笑って私を肘で突いた。

「私は愁弥がそんなことするようには思えないけど……。あの3人まだ意識戻らないんでしょ?私が狙われることでそこまで懲らしめる必要あるのかな?」

「……『愛』だね。」

「もー……なにそれ。この話絶対ありえないよ。あーあ、若菜がすごく深刻な顔するものだから不安になっちゃったよ。」

 私は一気に緊張が解けて脱力した。

「私も聞いた話だし、愁弥くんがそんな酷いことするような人には思えないから叶華が何か知らないかなって言ってみたの。でもやっぱりこの話嘘だよねー。」

「この話、誰から聞いたの?」

「他のクラスの子だよー。その子も聞いた話だからって言ってた。」

「そうなんだ。噂って広まるの早いから恐いよね。」

「そうだねー。」

 どうやら噂の独り歩きのようだった。

 復讐屋と愁弥の関係についてもやもやしていたため、私も信じてしまうところだった。

 そうだ、愁弥は人を傷つけるような人ではない。

 お調子者だが、いざと言う時には頼りになるし周囲に愛されている人だ。

 少しでも嫌なことを考えてしまったことに私は肩を落とした。

「ところで叶華、明日は愁弥くんと例のカフェに行くんだっけ?」

「あ、うん……。」

「叶華の気になる彼、いるといいね。ふふふ。」

 若菜はまたからかったように私の表情を伺っている。

「どうしてこうも私の周りにはからかってくる人が多いのかな……。」

「ふふふ、叶華の反応面白いんだもーん。」

「もー!若菜!私もう帰るからね!」

「あ、待ってよ叶華ー。」

「若菜、ありがとう。」

「えー?なになにー?」

「なんでもないよ。」

「えっ気になるじゃん!」

 明日愁弥に話そうと思っていた復讐屋の話はもうしなくてもいいかなと私は胸を撫でおろした。




 次の日、私は愁弥と約束した例のカフェに向かった。

 そのカフェはとても落ち着いた雰囲気で、メニューも豊富にあり、珈琲の良い香りが漂うとても好印象な場所だ。

 新しく出来たばかりで今日は休日ということもあり、私達が行った頃にはもう人がたくさん入っていた。

 私達は席が空くまで常備されたオシャレな椅子に座り待つことにした。

 待つ間、愁弥とは他愛のない話をしていた。

 この様子だと、私が昨日話そうとしてた噂の話忘れているな。

 私ももう特に話そうとも思わないし良いか。

「お待たせしてしまって申し訳ありません。」

 突然頭の上から聞こえてきたのは、爽やかで若い男性の声。

「あ……。」

「お客様はこの前にもご来店して頂いてましたよね。また来て頂けて嬉しいです。」

「い、いえ……とても良いお店なので……友達にも紹介しようと思って……。」

「そうだったんですね。どうぞゆっくりしていって下さいね。良かったらメニューを見てお待ちください。」

 そう言ってその男性はメニューを差し出し店内に戻って行った。

 どうしよう全然上手く話せなかった。

 手が、声が震えてしまう。

「叶華、今の人がそうなんだろ。」

「え、な、なんでわかったの……。」

「お前、昔から凄いわかりやすいからな。」

「嘘。そんなはずは……。」

「大丈夫か。生まれたての子犬みたいだぞ。」

「だ、大丈夫だよ。」

「ほらな。いつもの叶華なら睨みきかせながら『誰が子犬だ』って言うもんな。」

「……うるさいな……。」

 その後、私達は店内に通され、美味しいケーキとカフェラテを堪能した。




「あーーーかなり美味かったなー!」

 カフェに行った帰り道。

 居心地が良すぎてついつい長居してしまった。

「そうだね。ケーキはふわっふわだったし、カフェラテは程よいミルクと甘さで美味しかったね。また行けたらいいな。」

「今回は無理やり連れてきてもらった感じだけど、今度は誘ってくれよ。また美味いもの食べたいしなー!」

「わかった。また誘うね。」

「今日の叶華、見てて面白かったぞー。完全に恋する乙女の顔してた。」

「なっ!何勝手に見てるのよ!」

 私はかーっと恥ずかしくなり顔を手で覆った。

「叶華は可愛いし、もっとアピールしたらあの男落ちるかもしれねーぞ?」

「か、かわっ……。アピールなんて無理!どうやってするべきなのかも分からないのに!」

「それなら俺が教えてやろうか。」

「え?」

 愁弥は急に立ち止まり、私の腕を掴み引っ張った。

 私は一瞬何が起こったのが分からなかったが、愁弥に引き寄せられたようだ。

「愁弥……?」

「叶華、俺……ずっと隠してたことがあるんだ。」

 愁弥の心臓の音がする。

 トクントクンと脈打っている。

「俺、ずっと前から叶華のこと──」

「ま、待って!急にそんな!」

 私は思わず愁弥を押し離してしまった。

 その続きを聞くのがなんだか恐かった。

「……はは。はははははは!」

「?!」

「くくく、はははははは!叶華って本当に面白いわ!」

「な、何?!」

「今のときめいたか?」

「……は?」

 私はきょとんとした顔をしてしまった。

「言っただろ?『俺が教えてやる』って。相手に自分を意識してもらう方法!」

「あ、あー……。」

「まさかあんなに取り乱すとは思ってなかったわ!あははははは!くく、はははは!」

「……もう!!!!愁弥のアホー!馬鹿ー!」

「くく、わ、悪かったって……はは、くくく……。」

「愁弥なんて復讐屋に懲らしめられてしまえー!」

「……。」

 突然愁弥の笑いが止まった。

「え?今度はなに……?」

「叶華、今なんて?」

「え?だから『復讐屋に懲らしめられてしまえ』って……。」

「その『復讐屋』ってどこで知ったんだ?」

「わ、若菜が最近新しい都市伝説みたいなもので流行ってるって……。」

 愁弥は急にさっきとは違う雰囲気になった。

 なんだか……恐い。

「あーなるほどね。それで他には?」

「ほ、他にって……あの問題児3人組を重体にさせたのは復讐屋の仕業だとか……。」

「とか?」

「その復讐屋に3人を苦しめるように頼んだのが……しゅ、愁弥だって……。」

「ふーん、俺……ねぇ……。」

 愁弥は腕を組んで空を仰いだ。

「私は愁弥がそんなことするはずがないって思うから…。若菜にそう言われた時もありえないって……。」

「……?」

「え?」

 愁弥は私の目を一点に見つめて言った。

「もし、もしも俺が……って言ったら……叶華はどうする?」

 さっきの楽しい雰囲気とは一転して、張り詰めた空気が私の周りを覆い、雷に打たれたかのように胸が締め付けられた。

 青天の霹靂とはこのことを言うのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

復讐屋 和草ロウ @ameruri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ