修行と授賞式
自分から始めたこととはいえ最初はキツかった。
午前中筋力作りとして、腕立て1000、腹筋1000、背筋1000、素振りを1500、ランニング20kmを毎日した。
力尽きて倒れるまで帝国騎士団長から剣術指南、そして、騎士団と模擬戦。
……帝国は隣国で友好国だ。ただ、この村は特に帝国と仲がいい。商売や武術指南、魔術指南など色々なことをしてくれる。戦士職の村人達は帝国軍と模擬戦をしたりするのだ。帝国は約束を反故にしたりはしないし、帝国の危機があったら王国が援助をすることもある。
午後は、魔力最大量増量、攻撃魔法など色々なことをした。もちろん宮廷魔道士団付きだが、魔法に関しては、前世の理系知識が生きているおかげか、原子爆弾並の爆発や、重力操作、カーナビ…索敵まできるようになった。
もう一度言おう。彼はチート転生者では無い。ここ重要。
帝国騎士との100人掛け(相変わらずボコボコ)が終わり、全身筋肉痛の体に鞭打って魔術の特訓だ。
宮廷魔道士団長は呆れ返っていた。
「おかしいからね?君さ、本当に素人?人間?魔人じゃないの?」
とまで言われたのだ。
「いえいえ、原理さえ分かれば、魔力があれば誰でもできますよ。」
と言い返すと、思い当たる節があるのか
「言われてみれば確かに……」
と口ごもる魔道士団長。
今日は錬金術だ……とは言っても炭素を結合してカーボンナノチューブを作るだけだが……
いつの間にか、やろうと思えば国1つ破壊出来るぐらいの魔術が使えるようになってしまっていたが、そんなことは知らないアルファは鍛錬を重ねた。
そして、修行開始から半年、帝国騎士千人掛けをしても全員屠ることが出来るようになり、トレーニングの量も増え(腕腹背各500ずつアップ)、50km全力ダッシュまでするようになっていた。剣の技術では鋼鉄を切れるほどになっていた。
「ダイヤまであと少しだな。」
アルファは一体何と戦う気なのだろうか。
ダイヤモンドは物理的防御力最強なのだが、これを超えれるのはもはや
閑話休題
そして、帝国騎士団長と宮廷魔道士団長から免許皆伝の儀式が行われるその日、
「アルファよ。この半年間努力を怠らず、日々研鑽し、遂には騎士達を1000人軽々と倒しおった。よって免許皆伝を授ける。その証拠として、帝国に古くから伝わる聖剣、クラウ・ソラスを皇帝陛下から授与される。」
そう騎士団長が言うと、アルファは恭しく前に歩み寄り、皇帝の前で片膝をつき、両手を掲げた。
「アルファよ、直接面識はなかったが、余は其方の頑張りを騎士団長から聞いておった。これからも努力を惜しむな。」
「はっ!」
そして、クラウ・ソラスが渡され、宮廷内は拍手に沸き立った。
まだ終わりではない。
「アルファ、あなたは宮廷魔道士団長である私を差し置いて、もう既に違う次元に立っていた。免許皆伝も何も無いけれど、私からも免許皆伝を授けます。と同時に、皇太子殿下から盾、アイギスが贈られます。」
因みに、この国は女帝制である。つまり、今の皇太子(2人居る)は、女性なのだ。因みに、宮廷魔道士団長も女性だ。
「アルファ様……皇帝陛下が仰ったことを繰り返してしまいますのでここでは割愛させていただきます。これからも、頑張ってくださいませ。」
「はい。」
疑問。なぜ盾?杖を持つ人がいなかったからまさかと思ったが、本当に魔法で杖を使わないとは……
そして、今度は宰相がやって来て、こう言った。
「ここで、特別賞を与えるのだが……その前に確かめたいことがある。アルファよ、ついてまいれ。」
それを聞いたアルファはキョトンとしたが、直ぐに表情を戻して、着いて行った。
しばらく歩いていったそこには、紅蓮に燃える鳥――否、炎をそのものと言っても良いほど煌びやかな鳥がいた。
「焼き鳥ですか?」
アルファはついネタに走ってしまった。
「何故これを見て第一声がそれなのだ!?」
宰相、ナイスツッコミ。
「もしかして……これって不死鳥ですか?」
それを聞いた宰相は満足げに頷いた。
「この神鳥はフェニックスだ。それで確認したいことは……貴公がこの神鳥を手懐けられるかどうかだ。」
「……分かりました。」
そして、意思疎通を試みると、
『汝、名は?』
おぉー、と歓喜した。会話ができたことに喜びを覚えたのだ……焼き鳥と。焼かれる鶏の気持ちなんて考えてもいなかったなぁと心の奥底で思った……訳では無いのだが、前世ではかなり好きだった食べ物だ。特に砂ずりが。だがそんなことを考えている場合では無い。なので名乗った。
『アルファです。』
『我は……『フェニックスですよね?』……そうだ。』
残念な声を上げた。当然である。焼きt……フェニックスは自分で名乗りたかったのだ。
『何用か?』
『お友達になってくれますか?』
『唐突だな!?』
落ち着いているように見えるが、作ってるんだなと思うアルファ。
『手懐けろとか言われてもどうすればいいかわからないからとりあえず、お友達でどうかな?と思いまして。』
『我と友……か……面白いことを言う奴だな。いいだろう。なってやろう。』
案外あっさり行った。さすがは焼き鳥。
『ありがとうございます。』
『我と汝は友なのだ。敬語でなくても良い。』
『それじゃあ遠慮なく。』
『このままだと話しづらいだろ?ちょっと待っとれ。』
そう言うと、フェニックスから人の姿に変わっていく。
「成功しました。」
「本当か!!」
宰相はすごく驚いている。
「ふぅ、この姿になるのは何年ぶりなのやら……」
アルファは固まった。
そこに立っていたのは赤や橙や黄でまるで炎そのものを表しているかのような長い髪、黄金の瞳を持つ美少女だったのだ。
「あっフェニックス。」
「うむ、人間の言語はこれで合っておるか?アルファよ。」
「合ってるよ。」
「それで……これからどうするのだ?」
フェニックスは小首を傾げた。
すると、
「……コホン、今から陛下の元へ行くことになる。さあフェニックス殿、アルファ。」
今の今まで固まっていた宰相は気を取り直してそう言った。
「そうですね。行こっか?フェニックス。」
「うむ。」
宰相の言葉に機嫌が悪くなることもないようだ。
何故か聞くと、
「そんな事にいちいち気にかけていたら世界が滅ぶぞ?人間世界で偉い奴が偉そうにするのは当然の摂理だろう。もっとも、裏切りは許さんがな。」
らしい。
そして、皇帝の元に行くと、
「おぉ!アルファよ。本当に手懐けてくるとは……特別賞として帝国は王国とともに彼の村を守護することを宣言する。並びに、フェニックス殿をアルファに贈呈する。」
アルファは跪いて、
「ありがたき幸せ!!」
と言った。
わぁっと沸き起こる歓声。
こうして授賞式が終わり、宴となった。
宴では、色々な人に話しかけられた。
案外、帝国の貴族達は上級であろうが下級であろうが力ある者には普通に接するものなのかと感心した。力ある者なのかは定かではないが。
ただ、困ったのは縁談であるが、丁重に断った。流石に、「あんたの娘を連れて歩く俺の身にもなってみろ。」とは言える訳もなく。「すみません……修行中の身でしてそういったことに興味はないので……」というようにやんわり断わった。
色々教わりもした。父親の事も。父の姓はリーデルシュタインだそうだ。それだけでなく帝国の軍人だそうで3年前に公国との戦争で命を落としていたらしい。
実は貴族だけではない。皇太子からも話しかけられた。
帝国は基本的に黒髪が多い。皇帝も黒髪だ。
皇太子からは、
「妹が貴方のことをすごく見てたから、声をかけてあげてね。あっちにいるから……」
皇太子が指を指した方を見ると、なるほど確かに皇太子と同じくらい美人な女の子が居る。
「分かりました。では行ってきます。」
そして、その第二皇女のところへ歩いていく。
因みに、フェニックスは今、上空を飛んでいる。
その前に、フェニックスから不死鳥の加護をもらっているのだが、それはまた今度。
第二皇女の元へ行くと、
「こんばんは。」
と言った。すると、
「こ……こんばんは……」
「今よろしいですか?」
「は……はぃ……」
恥ずかしそうにそう言った。
「えっと……お名前を教えていただけますか?」
「はい、エルミアと申します。アルファ様で間違いありませんよね?」
エルミアって言うのかぁ。因みに、姉はエルミネだ。
「ええ、そうです。」
アルファは出来るだけ丁寧な言葉遣いで対応する。
すると、
「あの……私とお話する時は普通の状態でお願いします。今までそんな人いなかったので……」
「……分かった。それじゃあエルミア……様も僕と話す時は丁寧じゃなくてもいいよ……って無理か。」
「私にとってはこっちが普通なので。」
「だよね。まあいいか。」
「アルファ様はどうしてそこまで強くなろうと思ったのですか?」
エルミアは唐突に聞いてきた。
「うーん、一つは幼馴染と妹の為かな。後は……記憶かな。」
「そうなのですか?」
「うん、妹も幼馴染も勇者に連れてかれたからね。」
と言うと、エルミアは、
「えっ……勇者?もう一人いるのですか?」
衝撃的な言葉を発した。
「もう一人?」
「はい、だって……勇者って……貴方しか居ないはずですもの。」
これまた衝撃的な言葉を発した。
「どういう事?」
「いえ、真に勇者になられた方は、絶対に共通語では出ないのですよ?古の言葉で出るはずです。それを知らないのは公国ぐらいですかね。」
「もし、勇者って共通語で出たら?」
「邪神の仕業……ですかね?」
なんかすごいワードが聞こえてきた。
「邪神?」
「はい、今回の予言で、勇者が邪神を討伐するか、手を組んで世界を滅ぼす。と」
「真の勇者の話だよね?」
「はい。アルファ様はそんなことしませんよね?」
ちょっと涙目になってる。
「しないよ。絶対。だって世界を救う為に頑張ってきたんだから。」
「良かったです。それで、邪神についてなのですが、恐らくその勇者っぽい人は邪神の手駒なのかと思います。」
「それって……」
「はい、仲間も恐らくは……」
そこまで分かっていれば、止めていた。何がなんでも。だがアルファは、そこで少し疑問を抱き、
「エルミア……君は一体何者なんだ?」
気が付くとそう聞いていた。
「と言いますと?」
「君はなぜそこまで未来のことがわかるんだ?」
そこまで言うと、エルミアは笑って言った。
「ふふっ……何者……ですか?流石はアルファ様。真の勇者様は格が違いますね。」
「何者だ?」
アルファが少し警戒して言うと、
「私は人間ですよ?ただ……神の依代ですが……因みに、姉さまも同じです。そもそも帝国の皇族は皆そうですよ。」
と、この数ヶ月で一番衝撃的なことを言ったのだ。
「神の……依代!?」
「ええ、母さまは創造神セラフィス様、姉さまは知恵神ケルビム様、そして私は本来なら王座の神スローンズ様なのですが、今は力の神、能力の神、そして統治、支配を司る主権神である、デュナミス様、エクスシーア様、キュリオテテス様です。私は、御三方の神霊が同居しているようなものです。」
それを聞いて、アルファは大いに驚いた。
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