記憶
アルファの甦った記憶。それは前世のことだった。
ここで断っておきたい。
彼はチート転生者では無い。
アルファの前世……それは波乱万丈であった。
彼は日本の普通の家に生まれ普通の人生を歩んでいた。
アニメや漫画をよく見てはいたが、学業面ではそこそこいい理系の大学を出た。
そして、大手の企業に就職した。婚約者もできた。
しかし、事件が起こった。
婚約者が彼の貯金、給料を持ち逃げし、尚且つ、決して手を出してはいけない会社のお金にも手を出した。
もちろん、男に貢ぐためだ。
その時の婚約者の言葉は
「ごめんなさい、でも彼はあなたよりずっとかっこいいし、ずっとお金があるの。」
だった。
そして、すべての罪を彼に着せ、彼は懲戒免職。すなわち、クビになった。
家族は彼のことを信じてくれていたが、その数年後、彼を除く全員が事故で亡くなった。
天涯孤独となった彼は、昔、言っていたことを思い出した。
「どうしたら凡庸な俺でも英雄と呼ばれる存在……世界を救えるんだろう。」
その言葉から、英雄になるべく努力をして特殊部隊である執行官になったが、30歳の時に、少女たちが強姦されている場所に行き、戦いながら、少女たちを解放、保護しながら戦い、最期は、リーダーと相討ちになり、少女たちに惜しまれながらこの世を去った。生涯独身、童貞であった。
彼の死後、新聞では彼を英雄視する記事が全国に伝わり、ニューヨークタイムズにも載り、世界中で彼の功績は讃えられた。その強姦していた男達は国際指名手配犯であり、世界中で捕まえられなかった犯罪者だった。
彼は確かに英雄となったのだ。
数十年経った今でも、救われた少女たちは新しくできた家族、もしくは、彼を生涯愛したいと思い独身を貫くかつての少女たちが大勢彼の墓に参拝に行くという。そしてその子孫もそのまた子孫も永遠に彼の墓に参拝に行った。その少女達の中には転生した人もいたがそれはまた別の話である。
その英雄の名前は
そんなことはつゆ知らず、前世の記憶をもとに脳内辞書を開き(辞書を丸暗記していた)、自分の天職を引いた。
Brever、それは勇者であった。
何故、ほかに勇者を名乗る人物が出たのかはわからないが、勇者ならちょうどいい。
「決めた。俺はこの世界で世界を救う英雄になってやる!」
そう神に誓った。
そして、英雄になるべく、魔法、武術に励むのであった。
「それにまだテレスたちが勇者の嫁になったと決まったわけじゃない!」
そこには手紙が握られていた。
この時はそう信じていた。彼女たちが帰ってくるまでは。
そんなことは一切知らないアルファは彼女たちの幸せのために英雄になるべく修行に勤しむのであった。
村の人々はアルファに協力的だった。
「アルファが嫁さんたちの為に強くなるってんなら応援するぜ!!」
中には、アルファがテレシアとも結婚するという噂を立てる人もおり(一夫多妻が認められているこの世界では普通に妻を二人持つ人もいる上に、妹も奥さんにできるらしい)、応援してもらえたことにアルファはかなり喜んだ。
「この村の人たちのためならなんだってできるよ!」
そう言い、次の日から、修行を始めることにした。
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