第454話16-8ヘミュンの町へ
16-8ヘミュンの町へ
『お母様、落ちないようしっかりとつかまっていてください』
コクはあたしにそう言い翼を広げ空高くへと飛び上がった。
『お母さんもちゃんとつかまっててよ。あたし人間なんか乗せて飛ぶの初めてなんだから』
ティアナもセキに乗って空へを舞い上がる。
『うひゃぁっ! エルハイミ、こっちも何とか大丈夫よ!!』
見ればシェルとセレ、ミアムがクロエさんの背に乗っている。
ショーゴさんとバルドさんはクロさんの背に乗っていた。
『全く、人間風情を背に乗せる日が来るとはでいやがります』
『そう言うなクロエよ、暇だ暇だと騒いでいたのはお前だろう?』
長時間の場合クロエさんもクロさんも竜の姿になる時はコクから魔力をもらわなければならない。
だが結構な距離を飛ぶから変身していられる時間にも限りがある。
「コク、教えた方角に早馬で三日くらいの距離ですわ。行けまして?」
『お任せを、お母様。クロ、クロエ、セキ行くぞ!!』
コクは首を目的地に向けそう念話を飛ばし一気に飛ぶ速度を加速する。
その速度は早馬の比ではない。
あたしだって飛ばされないように必死にしがみつくのが精いっぱいだ。
『お母様、やはり目的地までは厳しいです。さらに速度をあげますからしっかりつかまってください。魔力が切れる前に何とか辿り着かせます!!』
コク自身なら別に魔力を使わず竜の姿になれるらしいけど、幼竜のコクとセキだけじゃみんなが背に乗れない。
ここはドラゴンニュートのクロさんやクロエさんにも協力してもらわなければならない。
『シェル、魔力切れが心配ですわ。更に速度をあげますからしっかりつかまってですわ!』
『何っ!? まだ早くなるの!? 勘弁してよねっ!!』
何とかちらっと見ればそれでもシェルはセレやミアムに言ってクロエさんにちゃんとしがみついている。
ショーゴさんたちは多分心配する必要は無いだろう。
あたしたちは必死になってコクたちにしがみつきヘミュンに向かうのだった。
* * * * *
「ぜーぜー、もうクロエの背に乗るのはごめんだわ。うっぷ、やばい!」
どうやらシェルはドラゴンに乗るのは苦手のようだった。
いや、セレもミアムも同じか?
真っ白になって固まっていた。
「なんとか辿り着けました。お母様大丈夫ですか?」
「ええ、私は問題ありませんわ。ティアナ、大丈夫ですの?」
「ええ、何とか。しかし流石は黒龍と赤竜。こんなに早く辿り着けるとは」
「うー、疲れた。お母さん後で魔力ちょうだい!」
あたしはヘミュンの町が眼下に見える場所まで来てみる。
コクたちのおかげで早馬でも三日かかると言われたこの距離をものの数時間で飛来してきたのだ、かなり無理をした自覚はある。
今は小高い岩山の上にいる。
ここからヘミュンの町まで歩いて数時間と言う所か?
「ティアナ様、ここまで早く着けるとは驚きですが潜伏している仲間に連絡を直ぐには入れられません。自力でヘミュンの町に入らなければならないのですが‥‥‥」
「かまいません。こちらには優秀な魔法使いたちがいます。まずはヘミュンの拠点へ行きましょう」
「わかりました。では町の近くまではなるべく気付かれない様に行きましょう」
そう言ってバルドさんは岩山を降り始めたのだった。
* * * * *
あたしたちは街道を避けてヘミュンの町の城壁付近にまで来ていた。
今は近くの林で身を隠しながら城壁の門の様子をうかがっている。
「そろそろ夕刻で城門が閉まる頃です。城門が閉まり暗く成りましたら忍び込みましょう」
バルドさんはそう言って周りを警戒しながら小休止出来るようにする。
あたしもポーチから飲み物やドーナッツを取り出しみんなに配る。
まだ暗くなるまでには時間があるから。
「しかしもしビスマス神父だとするとどうやってここまで来たのでしょうですわ?」
「時間的には正規ルートで来れば不可能では無いでしょうが、まさかあの船は‥‥‥」
バルドさんはそう言って考え込む。
そう言えばサボの港の軍の船って‥‥‥
「大胆な所もビスマスならではかもしれません。あの男ならやりかねない‥‥‥」
因縁があるティアナはドーナッツをかじりながらそう言う。
「それでさ、もし居たとしたらどうするの? その神父が『女神の杖』運んでるっての?」
シェルは食べ終わった手をパタパタはたきながらこちらに聞いてくる。
ティアナはそんなシェルに向き直り言う。
「十二使徒で元剣聖、しかもガルザイルにまで出向いた理由はあ奴に『女神の杖』を運ばせる為でしょう。まず間違いない。このまま帝都エリモアまで行く前に阻止しなければです。バルド、ヘミュンにはジュリ教の神殿はあるのですか?」
「はい、あそこにはかなり大きな神殿がございます。多分ビスマスもそこでしょう」
バルドさんはそう言って相槌を打つ。
となればヘミュンに潜入したらセレやミアムを拠点に預けてあたしたちで強襲をかけなければならない。
ジュリ教は全部がジュメルとの関りが有るとは言えないけど、ここはホリゾン帝国。
多少の犠牲は覚悟しなきゃならない。
そしてあたしたちは夜が来るのを待つのだった。
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