第417話15-6素体作成
15-6素体作成
あたしはあの工房でアンナさんとイオマと共に素体作成に取り掛かっている。
「流石エルハイミちゃん、【創作魔法】の精度が素晴らしい。ここはかなり精度を要しますから遊びは一切なしでお願いします」
アンナさんに言われ腰の部分になるパーツを【創作魔法】で作っていく。
そうやって既に三日が経っていた。
「エルハイミさん、これじゃ駄目だ! 穴が小さすぎてビス通したら他が何も出来ねえ。あと一周りゆるくしてくれ!」
ルブクさんにパーツ取り付けするビス穴の大きさを指定され微調整をする。
イオマにも教えたけどあたしが【創作魔法】で作ったものはイオマだとなかなか変形できない。
いろいろとコツも教えたのだけどそれでもやはり難しいようで結果あたしがやる事になる方が多い。
「お姉さまの精製精度は高すぎるんですよ。すごいのですけど」
「そうですの? 魔法はイメージが重要ですわよ? 頭の中で三次元をイメージするとわかりやすくなりますわよ?」
「三次元? 何ですかそれ?」
どうやらこの世界にはその概念が無い様だ。
あたしは紙にさらさらっと落書きのように三面図と立体の台形ピラミッドを描く。
「三面図と言って三方向から見た場合の図面ですわ。縦横、そして高さがこれで認識できますわ。そしてこれを立体図で書くとこうなりますわ」
描いた絵を見せる。
するとルブクさんやアンナさんも寄ってきて覗き込む。
「なるほど、これは理解しやすいな。流石エルハイミさんだ!」
「これは‥‥‥ エルハイミちゃん、もっと詳しく教えてください!」
仕方ないのであたしはその書き方や見方を説明する。
するとアンナさんは興奮して図面を全部書き直すとか言い出した。
いや、手書きだと大変だよ?
三面図何て三回同じもの書かなきゃならないんだから‥‥‥
あたしは嬉々として製図を始めるアンナさんを見ていた。
「お姉さま、ちょっと相談なんですけど」
「どうしましたのイオマ?」
イオマはあの新型魔晶石核を持ってあたしの隣に来た。
「お姉さまのおかげで『エルリウムγ』はスペース的に余裕が出来、形状的にも精度が出ました。なので当初考えていたこの新型魔晶石核の取り付け位置をもっと搭乗者の近くにしようと思うんですよ。そうすれば操作も反応ももっと楽になるのじゃないかと」
そう言ってイオマは新型魔晶石核を当初の腰部取付位置から搭乗者のすぐ近く、具体的にはシートの裏辺りに着けたい旨を言ってきた。
この「鋼鉄の鎧騎士」は人間で言う内臓部分から肺、心臓の所にスペースを作ってそこに搭乗する構造だ。
椅子に半立ちの様に座るのだけど、操作方法は両手両足を操作水晶に載せるだけで後は思念波を受け取るヘッドギアをかぶると情景が脳裏に映るのでまるで自分が巨人のようになった気分になる。
当然動力源の核となる新型魔晶石核、連結型魔晶石核が体の近くに有ればあるほど操作や反応は早くなる。
イオマのそのアイデアはあたしも十分に理解する。
「それではさっそくその部分を変えてみましょうですわ!」
あたしは連結型の取り付け位置をシート裏、丁度搭乗者にとって背中の場所に作ってみる。
イオマは出来上がったスペースにそれをはめてみて頷く。
「良い感じですね、これで更に余裕が出来ました」
そして一旦連結型を外してアンナさんに改定部分を話す。
アンナさんとしばらく話していたけど戻って来た。
「うーん、お姉さまが先ほど作って腰パーツで形状を設計してしまったのでそこのスペースは開けたままでいいそうです。強度的には十二分に足りている計算ですので。それで新型、連結型魔晶石核の取り付けは搭乗者のすぐそばでいいそうです」
そう言って途中まで組み上げている素体を見る。
「では後は上半身を作れば素体のメインフレームが組み上がりますわ。頑張ってやっていきましょうですわ!」
あたしはそう言って残りのパーツをどんどんと【創作魔法】で作っていく。
そしてイオマもそのメインフレームを中心に素体の基部となる重要パーツを取り付けて行く。
そうそう、素体の反応速度を上げる為に魔獣の筋肉を特殊な加工をしてメインフレームに取り付けたりもする予定だ。
場所によっては魔獣たちの外骨格なんかも使っているので素体はだんだんと半生物的なフォルムにもなっていくはず。
‥‥‥
‥‥‥‥‥‥うん、ちょっとキモイ。
まあ最終的には鎧を着こむ感じで外観は正しくフルプレートアーマーの騎士そっくりになるはず。
あたしは深く考えない様にして作業を続けるのだった。
* * * * *
「これで素体のメインフレーム出来ましたわ!」
メインフレーム担当のあたしは骨格となる全身の「エルリウムγ」で出来た骨組みを見上げる。
実際これだけでも動かせるのだが魔法にだけ頼ったそれはゴーレムの様にゆっくりとした動きしか出来ない。
しかし可動範囲の確認は今しておかなければならない。
でないといろいろ取り付けてから可動範囲が予定と違った場合一苦労も二苦労もするからだ。
「ではエルハイミちゃんこれを」
ポン
アンナさんから固定用のベルトを手渡されるのだった。
* * *
「それではエルハイミちゃん、可動範囲の確認をします。まずは屈伸からお願いします」
あたしはメインフレームのお腹の辺に体をベルトで仮止めした素体に今乗っている。
正直結構怖い。
乗ってみると意外に地面までに高さが有る。
なんか生前実家で庭の枝おろしをさせられた時に脚立の一番上に乗ったような気分だ。
あたしはフレームに魔力を流し込み動かしてみる。
すると両肩をキャリアーハンガーで釣りあげていた素体フレームはゆっくりと動き始める。
「やった! 動いた!!」
「ハンガーのフックを外します! エルハイミちゃん良いですね?」
「わかりましたわ! どうぞ!」
あたしはフックが外されると数歩前に出しキャリアーハンガーから出る。
そしてまず屈伸運動を始める。
次いで腕を動かし体全体を動かしと。
「思いのほか良好ですね。どうですか乗り心地は?」
「これは決して良いものではありませんわ! まるで早馬にでも揺られているようで‥‥‥」
そう、動かすたびに体全体に荷重がかかる。
更にゆっくりなのに衝撃がすごい。
昔ロボットアニメを見たのを思い出したけど決してそんな楽じゃないわよ、これって!!
あたしは何とか一通りの可動範囲の確認を終える。
素体のメインフレームをキャリアーハンガーに戻しこれからいろいろと取り付けて行く。
「ふう、何とか終わりましたわ。でもこれって乗る人大変ですわね?」
あたしはそう言って体についているベルトを外す。
イオマはあたしの横まで来てそのベルトを受け取りながら質問をする。
「お姉さま、重量には余裕があります。搭乗席などで何か注文は有りますか?」
あたしはちょっと考えて体の固定について意見してみる。
「思いの他揺れが強いですわ。衝撃などもひどいので体の固定などはかなりしっかりしないといけませんわね。ベルトではなくもっとこう、体全体を包むような風にしなければいけませんわ」
あたしのその意見にイオマはメモを取る。
そして「わかりました」と言ってルブクさんのもとへ行く。
あたしはキャリアーハンガーに取り付けられた素体のメインフレームを見る。
これからどんどんと生体パーツや魔晶石、魔石の類を取り付けて行くだろう。
後は任せても大丈夫そうなのであたしは一息つくためにティアナのもとへと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます