第375話13-31これからの使命
13-31これからの使命
「エルハイミさん、ちょっとお話が有ります!」
会合が終わってあたしたちは与えられたゲストハウスに戻ったらセレとミアムに声をかけられた。
珍しいわね、この二人からあたしに話が有るなんて。
「エルハイミさん、ティアナ様の呪いどうなっているんですか!?」
流石に大きな声では言えずに二人はあたしを引っ張って部屋の端に連れて行き小声で聞いてくる。
「どうもこうも、あの呪いはティアナの精神に影響を与えるというのは知っていますわよね? だからその負担を軽くするために私にティアナの呪いを移したのですわ」
「なっ!? 道理でティアナ様の呪いが無くなっていたわけですね‥‥‥」
「くっ、期待していたのに! エルハイミさん、知っていてわざとティアナ様を私たちに貸してくれたのですね!?」
「丸一日ティアナを貸したのですわ、満足していただけたでしょう?」
あたしは思わず笑いがこみ上げて来そうなのをぐっと我慢していた。
「くっ、確かに丸一日ティアナ様と一緒にいられましたが‥‥‥」
「なにも搾り取れなかった‥‥‥」
セレとミアムは悔しそうにこぶしを握っている。
あたしはふっと笑って優しい笑顔で二人に言う。
「私は寛大ですからちゃんとティアナをあなたたちに私が気分良ければ貸してあげますから、今後は協力的になりませんと『女神の杖捜索隊』に参加させてあげませんわよ?」
それを聞いたセレとミアムは血の涙をこぼして拳を震わせる。
「くっ! ティアナ様の為とは言え‥‥‥」
「た、魂まで屈せると思うな! 正妻っ!!」
「嫌なら今後はティアナに呪いを移したときには貸出しませんわよ?」
あたしのその言葉にセレとミアムは泣く泣くあたしに頭を下げるのであった。
『あんた、この二人に対して容赦ないわね?』
「正妻としての躾ですわ。ティアナが誰の物かちゃんと理解させませんと行けませんわ」
「あ、あの~エルハイミ?」
「ティアナ、貴女もちゃんとしなければいけませんわ! あの二人の事情に同情はしますけどけじめはつけさせていただきますわ! 私が正妻なのですから!!」
ふんっ!
あたしは鼻息荒くティアナに言う。
「はい、わかりました‥‥‥」
ティアナは大人しくあたしの言う事を聞いてくれるようだ。
「ほんと、尻に敷かれるようになったわね、ティアナも」
「まあお姉さまですからねぇ~。欲望に忠実ですもの」
「お母様、赤お母様ばかり相手にしないで私の相手もしてください」
戻って来たシェルもイオマもコクまでも何か言っている様だが何時もの事なので軽く受け流す。
そしてこの応接間でこれからにについて話をする。
「さて、今日の会談で方針は決まりました。なのでこれからですが、私とエルハイミを中心に『女神の杖』を探索する少数部隊を編成します。メンバーは私、エルハイミ、シェル、ショーゴ、イオマ、コク、クロ、クロエを基本にバックアップにセレ、ミアム、を中心に複数人を考えています」
「あの、ティアナさんそのバックアップって何ですか?」
イオマが手を挙げながらティアナに質問する。
「今後『女神の杖』探索を行うのにあたり近郊の町や村、場合によっては迷宮の入り口などで拠点を作りそこでの様々な活動に対するフォローをする部隊です」
「つまりあたしたちに何かあったら救援とか不足物資の送付とかしてくれる部隊?」
シェルがティアナにそのまま聞くとティアナは無言で首を縦に振った。
「勿論バックアップの部隊もそれ相応の力が有る者たちを選びます。それと原則バックアップ部隊にはアイミも常駐させます」
アイミはその巨体の為今後迷宮などの閉鎖空間に行くのは正直難しい。
しかしティアナがあの力を欲してアイミを呼べば空を飛び大地を割り駆けつけるだろう。
あたしは一瞬唇を噛む。
絶対にティアナにあの力を使わせない。
そう思っているとコクが質問をする。
「状況は分かりましたが私がお母様と赤お母様の下にいれば大概は何とかします。クロもクロエもいますしね。それで、最初は何処の『女神の杖』を探しに?」
かなり傲慢な言い方だがコクたちの実力は知っている。
そしてそれは事実だろう。
「まずはガレント、ガルザイルに有る地下迷宮へ行きます。連合軍の様子を見るのも再度この新しい編成の指示をするのも必要ですしね。それにあそこに行くのはそれ相応に面倒な場所ですから」
あたしはそう言うティアナの顔を見ながらご先祖様が言った場所を思い出す。
その昔ガレントの王宮は天空に有った。
膨大な魔力でその王宮を天空に浮かばせ正に世界を見下ろしていた。
しかしご先祖様のわがままでそんな古代魔法王国も一夜で滅び去った。
力の源、「賢者の石」が無くなってしまったからだ。
そして天空の王宮は空から落ちてきた。
今のガルザイルはその落ちてきた王宮を取り囲むかのように大きな城壁で取り囲んでいる。
そして王城はその城壁の上に立てられ落ちてきた王宮を監視している。
理由は落ちてきた王宮には王宮を守るためのガーディアンたち魔法生物やゴーレムが沢山いたからだ。
それがもし人の住まう所へ漏れ出したら‥‥‥
普通の人ではとてもじゃないが太刀打ちできない。
それに落ちてきた王宮は長い時間をかけてまるでそこが迷宮かの様になってしまった。
あたしたちが行こうとしているその地下迷宮はなんとその落ちてきた王宮の下に有る。
つまり地下迷宮に行く前に危険極まりない『中央都市』の『空から落ちた王宮』を通らなければならない。
「ガルザイルに行くのは良いとしてそのバックアップ部隊は着いてから人員を決めるの?」
「いえ、今回は王都でもありますからセレとミアム、それにアイミとイパネマさん、連合軍の者を数名準備させます。まずは慣れてもらわなければですからね」
シェルは地下迷宮と聞いてあまり好い顔をしていない。
そしてバックアップ部隊がどんなものかを気にしている。
「ふーん、まあそこそこの実力者ならいいか。もう迷宮でひもじい思いするのはごめんだし」
そう言って腰のポーチを叩く。
今回あたしたちは一人一個シェルと同じポーチをエルフの村で譲り受けた。
あれはものすごく便利だしイージム大陸ではひどい目にあったからああいう便利なアイテムは是非欲しかったのだ。
「なんとなく聞く限り面倒な所そうでいやがりますね? その『空から落ちた王宮』とかのダンジョンごとふっ飛ばせばいいのではないでいやがりますか?」
「クロエ、それは短絡思考だ。そんな事をしてしまったら地下迷宮の入り口も何処だか分からなくなってしまうぞ?」
「あっ」
いや、クロエさん、面倒でももう少し考えてよ?
最近肉弾戦専門で脳みそまで筋肉になっていない?
「どちらにせよまた迷宮ですね? いろいろと準備しなきゃですね、お姉さま!」
「全くですわ。今度はひもじい思いしないようにしましょうですわ」
あたしとイオマ、シェルにショーゴさんは一緒にうんうんと頷く。
「コクはお母様のおっぱいあるから大丈夫です!」
いや、コク、それもあたしの体力次第だよ?
そう思うあたしは既にコクにおっぱいをやることが前提である事に気付かなくなっていたのだった‥‥‥
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