第330話12-18メル教大布教会

 12-18メル教大布教会



 近くの遺跡調査であまり深く調査すると過去の見たくない傷跡がどんどん出てきそうなので過去の資料の精査をすると言う事にして翌日は古文書をネミルさんの執務室で見ると言う事にした。

 


 「もうああ言った男女のもつれが原因なお話はこりごりですわ」


 「まさか伝承がああも一方的に改ざんされているとはですね、古文書を鵜呑みにするのは良く無いと言う教訓には成りましたね」


 あたしとネミルさんは二人して大きくため息をつく。



 「そんな事よりメル教の方はどうなったのよ?」



 シェルが一番重要な事を言い出す。

 そう、本来の目的はメル教がジュメルとつながっていることを公にするのが重要。

 あたしたちはイリナさんを見る。


 「まずは大布教会とやらなんだけどね、どうやら街中の公園を使用してメル教の教えを広めるイベントの様なんだけどその規模が普通じゃない。聞いた話だけでも近隣からメル教祖を崇拝する男どもが数万人は集まりメル教祖のありがたい教えを聞きに来るそうだ」



 数万にも及ぶ信者ですって?

 それってかなりの数じゃないの?



 「それにそこではお布施と称してメル教信者用の各種グッズやメル教祖の握手会も開かれるらしい。ただ事前に『メル教十の教え』プレートを購入してそれに付属する『握手券』が無いと握手できないらしいがな」



 なにそれ?

 握手一つするのにそこまでする人いるの!?



 「流石に握手だけの為に『メル教十の教え』など購入する人はいないですわよね?」


 「いやな、それが握手したいが為にプレートを一人で二十も三十も購入するやつもいるらしいんだよ。既にプレート販売は完売で冒険者ギルドの依頼掲示板では通常価格の十倍の値段で買取依頼が出ているらしいよ」



 なにそれっ!?

 一体どうなってんのよこの国の男どもはっ!?



 「主様、ベルトバッツからも報告が上がって来ていております。ベルトバッツよここへ」


 コクがそう言うと執務室の扉がノックされる。

 ネミルさんは一瞬変な顔をしたが「どうぞ」と言って来訪者を招き入れる。


 するとメガネをかけた髭面禿げ頭の大男、ベルトバッツさんがメル教のはっぴを着こんで頭に鉢巻きをしてあのペンライトもどきをもって現れた。


 「黒龍様、お待たせいたしたでござります」


 「なっ!? 誰っ!?」


 イリナさんが驚いている。

 あたしはかいつまんで説明するともう一度驚いてベルトバッツさんを見る。


 「まさか、伝説のローグの民だって言うのかい‥‥‥」


 「なんと、ベルトバッツさんでしたか!? 変装をしていたので全くわかりませんでした!」


 ベルトバッツさんは眼鏡をはずすとネミルさんも驚いた様子。



 いやいやいや、髭面禿げ頭の大男で何時も怪しい民族装束にメガネとメル教のはっぴ、鉢巻きしただけじゃないの!

 何故これで分からない!?



 「流石にベルトバッツです。見事な変装でした」



 ええっ!?

 コクまで!?



 「メガネまでされちゃ分からないのが普通よね?」

 

 「本当ですよ、お姉さまどうしてたんですか?」



 なにそれっ!?

 シェルやイオマまで!?



 あたしは額に汗をびっしりかいてベルトバッツさんとシェルたちを見比べている。



 「ベルトバッツよ、報告を」


 「はっ、ご報告させていただくでござります」



 そう言ってベルトバッツさんは話し始めた。


 「既にそちらのイリナ殿より『大布教会』の概要は語られたと思いますでござる。今次布教では通常の布教と異なりサービス満点、今なら入教すると抽選でメル教祖の頭なでなでをしてもらえるというサービスっぷり! 恐ろしいほどのプレゼンツでござるよ。そして入教者にはたったの金貨二十枚でこのはっぴと鉢巻、布教のシンボル輝くライトペンが支給されメル教祖応援の舞に参加が許されるでござるよ! これは重要でござる。あの舞を皆の者ですると、こう今までに味わった事の無い様な幸福感が味わえるでござるよ! そして更に‥‥‥」



 「ちょっとマテですわ、ベルトバッツさん、まさか入教したのですの!?」



 あたしが饒舌になりつつあるベルトバッツさんに待ったをかけ質問すると途端に脂汗をだらだらとかいてベルトバッツさんは目線をあたしから離す。


 「こ、これはあくまでも潜入する為でござるよ、姉御‥‥‥」


 あたしはじっとベルトバッツさんを見るが決して目を合わせようとはしない。



 「ちょっとうらやましいかもしれんな‥‥‥」


 ショーゴさん、何故そこでほほを赤らませる?



 「全く、人間の考えていることは理解できないでいやがります。それでベルトバッツよ、そのボーンズ神父とやらは見つかったでいやがりますか?」


 しびれを切らしたクロエさんに言われベルトバッツさんは頭を下げる。


 「申し訳ござらんでござります。我らも懸命にその者を探しておるのですが巧みに信者幹部に紛れ込んでいるようで未だに特定できておらんでござる。ただ、仲良くなったメガネをかけた神父服を着たはっぴ姿の幹部の方は手取り足取りと我らに指導を‥‥‥」



 「ちょっと待ちなさいですわ! その眼鏡をかけた神父服を着たはっぴ姿の人ってたくさんいるのですの!?」



 「いや、一人しかおらんでござるよ? とても親切な方で皆その方の指示に基づいて今次の『大布教会』に尽力を尽くしておるでござるよ?」



 おいこら、ベルトバッツ!

 それだよ、それっ!!


 どう考えてもその人がボーンズ神父でしょうに!!



 「それですわっ! その人がきっとボーンズ神父ですわっ!!」



 あたしがそう言うと他の人もやっとその事に気付いたようで驚いている。



 「ま、まさかあの方がボーンズ神父と言うのでござるか!?」


 「あ、でもメガネで変装してはっぴまで着込んでるんじゃ普通気付かないわよね?」


 「すごい変装ですよね、お姉さま!」


 「そうか、あいつがボーンズ神父だったのか、やたらと親切だったんでこいつじゃやないと思っていたのに」


 「その者は何度か会っていましたね。まさか彼がボーンズ神父だったとは」



 ベルトバッツさんはじめシェルやイオマも驚いているが問題はイリナさんやネミルさんは面識があったって事よ! 

 何故気付かない!?  

 

 あたしは軽いめまいを感じびっと人差し指を立てて言い放つ。

 

 「とにかくその人がボーンズ神父である確率は非常に高いですわ! 徹底的にその人に張り付いてジュメルである証拠を押さえれば一気にメル教を押さえられますわ!」


 皆もうなずいてくれる。

 これでやっと目星はついた。

 うまく証拠をつかんでそのボーンズ神父とやらも捕まえたい。

 そうすればジュメルが何を企んでいるかの全貌も見えてくる。



 あたしたちはさっそく動き出すのだった。 

 

 

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