第264話10-6ミグロ負傷

 10-6ミグロ負傷


 

 あたしたちは引き続き進みとうとうリッチのいる居城の前まで来た。



 「この城は高い断崖絶壁の上に立てられていて正面の道を進まない限り王の広間にはたどり着けない。何があるか分からないが注意しながらこのまま突き進むぞ!」


 ミグロさんはそう言って剣を振りかざしみんなの士気を高める。

 あたしたちは注意をしながら城門に差し掛かった時だった。



 『ほほう、オークゾンビも破られましたか? なかなかやるようですね、名前を聞いておきましょうか』



 そう言って城門の上に黒い影がたたずむ。

 見ればそれは黒いマントを羽織った美形の青白い肌の男性だった。



 「我々はジマの国を解放するために立ち上がった義勇団だ! 俺は団長のミグロ、貴様いったい何者だ!?」


 『ミグロですか。よろしい名前を覚えておいてあげましょう! 私は闇の支配者バンパイア、あなたたちを歓迎しましょう!』



 そう言ってマントを翻し両手を広げた。

 とたんに無数の蝙蝠が飛び出す。


  

 『ふはははははははっ! さあ愚かな人間ども私に出会た事を後悔しながら朽ち果てるがいい!!」


 無数の蝙蝠はあたしたちに噛みついて来ようとする。

 しかしあたしは【絶対防壁】を全体にドーム状に展開してそれ防ぐ、仲間たち全員に。



 『なんです!? この防御魔法は!!!?』



 あ、吸血鬼が驚いている。

 あたしにしてみればこんな蝙蝠の大軍なんて何て事は無いし、邪魔だからそのまま【雷龍逆鱗】を発動させ一気にお掃除をした。



 『ふぎゃぁあああああぁぁああぁっ!』



 あらかた片付いたので防御魔法を解除してみると黒焦げになった吸血鬼が転がっていた。



 「コクたちもそうだけどエルハイミも容赦ないわね?」



 シェルはあきれ顔であたしの横に来る。

 しかしこんな所でぐずぐずしているわけにはいかない。

 確かバンパイアたち吸血鬼にも雷の魔法は有効なはずだ。


 あたしがそう思っていた時だった!



 いきなり黒焦げのバンパイアの遺体から巨大な蝙蝠が飛び上がった!



 『油断しましたが私は不死身! この程度で私を滅することは出来ません!!』


 この巨大な蝙蝠は上空を飛び回りながら高々にそう言う。

 しかしここでつまらなさそうにしていたシェルが矢でこの大きな蝙蝠を射抜く。



 トスっ!



 『ぐおぉぉぉおおっ! 何故バンパイアの最大の弱点心臓をこうもたやすく打ち抜ける!!』



 ぼてっ



 巨大蝙蝠は苦しみながら地面に落ちた。

 そう言えばこの吸血鬼日光の下だというのに元気だったわね?

 と言う事は真祖あたりかしら?

 だったらあとは首をはねればとどめを刺せるはず。

 あたしはミグロさんにそのことを告げミグロさんがとどめを刺す。


 『ちょっ、大した活躍もしないでもう終わり? まてまてまてっ! もう少し活躍させろ! あ、その剣痛そう。

うわ本気? ちょっ、マジで首はだめ! 本当に復活できなくなっちゃうぅぅぅっ!! いやぁぁあああっぁぁぁぁっ!!』



 ざんっ!



 見事ミグロさんの剣が一閃してこの巨大蝙蝠の首を落とす。

 首を落とされた蝙蝠はしばらくするとさらさらの灰になってって消えていく。

 

 これで死霊四天王最強のバンパイアはミグロさんが倒した事に成った。

 この事実は以降ミグロさんのネームバリューに役立つ。


 

 あたしはそんな事を思っていたその時だった。



 ヒュンっ!

 どっ!!



 一本の短剣がミグロさんの胸に刺さった!?



 「なっ!? ミグロ!!」


 「ミグロさん!?」


 あたしやショーゴさんは慌ててミグロさんに駆け寄る。

 ミグロさんはその場で倒れて動かない。



 そんなっ!



 あたしは慌てて回復魔法をかけるがどうも様子がおかしい?

 ショーゴさんはミグロさんを抱きかかえ胸の短剣を引き抜こうとするが抜けない?



 『はっはっはっはっはっ! 死霊四天王を倒すとは見事だ! しかし奴らはリッチ様に敗れた敗者。所詮はその程度! しかしここから先我ら十二堕天使が守る。ゲームをしよう。その者の胸に刺さった呪いの短剣は残り二十四時間でその者の命を絶ちアンデットと化しリッチ様に忠誠を誓うアンデットモンスターと変わる。それまでに我ら十二堕天使を倒しリッチ様を倒せばそ奴は助かる。さあ、来るがいい。我らを楽しませろ!』


 みれば背中から六枚の黒い翼を生やした金ぴかの鎧をまとった肌の青白いイケメンが城壁の上に立っていた。

 そいつは『待っているぞ』とだけ言ってその場から消えた。


 「くっ、油断した‥‥‥」


 「ミグロ!」


 「ミグロさん!」


 どうやら言われたことは本当のようだ。

 まだミグロさんは死んでいない。

 しかし時間がない。

 それまでに十二堕天使を倒しリッチを倒さなければミグロさんがアンデットになってしまう。



 「皆さん、ミグロさんをお願いしますわ! ここから先は私たちで行きますわ!」



 あたしはそう言って義勇団の人たちにミグロさんを任せる。

 いくら死霊四天王たちを倒したとはいえここも安全とは言えない。


 「シェル、ショーゴさん、イオマ、コク、クロさん、クロエさん時間が有りませんわ。行きますわよ!」




 あたしはそう言って城門をくぐるのだった。

 

  

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