第230話9-2地下迷宮

 9-2地下迷宮



 「あ、あのぉ~ちょっと待ってってもらえませんか? そ、その生理現象が‥‥‥」



 イオマさんが動き出したあたしたちにちょっとまってをかける。

 もじもじと赤くなって恥ずかしそうにしている。


 生理現象かぁ、そりゃ仕方ないよね?

 実はあたしもちょっとそんな感じなんだよね。


 「じゃあ、あたしも行ってくるわ、実は結構限界なのよ」


 シェルもちょっと顔を赤らませてイオマを引っ張って壁の向こうに行く。


 「あっ、私もですわ!!」


 そう言ってあたしもついて行くけど、まさか三人そろってするわけにはいかない。

 ショーゴさんには見えないところまで来たら順番で済まそうと考えている。



 あまり離れると何か有った時に大変なので壁の向こうに丁度下半身を隠せるくらいの鍾乳洞の出っ張りがある。

 あたしたちは順番でそこで済ませようとまずはイオマさんが行く。


 その様子を直接見るのも悪いのであたしたちは視線を外す。



 「ふう~、危なかったぁ~ ‥‥‥きゃぁあぁぁぁっっ!!」


 イオマさんが悲鳴を上げる!?

 あたしとシェルは慌ててそこへ行くとイオマさんがしりもちついて何かを指さし叫ぶ。



 「うぁああっ! も、モンスターっ!!」



 見れば岩に偽装した芋虫みたいのがいる。

 それはもぞもぞとこちらに向かって動いてくる。



 うあー、確かにこれは気持ち悪い。

 あ、上半身を持ち上げて何か吹き出そうとしている?



 「【絶対防壁】!」


 とりあえず魔法攻撃も考慮して【絶対防壁】の魔法の壁を作る。


 すると芋虫は口から毒々しい紫の液体を吐き出した。

 しかしそれは見えない壁にさえぎられあたしたちに届く事は無かった。

 が、飛び散ったその液体が地面にかかって煙を上げて地面を溶かした。



 ‥‥‥こんなの浴びせられたらひとたまりも無いじゃない!!



 あたしは危なさそうなこいつに【炎の矢】を百発ほど全方向からお見舞いしてやった。

 するとあっさりこの芋虫は焼け焦げ動かなくなる。

 いや、炭化してぼろぼろと崩れた。



 「なっ!?」



 イオマさんがなんか驚いている‥‥‥



 「な、なんなんですか今の魔法!? ロックキャタピラーが一瞬で消し炭だなんて!!」



 指さしプルプルしているけど、あたしは別の所に思わず目が行ってしまってくぎ付けになってしまう。

 シェルはその様子を見てやれやれという顔をしている。



 イオマさん、しりもちついて足開いているけど、その、下着を下ろしたままだよ‥‥‥


 しっかりと色々見えちゃってます。

 しかも途中だったからその、濡れてます、服とか‥‥‥



 あたしが赤い顔しながらずっとそこを見ているのにやっと気づいたイオマさんは慌てて手で隠すが汚れてしまった衣服はどうしようもない。

 

 あたしは【浄化】の魔法をかけてやってイオマさんに身支度するよう言う。



 「先程の魔法もそうですが浄化魔法まで使えるなんてエルハイミさんっていったい何者なんです??」


 「ただのエロハイミよ」


 「誰がエロハイミですの! このエロフ!!」


 あたしとシェルが騒いでいるとイオマさんはぶつぶつ何か言っている。



 「そう言えば西の大陸で天秤の女神アガシタ様に祝福された姫様がいるって聞いたけどその伴侶の魔法使いが確かエル何とかって名前だったような‥‥‥」


 イオマさんはあたしをじっと見ている。

 いや、厳密にはあたしの胸を見ている……



 たゆん。



 ライトプロテクターで覆われていてもあたしの胸は動けば揺れるくらいの大きさは十分にある。

 同じ年の女の子よりは大きいのがひそかな自慢だ。



 「結構大きな胸‥‥‥ 恐ろしいほどの魔力を持っている魔法使い‥‥‥ ま、まさかエルハイミさんて!?」



 いよいよ何かにたどり着いたような感じのイオマさん。

 あたしを指さしこういう。



 「もしかしてエルハイミさんてあの有名な『育乳の魔女』ですかっ!?」




 うおぃっっ!!




 「なんですのその呼び名はっ!? いえ、確かに以前にもそんな名前で呼ばれたことはありましたわ、でもそっちが有名なのですの!!!?」


 

 しかしイオマさんはきらきらした目であたしににじり寄ってくる!?


 「まさか本当にエルハイミさんがあの『育乳の魔女』だったんですか!! お、お姉さまと呼ばさせてください! そしてあたしの胸もせめて揺れるくらいに大きくしてください! 村で貧乳貧乳ってバカにされて、もう十四にもなるのにこのままでは本当に貧乳のままになってしまいます!!」


 そしてあたしに抱き着いてくる。

 可愛い女の子に抱き着かれるのは嫌ではないがあたしにはティアナがいる。

 

 そんな様子を見ていたシェルはけらけら笑っているが、何かを思い出したように慌ててあちらの影に行く。

 そしてしゃがんで……



 それを見たあたしも思い出す。

 そろそろあたしも限界が近い‥‥‥



 「あ、あのイオマさん、その話はあとでゆっくり致しましょうですわ、私もちょっとあちらで済ませてきたいですわ」


 「ああ!お姉さま逃げないでください!!ちゃんと私の話を聞いてください!」



 いや、今はそれどころじゃ無いので、後にしてっ!



 見るとシェルがすっきリした顔で戻ってきた。

 こいつ、一人ですっきりと!



 「い、イオマさん、本当に私もそろそろ限界ですの、ちょっと放してくださいですわ」


 「いいえ、放しません! 私のお姉さまになってちゃんと私の胸を大きくしてくれるって約束してくれるまで放しません!!」



 やばい、シェルのすっきり顔見たら本気でやばくなってきた!!

 焦るあたし、言う事を聞いてくれないイオマさん。



 「お姉さま!」


 「駄目っ! 放してくださいですわぁ!!」


 あたしたちはかみ合わない攻防を繰り広げている。



 「まさか覗いてはいないでしょね? ショーゴ、もう出てきてもいいわよ」


 「覗いてなどおらん。悲鳴が聞こえたが主たちなら遅れは取らんだろうと思っていた。だからさっきからずっとここで待っていた」



 どうやらシェルとショーゴさんは何か話しているようだ。

 しかしそんな事にかまっている暇はない!

 本気であたしはやばくなっている!!



 「お願いですわ、放してくださいですわぁ!! いっ、いかせてくださいですわぁぁッ!!!!」




 切迫したあたしの悲鳴が迷宮に響くのであった。  

 

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