第222話8-24成人、そして誕生日
8-24成人、そして誕生日
「あらあらあら~、ここがティナの町なのねぇ~。流石にここまで来るとちょっと寒いわねぇ~。」
あたしはポカーンと口を開いたままだった。
ママンがいる?
何故??
どういう事!?
「お、お義母様、よくぞお越しくださいました!どうぞこちらへ!」
玄関に出迎えに出ていたティアナはママンを引き連れて応接間へと行く。
いまだショックから立ち直れないあたしをシェルが突く。
「ねえ、行かないの?」
「あっ、い、行きますわ?」
あたしは慌ててティアナたちの後について行くのだった。
* * *
「それで、お母様こんな所へまでどうしたのですわ??」
「あらあらあら~、お母様ね戦争が始まったって聞いてエルハイミたちが心配で心配でね。それにエルハイミも成人でしょ?本当は実家に戻ってもらってお祝いしたかったのだけどそうもいかないので私が代表でお祝いに来ちゃったのぉ~」
さらりと言うが今ここ戦争中よ!?
って、成人??
‥‥‥おや??
「あーっ!?そう言えばエルハイミの誕生日ってもうすぐじゃないのっ!!?」
ティアナが声を上げる。
最近戦争の事で頭がいっぱいですっかり忘れていた。
「ご、ごめんエルハイミ!!そ、そうだ今から準備して盛大に祝いましょう!!」
「ティアナ、落ち着いてくださいですわ。今は戦時中、祝ってくれるのはうれしいですが何時ホリゾンが攻めて来るかも分からない状況ですのよ?」
ホリゾン側の動きは今のところ無い。
どうやら各ルートを破壊された復旧作業に全力を投入しているようだ。
偵察部隊の話では砦からも魔怪人やブラックマシンドールが借り出され復旧作業に向かっているらしい。
エスティマ様は今がチャンスだから砦を強襲しようとか言ってるけどわざわざこちらから攻めていって損害を発生させる必要も無いだろうというティアナの考えでそれは取りやめになった。
それにもしホリゾンの砦を攻め落とせなかったらそれはそれで問題だ。
報告ではあちらもだいぶ増強しているようで簡単には攻め落とせないだろうとゾナーも言っていた。
「あらあらあら~エルハイミもだいぶしっかりさんねぇ~。でもお祝いくらい良いじゃないのぉ~せっかくお母様みんなのお祝いの品も運んできたのだからぁ~」
そう言えばママン一人に馬車三つって何かと思ったらあたしへの祝いの品が馬車二つもあるそうだ。
確かに本来成人ともなれば大々的に祝う行事でもある。
ティアナの時なんか国を挙げての祝福をしたのだもの。
「あらあらあら~、本当はバティックやカルロスも来たがっていたのだけど約束でもっと強くなるんだ~って鍛錬に励んでいるのよ~、最近お母様の相手もしてくれないほど鍛錬にのめり込んでねぇ~。お父様はお仕事が忙しくなってお城に行ったまま帰ってこないのよぉ~。だからお母様一人できちゃった~」
いやいや、いくらそうでもどうにかなるかも分からない危険地帯にわざわざ来なくても祝いの品だけでも送ってもらえばいいのじゃないかしら?
あたしがそう思っているとママンはさらにとんでもない事を言う。
「あらあらあら~エルハイミ、そんな顔をしないでぇ~それにお母様もお父様の許可を取ってエルハイミたちを手伝うのよ~」
はいっ?
手伝う??
何を!??
「お、お母様、一体何を手伝うというのです?」
するとママンは立てかけてあった魔術師の杖を引っ張ってきて床にとんとつく。
「あらあらあら~、勿論戦争の手助けよぉ~?魔術師は多い方が良いでしょぉ~?」
うおいっ!!
何てこと言い出すのよっ!!
現役を離れて大人しく家庭主婦してるんじゃないのかよっ!!?
「『稀代の魔女ユリシア』、お義母様が手伝ってくれるのですねっ??」
そこっ!
目をキラキラさせて何を期待してんのっ??
「エルハイミのお母さんって魔法使いだったんだ。そんなにすごい人なの?」
シェルはあたしに聞いてくるがあたしが答える前に割って入ってきた人がいた。
「ああ、あの時は我々ホリゾン軍が撤退を余儀なくされた。まさか大地からあんなものが出てくるとは思いもしなかった。しかもあんなに大量にな‥‥‥」
苦々しい表情をするゾナー。
そう言えばこいつあの大戦の経験者だったんだ。
「いったい何があったのですの、ゾナー?」
「ああ、大地から植物の竜やミノタウロス、ジャイアントにオーガ―と大型のモンスターがオンパレードで出てきてな、それれに足止めされているところからツタが絡まってきて生き血を吸いまたモンスターが生まれるという阿鼻叫喚の戦場だったんだ」
植物のモンスター?
生き血を吸う??
何それ?
なんて凶悪な魔術を??
あたしは思わずママンを見る。
「あらあらあら~、そうなの?そちらの方はあの戦争にいた方だったのねぇ~。ごめんなさいねぇ~あの時は必死だったので秘術を使わせてもらったのぉ~。あれだと魔力使わないでどんどん味方が増やせるからねぇ~」
さらりと凄いこと言うママン。
植物のモンスターに魔力使ってないって?
自己増殖するって??
何それ!?
『エルハイミ、あんたも大概だけど貴女の母親も同じね。それって秘術【大樹の皇帝】だわね。まさかそれを使える魔術師がいたとはね。魔術と精霊魔法両方一度に発動させなけりゃできない超難易度の高い魔法よ!』
シコちゃんのその言葉であたしやティアナ、そしてシェルまでも思わずママンを見る!
ママン、本当にあなたって何者よ!?
「あらあらあら~、でもあの魔法はもう使えないのよ~、媒体である世界樹の葉がもうないからねぇ~」
「世界樹の葉?それなら‥‥‥」
シェルはいつも腰に着けている小さなポーチに手を入れてまさぐる。
そして一枚の黄金に輝く葉っぱを引っ張り出す。
「お守りで何枚かもらっておいたから一枚あげる」
「あらあらあら~、いいのシェルちゃん?ありがとぉ~」
ママンはにこにこしながらそれを受け取る。
金色の葉っぱって‥‥‥
ええっ?
長老たちが座っていたあの木って世界樹だったの??
あの時はきれいだなぁくらいで気にしていなかったけど、あの木って世界樹だったんだ!?
しかしシェルの奴あのポーチにそんなものまで入れていたんだ‥‥‥
そこでふと気づく。
あのポーチ大きさの割にいろいろ入っている。
「シェル、そのポーチっていったい何が入っているのですの?前もそうでしたがかなり色々と入っているみたいですわね??」
「ああ、これね?便利だからずっと使ってるのよ、えーと何が入っているかはっと」
そう言いながらポーチの中身を出し始める。
出し始めるのだが‥‥‥
出している‥‥‥
って!
なにこれッ!?
絶対にありえない量の物資がどんどんと出てくる??
ほとんど猫型ロボットの数次元ポケット!?
「どうなっているのですの!シェル??」
「どうもこうもこのポーチはエルフ族の技術の結晶!魔法の袋を改良した魔法のポーチよ?」
並べられた品々は前にシェルが使っていた弓や果物に携帯食、衣類に薬草、小瓶、世界樹の葉やがらくたみたいなものまであった。
「そう言えば昔サフェリナのサラが魔法の袋のこと言ってたっけ?確か冒険者に重宝されるとかで」
ティアナが留学生のサラさんの事を思い出している。
確かあの時にエルフにしか作れない魔法の袋の話をした。
つまりそれと同じ原理のポーチと言う事か!?
「そうしますと新鮮な果物もその中に入れておくと腐らないと言うやつですわね?」
「そうよ、便利でしょ~」
あたしはふと思い出す。
おやつでこいつが良く果物てべていた事を‥‥‥
「そうすると昨年の冬の物資不足の時に一人で美味しい果物食べていましたわね!?」
「ギクッ!」
こいつ確信犯か??
あたしが睨んでいるとエスティマ様がやってきた。
「皆こんな所にいたのか?‥‥‥って、ユ、ユリシア様ぁ??」
あ、やっぱり驚くよね、いきなりママンが現れれば。
ママンはにこにこしながらあらあらあら~言いながらエスティマ様に挨拶している。
勿論その後エスティマ様はママンのご機嫌取りに全力を尽くしたのは言うまでもないだろう。
* * * * *
「それではエルハイミの十五歳の誕生日と成人を祝ってかんぱ~いっ!!」
ティアナの乾杯の合図でみんなが一斉にあたしを祝ってくれる。
「おめでとう、エルハイミっ!」
「おめでとうね!」
「おめでとう~、エルハイミ!」
「主よ、お祝い申し上げる」
「エルハイミ殿、おめでとう。」
「エルハイミ殿、おめでとうございます!このエスティマ心よりお祝い申し上げますぞ!」
ピコピコ~!
ぴこぴこ×四!
「あらあらあら~、エルハイミ良かったわねぇみんなにお祝いしてもらってぇ~、おめでとうね~」
なんかやたらと照れ臭い。
あたしはにこやかにお礼を言いながら乾杯の盃を飲み干す。
シェルの作ってくれたミードはとても飲みやすく最近のあたしたちのお気に入りだ。
あたしは二杯目のミードを注がれて思う。
とうとう成人になったのだ。
あたしも大人の仲間入りかぁ‥‥‥
みんなは戦時中ではあってもここぞとばかりに飲んで食べてあたしを祝いながらひと時の楽しい時間を過ごす。
ふとティアナを見る。
ティアナはあたしを見て優しく微笑む。
そのティアナの顔を見てあたしはついつい真っ赤になる。
それはある約束を思い出していたからだ。
あたしの誕生日の祝いは夜遅くまで続いた。
* * * * *
「ふう、みんなはしゃぎすぎよ、何時ホリゾンが襲ってくるのか分からにと言うのに」
「ふふっ、でも皆さんには感謝ですわ、こんな時でも祝ってもらってですわ」
あたしとティアナは部屋に戻り服を脱ぎながらお風呂に入る。
まだ広間では飲み続ける人たちもいるけどあたしとティアナは早々に引き上げてきた。
二人でお風呂に入りながらあたしは妙に緊張していた。
湯船に二人でつかりながら抱き合っている。
心臓の鼓動が高鳴っていてなんとなく恥ずかしくてティアナの顔が直に見れない。
「ティ、ティアナ、先にお風呂あがってもらえますかしら?」
「うん?いいけど‥‥‥」
そこまで言ってティアナは察してくれたようであたしにキスしてくれてから先にお風呂から上がる。
それを見届けてからあたしは香油を湯船に追加してから体の隅々までよく洗う。
そしてお風呂から上がってからまた体に香油を丹念に刷り込み、用意しておいたとっておきの下着とネグリジェに着替える。
そして鏡の前で身なりを整え、大きく深呼吸する。
「うん、これで大丈夫ですわ!」
そう言って自分を勇気づける。
* * *
寝室に戻るともう暗くなっていて最低限の明かりだけついている。
ベッドを見るとティアナが既にそこにいた。
「エルハイミ、奇麗よ‥‥‥」
「ティアナ、約束覚えてくれていましたの?」
「勿論よ、さあ、エルハイミおいで‥‥‥」
あたしは誘われるがままティアナが待つベッドへと上がり込む。
ティアナは優しくあたしを迎え入れてくれる。
「エルハイミ‥‥‥」
「ティアナ‥‥‥」
そうしてあたしたちは口づけをかわす。
ティアナは優しくあたしを抱きしめてくれながらもう一度口づけをしてくれる。
「大丈夫、あたしに任せて。怖がらなくて大丈夫よエルハイミ‥‥‥」
優しくあたしの髪をなでながらティアナはあたしのネグリジェに手をかける。
小さく震えていたあたしはティアナの首に手をまわす。
「はい、ティアナ愛していますわ‥‥‥」
「あたしも、エルハイミ‥‥‥」
今は只々ティアナが愛おしい。
その髪も肌も唇も。
ティアナも同じようで髪に触れる指一つでさえ心地良い。
二人の影が重なっていく。
ぱちっ
暖炉の薪が静かな部屋にこだまする。
それを合図にあたしたちは激しく求めあった。
あたしは今まで味わった事の無い甘美な思いの中ティアナにすべてをゆだねる。
そしてその晩あたしは女になったのだった・・・・・・
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