第198話7-35ジル
7-35ジル
ボヘーミャで新たな力を手に入れたあたしたちは後片付けをしてティナの町に戻っていた。
「うーん、やっと雪も解けていろいろできるわね!」
バルコニーで伸びをしているティアナ。
まだ空気は冷たいというのに一糸まとわぬその裸体が昇る太陽の光できらめいている。
あたしは思わずその姿に見とれる。
成人をしたティアナはますます成長してあたし好みのスタイルになりつつある。
真っ赤な長い髪が揺れる。
プルンと揺れる胸、キュッと引き締まった腰、まるびを帯びたお尻、すらっと長いおみ足。
にやにやしながらその姿を楽しむあたし。
と、ティアナが気付いてあたしの所へ来る。
「何そんなに見つめてるのよ?昨日あれだけ愛してあげたのにまだ足りない?」
「ティアナが相手ですもの、何度愛されても足りませんわ。」
そう言ってあたしはティアナに口づけする。
「んっ」
口づけされたティアナはそのままあたしの上に覆いかぶさってくる。
あたしもベッドに倒れ込む。
もちろんあたしも裸のままだ。
「エルハイミ・・・」
「ティアナ・・・」
いったん唇を離しお互いの名前を呼んでからまた口づけをする。
二人の影が重なりあう。
ばんっ!!!
びくっ!!?
「おっはよぅー!!天気がいいから狩りに行きましょうよ!ティアナ、エルハイミぃ・・・ぃい??」
裸のまま口づけして重なり合うあたしたち。
それを直視しているシェル。
「////なななななっ、朝から何やってんのよ二人とも!!?」
真っ赤になりながら怒っている。
あたしたちも慌てて離れる。
「シェ、シェルこそノックぐらいしなさいよ!!////」
ベッドから降りて裸のまま腰に手を当て怒るティアナ。
シーツを手繰り寄せて胸元を隠すあたし。
「///そ、そうですわよ、シェル。いきなり入って来ては困りますですわ!!」
『あーおはよう、シェル。いい所に来たわね。おかげで四回戦突入しなくてすんだわ。』
「四回戦っ!?エロハイミにティエロやりすぎよっ!!///」
シコちゃんばらしちゃダメぇっ!!
朝からこんなことでドタバタするあたしたち。
* * * * *
「それでだな主よ、そろそろ雪も無くなってきたので当面の食料を確保するために狩りに出る必要がある。農作物はまだまだこれからだからな。越冬の備蓄はまだまだ残っているが多く有って困る事は無い。」
朝食を取りながらゾナーから近況の報告を受ける。
確かに余裕があって困る事は無い。
これからこのティナの町も大々的に養蚕でシルクの生産をしなくてはならない。
養蚕が始まれば流通も活性化するだろうし、人の往来も増える。
そうすれば自然と食料問題やら何やらがまた始まる。
「そうね、とりあえず公務の方も落ち着いたし、今日は狩りに出ようかしら?」
「やったー!エルハイミ、新しい弓を使ってもいいわよね!?」
どうやらシェルはあの魔装具を使いたがっているようだ。
でも魔力込めちゃだめだよ?
魔力を帯びた矢が当たったらミンチ肉になっちゃうから。
「シェル、使うのはいいのですが決して魔力を込めないでくださいですわ。」
「なんで?」
「せっかく射止めても爆発させたりしたら意味がありませんですわ!」
シェルは言われて初めて「ああっ!」とか言ってるし。
新しい弓が手に入り浮かれているのだろう。
気持ちは分からなくはないが少しは考えて欲しい。
「それでは今日は総出で食糧確保の為狩りに出ますわよ?」
「ええ、そうしましょ!」
あたしたちは残りの朝食をたいらげ狩りへの準備を始めるのであった。
* * * * *
「ふう、結構捕まえたわね?今どのくらい?」
「そうですわね、イノシシが五頭、ウサギ二十匹、鹿が十頭、それと山鳥が十二羽ですわ。」
結構捕まえた。
特に大型のイノシシや鹿が結構捕まったのでこれらを血抜きして干し肉や燻製、塩漬けや冷凍で保存すれば結構長持ちする。
量的にもそこそこなのでこれで当分は大丈夫だろう。
後は定期的に町の狩人たちが森に入って狩りを行うので市場では問題無く出回るだろう。
農場が落ち着いたら今度は酪農の方も手を出さないとね。
すべて狩りに頼っていてはすぐに森の動物たちがいなくなってしまうからね。
「いや~、この弓通常でも使い勝手いいわ!ほんと気に入ったわ!!」
言うまでもなく今回の狩ではシェルが一番沢山の獲物をしとめていた。
ほとんど神業に近いその矢は魔法かと思うほど的確に、そして確実に獲物をしとめた。
シェルが障害物に隠れた鹿を射止めた時なんか精霊魔法使っているんじゃないかって思うほどだった。
シェル曰く、「同年代のエルフで二番目に弓が上手」だとの事だ。
エルフもわずかながら肉を食べる。
だから自衛以外に狩りで弓を使う。
あたしは狩りでシェルが弓を使うのは初めて見た。
これならシェルが自慢げにジルに弓を教えるはずだ。
そう言えばジルどうしたかな?
ちゃんと村にはついていると思うけど、その後は何も連絡をよこさない。
元気にしているだろうか?
あたしがそんな事を考えていると一人の衛兵が慌ててこちらに駆け寄ってくる。
「報告いたします!どうやら近くの村の狩人らしき少年を保護しました!近くの川に流されていたのを救助したそうです!」
あたしたちはその報告を受け救助されたという狩人の少年のもとへ行った。
* * *
「うっ?ここは??」
「良かった、ジル大丈夫!?」
シェルが心配そうにジルの額に手を当てている。
あたしは【治癒魔法】をジルにかけ、ティアナたちは濡れた服を引きはがし毛布でジルをくるんで焚火で温めていた。
「何があったんだ?」
ゾナーがジルに聞く。
ジルは軽く頭を振って、思い出したかのように表情を崩す。
「ぞ、ゾナー様ぁ、ホリゾンが、帝国が俺らの村を襲ったんだ!!」
「なに?どういう事だ!?」
その驚きの言葉に思わずゾナーは聞き返す。
「帝国軍がジュリ教の保護だとか言って、これは聖戦だとか言って村に食料や酒を要求してきたんだ。勿論村にそんな余裕はない、断ったら異端者だと言って村のみんなを・・・」
そこまで言ってジルは悔しそうにする。
ゾナーはお湯で薄めた葡萄酒をジルに渡しながら聞く。
「それで他の村の者は?」
「ほとんど殺されるか若い女は連れ去られた。俺は長老にこの事をゾナー様に伝えろって言われて逃げ出したんだけど追われて途中で川に落ちて・・・」
そこまで聞いたゾナーは側近のラガーさんを呼んで偵察隊を編成させジルの村を確認させるよう伝える。
「とにかく今はそれでも飲んで体を温めろ。ホリゾン側の領土だから大々的に動けないが生き残りがいれば保護する。」
そう言ってゾナーはティアナのもとへ来る。
「主よ、俺も様子を見に行ってくる。砦と町の守りを固めてくれ。ボナパルド、主の補佐を頼む。」
それだけ言うとゾナーはラガーさんを引き連れて行ってしまった。
ホリゾンの帝国軍が動いている。
しかも国境のすぐ近くで。
「ティアナ・・・」
「ボナパルド、砦と町の守りを固めて!私はアイミたちを連れてホリゾン側の砦に行きます。エルハイミ、シェル、ショーゴ準備を!」
そう言ってティアナも動き出す。
シェルはジルを心配そうに見てたがあたしたちが動くとジルに「良く休んでなさい!」と言ってついてきた。
ホリゾンの軍隊が動いている。
あたしは緊張しながらティアナについて歩き出すのであった。
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