第197話7-34試験場
7-34試験場
魔装具の作成が終わったあたしたちは師匠の許可を取って試験場でその性能テストを始める。
「それではシェルから始めましょうですわ!私がゴーレムを作成しますからそれを狙って攻撃してくださいですわ!」
あたしはそう言いながら鉄屑からアイアンゴーレムを作成する。
通常のロックゴーレムより強力でしかも防御力も高い。
通常の【炎の矢】程度では良いところ表面に傷がつくくらいだ。
「なんかゴテゴテしたゴーレムね?矢は今までつかっていたのでいいのかな?」
「はい、大丈夫ですわ。弓を引きながら精霊魔法を使うように魔力を込めてみてくださいですわ!」
シェルはこくりと首を縦に振ってから矢を弓に引かせる。
そして狙いを定めひゅっと小さな息を吐くと同時に矢を放つ!
矢じりには薄い赤の光がともっていてそれが放たれると同時に矢全体を包み赤の軌跡を描きながらゴーレムの眉間を貫く!!
スコーン!!
ぼっ!!
ばぁーん!!
「うあっ!」
「なにあれっ!!?」
射貫いた本人のシェルはもちろん横で見てたティアナも驚く!
眉間に見事に刺さった矢が燃えたかと思ったら爆発してゴーレムの頭部を粉々に吹き飛ばしていた!!
「なんという破壊力!エルハイミちゃんこれはどういう事ですか!?」
「これがこの魔装具の最大の特徴ですわ!矢じりの強化と命中後に内部からその魔力を暴発させて破壊すると言う二段構えですわ!シェル、次は風の魔晶石核を取り付けてみてくださいですわ!」
あたしに言われシェルは弓に風の精霊魔晶石を取り付ける。
すると弓自体が白っぽく色が変わる。
「色変ったよ?エルハイミ??」
「属性の魔晶石核に応じて色が変わりますわ!今自分が何の魔晶石核を装着しているか一目瞭然ですわ!」
シェルはまじまじと弓を見てから矢をつがえる。
そして先ほどと同じく狙いを定めゴーレムに矢を放つ!
今度は白っぽい軌跡を残し矢はゴーレムの右肩に命中する!
先ほどと同じくあっさりそれは刺さり矢全体が白っぽく輝いたと思ったら内部からかまいたちのように切れ込みが現れあっさりとゴーレムの右腕を切り刻みばらばらと落としていく。
「うわっ!これもまた強力な!!」
シェルは驚きの声をまたまた上げる。
あのアイアンゴーレムの腕がまるで豆腐でも切るかのようにすっぱりと切り刻まれたからだ。
『内部から破壊とは考えたわね?これなら刺さってさえしまえば防ぎようがないわね?』
「そうですわ、特に融合怪人は防御力が格段に上がっていたようですが内部からなら破壊できるはずですわ!」
あたしは指を立てシコちゃんにそう言う。
「さて、シェルはこんなもので次はショーゴさんですわ!まずはアサルトモードでお願いしますわ!!」
「わかった、主よ。『アサルトモード』!」
腰からアサルモードのコアを取り出し一旦頭上に掲げ腰のベルト中央ホルダーにカシャンと音を立てて装着して力ある言葉を放ちながら両腕を軽く左右に開き拳を握るポーズで装着をする。
なんか演出が決まった感じのポージングね?
生前テレビで見たヒーローものの強化装備のシーンを見ているみたい。
まあそれはいいや、さてと。
「それではショーゴさん、魔力活性をしながら両肩の筒をアイアンゴーレムに向けてくださいですわ。そして両肩に魔力がたまったと思ったら一気に放ってくださいですわ!」
「承知!」
そう言ってショーゴさんは両肩の筒をアイアンゴーレムに向ける。
体内の双備型魔晶石核を活性化して筒に魔力をためる。
たまった魔力がいっぱいになって筒の出口が光り始める!
「はっ!!」
短い気合と共にショーゴさんは魔力を放つ!
すると両肩の筒から光る弾が飛び出しアイアンゴーレムに命中する!!
ばしゅっ!
ひゅーんっ
ちゅどーーーんっ!!!
戦車の弾丸が命中したかのような爆発が起こりゴーレムが粉々になった!!
「うわっ!」
「なになにっ!!?」
「きゃっ!」
「おおおぅ!!」
『これはっ!!』
みんな驚きの声を上げている!!
「予想以上でしたわね!?流石双備型!ショーゴさん、成功ですわ!!」
あたしのその声に呆然としていた皆も我に返る。
「何あの破壊力!!?エルハイミ!あたしの矢なんてもんじゃないじゃない!!」
「それにどういった魔法ですかあれは!?知りうるどの魔法とも違います!エルハイミちゃん!!?」
「エルハイミ、これってショーゴにしか使えないの?」
口々に驚きの声を上げる。
確かにあたしも予想以上に強力なので驚いている。
ただ、これは連射が出来ない。
次の魔力充填に時間もかかるし、今回はたまたま命中したけど普通はあんなに簡単には当たらない。
あたしはショーゴさんの腕を指さしこう告げる。
「先ほどの物は遠距離専用で遠くに強力な一撃をくわえられますわ。ただ、連射は出来ず次の魔力充填にも時間がかかるのでほとんど牽制と思った方が良いですわ。それよりショーゴさんの両腕の筒の方が命中率が格段に上がりますわ!」
ショーゴさんはそれを軽く持ち上げて見る。
「これも使い方は同じなのか?主よ??」
「ええ、基本的には同じですわ。ただこれは一度に五発ずつ撃ち出しが出来ますわ!待って居てくださいですわ、もう一度アイアンゴーレムを作りますわ。」
あたしはそう言って右手を粉々になったゴーレムに向けて魔力を送る。
すると部材が集まってまた元のアイアンゴーレムの形に戻る。
「さあ、的のゴーレムが出来上がりましたわ、ショーゴさんお願いしますわ!」
先ほどより少し近づけさせたゴーレムにショーゴさんは右腕の筒を向ける。
そして短く気合の入った声を放つ!
「はっ!」
すると気合と共に右腕の二本の筒から交互に光の玉が五発ずつ、計十発がゴーレムに放たれる!
ちゅどどどどどっ!!!
ばふっぼふっぶすっげふっどすっっっ!!!
光弾は全弾ゴーレムに命中してゴーレムをぼろぼろにする!!
「何あれ!ゴーレムがほとんど原型留めていないじゃない!!?」
ティアナが驚く。
それもそのはず、せっかく元通りになったゴーレムがまたまたかろうじて立ってはいるがほとんど原型をとどめていない。
「主よ!すごいぞこれは!!」
心なしか声が上ずっているショーゴさん、嬉しそうだ。
「ここまでの破壊力とは・・・エルハイミちゃん、これもやはり双備型魔晶石核の力ですか?」
「ええ、それもありますが実際にはトリプル、三重魔晶石核とでも言いましょうか?双備型を超える力が発揮されているのですわ!」
あたしはショーゴさんのプロテクターの胸にはめ込まれている魔晶石核を指さす。
原理は双備型で魔力増幅をして精霊ごとの相性は関係なしにその魔力をプロテクターの魔晶石核で属性変換して攻撃の光弾に付与させる、魔晶石核の三重効果である。
これは改造を受け双備型魔晶石核を体内に持っているショーゴさんならではの効果で、シェルの弓にはできない。
「三重魔晶石核ですか?確かに双備型以上の力が生まれるはずですね!!すごい!」
アンナさんはきらきらした目でショーゴさんのプロテクターを見ている。
あたしはショーゴさんにもう一つの形態になってもらう。
「ショーゴさん、とりあえず今度はストライクモードになってくださいですわ!」
「承知した!『ストライクモード』!!」
やはり先ほどと同じく腰のストライクモードコアを頭上に掲げながら腰の中央ホルダーにコアを装着する!
すると一瞬輝いて今度は接近戦に特化したセブンソードのプロテクターに変わる。
あたしは今度は三体のアイアンゴーレムを作成して命令を出す。
「ゴーレムたちよ、ショーゴさんを攻撃しなさいですわ!ショーゴさん一度に三体を相手してくださいですわ!!」
「おうっ!行くぞ!!」
ゴーレムたちはショーゴさんを殴り潰そうと両腕を振りながら殺到する!
しかしショーゴさんは背中からなぎなたを引き抜きながら一閃する!
最初のゴーレムの腕を易々と切り落とし、返すその刃で今度は首をはねる!
一瞬動きが止まったそこへ別のゴーレムが襲いかかるがショーゴさんは慌てず肩から短剣を引き抜きその攻撃の腕を切り裂く!
なぎなたをそのゴーレムに投げつけながら肘の短剣を抜きそのゴーレムの首をはねる!
そして残った最後のゴーレムに両手の短剣を投げつけながら両腰後ろの短剣二本を抜きゴーレムに迫る!
短剣を投げつけられたゴーレムはその短剣を薙ぎ払うがそのころには既にショーゴさんは懐に入り両手の短剣でゴーレムに切りつける!
ほどなくゴーレムは切り刻まれ鉄塊へと変わった!
ショーゴさんはつゆ払いのごとく短剣を軽く振ってから腰にそれをしまう。
「ふむ、確かにこれは便利だ。動きを制約される事無く次々に攻撃をくわえられる。一撃一撃は素手の時より落ちるが手数が増えるのはいい。」
そう言いながらショーゴさんは短剣やなぎなたを回収し始める。
「複数の敵を想定した接近戦の為ですわ!必殺の一撃は時間がかかりますもの、手数を増やして時間を作りそこで魔力を溜めた必殺の一撃を放てれば融合怪人も倒せますわ!」
「それでも普通の短剣より切れ味が良いみたいだけどなんでなの?」
ティアナは切られたゴーレムの腕のを見ている。
「それがこの接近戦用セブンソードの特徴の一つですわ!この短剣やなぎなたには全部魔晶石核の属性魔力が付与されていますわ!ですから普通の剣より数段と切れ味が増しているのですわ!」
魔力を切れ味に変換するこのセブンソードは鉄くらいなら簡単に切り裂くだろう。
こうして出来上がったカスタム魔装具は想定以上の効果を発揮した。
これでもうジュメルに後れを取る事は無い!
あたしたちは新たな力を手に入れたのであった。
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