第196話7-33魔装具
7-33魔装具
「エルハイミちゃん、一体何を始めるのですか?」
アンナさんのその質問にあたしは人差し指を立てて話始める。
「ジュメルが戦力強化しているお話はしましたわよね?こちらの技術を使って融合怪人やブラックマシンドールと言う従来では考えられなかった事をしてきましたわ。なので私たちも相手が想定する以上の戦力強化をしますわ!それが魔装具のカスタマイズですわ!!」
「魔装具のカスタマイズ?」
「どういう事よ、エルハイミ?あたしもその魔装具着込むって事??」
「主よ、俺にもあの鎧を着ろと言うのか?」
みんなアンナさんの魔装具を着込むことを考えているみたいだ。
でもあたしが考えるそれはちょっと違う。
「シェルには魔装具の弓矢を、ショーゴさんには換装が可能な多目的プロテクターをですわ!」
そう言い切りあたしはプランを黒板に書き始める。
シェルには魔装具の弓矢で弓自体に魔晶石核を取り付け、しかも状況によってその魔晶石核が交換できるようにしたものを。
ショーゴさんは戦闘形態の異形の兜の戦士になった後、以前アンナさんが作った一瞬で着替えが出来るブローチの技術を使って接近戦強化型、中遠距離攻撃型の強化プロテクター装備を考えた。
「シェルは最大の弱点であった攻撃力がこれで格段と上がりますわ。通常の矢が常に魔力付加されるのですから。更に魔晶石核を交換することによってその性質自体も変えれますから、例えば炎に弱い敵には火の精霊の魔晶石核を取り付ければ矢は炎の性質の攻撃力を持った矢となるのですわ!」
「つまり常に適した魔力付加の矢が放てるという事ね?」
どうやら理解してもらえたようだ。
「俺はどういう事になるのだ、主よ?」
「ショーゴさんの戦闘形態は基本的に素手で戦うスタイルですわ。でも強力な攻撃をするには双備型の魔力循環活性をしながら両手両足の魔晶石を起動させる必要が有りますわ。それは強力な破壊力を持ってはいるもののどうしても溜めの時間がかかってしまいますわ。そこで強化装備で対処する考えですわ!接近戦強化では装備された武器を使いながら、中遠距離では装備された飛び道具で相手を撃破するのですわ!!」
ちょとした絵を黒板に描きながら説明を続ける。
それとシェルの器用さとデザイン性を考えて通常私たちが着こんでいる衣服の強化も考えている。
それは学園都市ボヘーミャの制服である。
あの対魔法防御の性能はぴか一だ。
その技術も追加すれば対魔法の防御力も上がる。
アンナさんが以前作った瞬間に衣服が交換できるあの技術は素晴らしかったし、仕様のデザインは別として性能自体は十二分だ。
今後の事を考えるとあたしたちはあたしたちに合った強化をするべきだ。
「さっそくシェルの弓から始めましょうですわ!アンナさん、ミスリル合金は都合してもらえますの?」
「ええ、素材自体は余裕が有るので問題ありません。」
そう言ってミスリル合金の塊を出してくれる。
それと小さな魔晶石も数個準備する。
まずは魔晶石に魔法を封じ込め、魔力を込めて使うたびに魔晶石核の属性を矢に付加するようにさせる。
補助的な魔法を封じ込めたモノも一緒に準備していよいよ錬成を始める。
「行きますわよぉ!【錬成魔法】!!」
あたしは魔力を込めてこれらを錬成する。
それらは輝き一つの形に変わっていく。
ほどなく弓の格好になり輝きを落ち着かせる。
「シェル、出来ましたわ!持ってみてくださいですわ!」
「どれどれ?」
シェルはあたしが作った弓をひょいと持ち上げる。
そして重心やら弓の張り具合、しなり具合を確かめてから矢が無い状態で引っ張ってみる。
パッと離した弦はひゅんっと気持ちいい音を立ててピタッと張られた位置で止まる。
「うん、好いわね!ブレも無いし張り具合もいい感じ!それに一番はすごく軽いのにしなりがいいわ!!」
あたしは魔晶石を取り出しシェルに水と風の精霊を呼び出させ魔晶石核を作る。
既にここには沢山ある火の魔晶石核もシェルに預け後で試験場か何かでテストさせてもらおう。
「流石ですね、エルハイミちゃん。見事な錬成です。」
「まだまだですわ!アンナさん、次行きますわよ!」
そう言って同じく魔晶石に魔法を封じ込めてから補助魔晶石を準備してミスリル合金と錬成を始める。
出来上がった二体のプロテクターをアンナさんにお願いして例のブローチに封じ込める。
ちょっと形状が女の子向けだったので錬成で少し形を変える。
それと戦闘形態時に邪魔になりそうにない場所、そう腰回りにベルトのようにして装着できるようにした。
「出来ましたわ!さあショーゴさんさっそく試してみましょうですわ!」
「主よ、戦闘形態になる方が良いのか?」
「そうですわね、出来ればその方が確実ですわ。お願いしますわ!」
あたしはそう言ってショーゴさんを見るといきなり服を脱ぎ始めた!!
「きゃぁつ!」
「落ち着いて見ると凄い状態よね?」
『まあそのままじゃ衣服が破けてしまうものね?』
「それでも女しかいないところでいきなり脱がれるとね・・・」
最後のティアナの言葉にショーゴさんはパンツに手をかけた手をぴたりと止める。
「あー、なんだ、主よ。気になるならむこうに行って戦闘形態になってから戻ってくるが?」
「ここまで脱いだのだから気にしなくて大丈夫ですわ!もう見慣れましたしですわ!!」
びっと人差し指を立てるあたしにちょっと複雑な表情をしてからショーゴさんはパンツを脱ぎ去って戦闘形態に変身する。
まあ脱がれてもついていないから大丈夫なんだけどね?
それでも女性陣はみんな顔を赤らめている。
さてと。
「それではショーゴさん、このベルトを腰につけてくださいですわ!」
ショーゴさんは言われたとうりに腰にベルトを装着する。
中央にあるホルダーに腰の左右に取り付けられたブローチだったものを装着させる。
「ブローチ、いえ、呼びにくいのでコアとでも呼びましょうか?それを取り出しベルト中央のホルダーに差し込んでみてくださいですわ。」
「こうか?」
ショーゴさんはコアをベルト中心部のホルダーに装着する。
すると魔晶石が起動してナビゲーションが立ち上がる。
「Are you ready?」
「うおっ!?何かしゃべったぞ主よ!!?」
「大丈夫ですわ!ショーゴさん承認の力ある言葉、パスワードになりますが『ストライクモード』と言ってみてくださいですわ!」
ショーゴさんは聞きなれない言葉をそのまま復唱する。
「す、すとらいくもーど!」
するとショーゴさんが一瞬ひかり、先ほどあたしが作ったプロテクターを身にまとう!
おお~っ!
歓声が上がる。
よしっ!
うまく行った!!
「ショーゴさん、今のプロテクターは接近戦を想定しています。両肩両肘、腰の後ろに二本ずつ短剣が装備されています。そして背中の棒ですが、両方から刃が出るなぎなたですわ!セブンソードになりますわ!更に胸中央にあるくぼみに魔晶石を装着するとこれらの武器がその魔晶石の精霊の属性の力を付与されますのですわ!!」
ショーゴさんはまず背中の棒を引き抜くき両刃を出す。
それを軽く振り回してみる。
「うむ、これはいいな、取り扱いにもう少し慣れが必要だが切り込んだ返しですぐにまた切り込めるな!」
そしてそのまま今度は開いた手で腰から短剣を引き抜く。
逆手に持ちながら二刀流に構えてみる。
「悪くない、この鎧も武器も軽く振った感じにブレが無い!流石主だ!」
そう言ってショーゴさんは満足そうに武器をしまう。
あたしはそれを見て次の指示を出す。
「それでは今度はコアを入れ替えてみましょうですわ!ストライクのコアをもとに位置に戻してから反対のコア、アサルトモードのコアを中央に装着してくださいですわ!」
ショーゴさんは言われたとうりに今度は反対に取り付けられているコアを中央のホルダーに装着する。
「Are you ready?」
再びナビの声がする。
「今度は『アサルトモード』と言ってくださいですわ!」
「あ、あさるともーど!」
またまたショーゴさんが光ってすぐにその姿が変わる。
今度は両肩に筒を担いで両腕にも二本ずつ筒がついている。
「主よ、今度のこれはなんだ?両肩両腕に何やらついていて動きにくいぞ?」
「その筒は魔力を込めるとそこから精霊ごとの力を帯びた矢が飛び出す仕掛けになっていますわ!!」
あたしはそう言って説明を続ける。
「遠方にいる敵には両肩の筒から出る大型の矢で攻撃が出来ますわ。但威力はあるものの連射が出来ませんので魔力を貯めて一気に放出する必要が有りますわ。逆に両腕の方は連射が五発まで可能ですわ。その分威力と飛距離は短くなってしまいますが片腕の連射が終わればもう片方を連射してその間に撃ち終わった方を魔力補充してまた撃ち出すと言う事が出来ますわ!」
「それってあたしの矢とどう違うの?」
「ショーゴさんのはショーゴさん自身の双備型魔晶石核から魔力供給をしますわ!ですので完全に魔力で作った矢になりますわ。ただ命中精度より牽制や広範囲の攻撃が主な目的なのでシェルのような精密で強力な攻撃が出来ないのですわ。」
『これまたずいぶんと凄いものを作ったわね?ガーベルたちでさえこんなのは思いつかなかったわ。』
シコちゃんに言われてあたしは内心ちょっとうれしかったりもする。
アンナさんも唸っているけど「流石ですね。私ももっといろいろ頑張らなければですね!」とか言っている。
と、あたしは魔晶石核のホルダーが少ないのに気付いた。
将来の拡張性を考えるとやはり腰のベルトに装着するのが良いかな?
「主よ、これはすごいな、一気に戦力が増強されたぞ!」
「そうですわね、そうだショーゴさん、魔晶石核を取り付けるホルダーを増設しますから、一旦そのベルトを外してくださいですわ。」
そう言ってベルトを外すとアサルトモードのプロテクターも元のコアに戻ってしまい消えて無くなる。
ショーゴさんはあたしにベルトを手渡すがその瞬間にシェルがもぎ取って行ってしまう!?
「ちょっとあたしもやらせて!面白そうだから!!確かこうだったわよね?『アサルトモード』!」
「あっ!ちょっとシェルやめなさいですわ!!でないと大変な事になりますですわ!!」
しかしすでに装着しながらパスワードを言ってしまったシェルはすぐに光り輝きプロテクターだけを装着した姿で現れてしまった!!
「どう?似合うかしらぁ?・・・って!なんであたし裸なのよ!!これどういう事よ!!?」
間に合わなかった。
ビキニアーマーなんてもんじゃない。
お尻や大事な所は丸見え、胸はプロテクターに隠れているけどぶかぶかだから貧相な胸も相まって横から簡単にのぞき見える。
「だから言ったのですわ、大変な事になるって言ったのですわ!!」
思わず大事な所を手で隠しながら内股になるシェル。
「も、もう恥ずかしいわよ!!あたしの服は何処よ!!?」
それを聞いたアンナさんは「あっ!」とか言っている。
そう、基本はアンナさんの作ったブローチと同じだから着ていた物がコアの中に入っている。
解除すると服は出るけど出るだけで着せてはくれない、素っ裸のままになる。
ショーゴさんのように変身しているならまだしも、これは乙女には絶対に使えない装備なのだ!!
「あ、危なかったぁ、あたしより先にシェルが手を出してくれて助かったわ・・・」
ティアナ、やはりあなたも試してみたかったのね?
でも、双備型魔晶石核が無い普通の人にはただの鎧にしかならないよ??
「とにかくあたしの服うぅぅぅっっ!!!」
シェルの切実な悲鳴がこだましたのであった。
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