第193話7-30連合会議
7-30連合会議
あたしとティアナは久しぶりにボヘーミャに来ていた。
「しばらくぶりだけど特に変わってはいないわね?」
校舎の大通りを歩きながらティアナは周りを見渡す。
ここは色々が有った想い出の場所。
今のティナの町の運営を当時あたしたちがすると知ったらどんな顔をしただろう?
過ぎ去る学生のチェック柄のスカートを見ながらあたしは思う。
「先に師匠に挨拶に行きましょうですわ、ティアナ。」
「そうね、しばらく厄介になるのだものね。」
あたしたちは師匠の所へと向かった。
* * * * *
「元気そうで何よりです。変わりはありませんか?」
「はい、おかげさまで元気にやっております。」
「師匠もお変わり無いようですわね?」
久しぶりの緑茶を飲みながらあたしたちは学園長室にいる。
師匠は多忙なはずだがあたしたちが来たと聞くとわざわざ時間を作ってくれた。
「それで早速なのですが、連合会議の方はどうですか?」
「現状は問題ありません。」
そう言って師匠はお茶をすする。
「そうですか、良かった。それで師匠、もうアンナから話は行っていると思いますがジュメルについて。」
一瞬ぴくっと動いたが静かにお茶をすする師匠。
ティアナは一度あたしを見てうなずいてから続きを話し始める。
「ヨハネス神父の事は師匠はご存じでしょうか?それとあたしたちに刺客が送り込まれました、ダークエルフの。」
師匠は静かに湯のみを置いた。
「大まかな事はアンナから聞いています。まずそのヨハネス神父と言う人物については初めて聞きました。ホリゾン帝国やルド王国、ノージムでも知人、友好関係の者を介しても初めて聞く名でした。」
そして師匠は資料を取り出す。
結構分厚い資料は表紙に「秘密結社ジュメルに関する資料」と書かれていた。
「これは今までの情報や連絡の有ったものをまとめた資料です。既にガレント王国の分はアンナに渡してありますがあなたたちにも必要となるでしょう。」
そう言って渡された資料に目を通すとかなり事細やかな事が書かれていた。
組織の予想規模からその財源に関与されると予想されるもの、目撃されたゴーレム、魔怪人、融合怪人にあたしたちも初めて見る新型マシンドールの資料まである。
「すごいですわ!これほどの情報が!!?」
「ファイナス市長や知人たちには感謝です。それとこちらに情報提供してくれた元貴族にもですね。」
貴族が情報提供?
どういう事だろう??
「ジュメルに関与していた貴族ですの?」
「元貴族ですね。ジュメルと言うよりジュリ教信者でした。代々ジュリ教を信仰していたのですが今の代になって考えが変わったようです。ジュリ教はやはりジュメルの元母体でそこから優秀な信者が今も『特別:スペシャル』と言われジュメルに参加させられています。」
すごい。
そんな事までつかんでいるのか、師匠は!!?
「すごいですね。これで連合軍が出来ればジュメル壊滅も夢では無いですね!?」
「そうもいかないのですよ、ティアナ。組織の根は深く、全世界に及んでいます。確かに北に今は集中していますが、東のイージム大陸にも不穏な動きが有ります。またホリゾン帝国が昨年の末より今後ボヘーミャへの融資や留学を取りやめると通知が有りました。」
ホリゾンが?
それにイージム大陸で??
あたしとティアナは思わず顔を見合わせる。
本陣は乗っ取りが終わっていたホリゾン帝国にあるとずっと思っていたけど、どうやら甘い考えだったようだ。
「今わかっている一番重要な事は組織の上層部となる『十二使徒』が中心になり『女神の杖』を集めていると言う事ですね。イージムのある国もどうやらかなりジュメルに侵食されているようで、今回の連合に不参加となりました。」
「本当に厄介ですね・・・」
「仕方ありません。今は早期に連合をを立ち上げ一つづつ潰していくほかありませんからね。それとダークエルフについてですが、イージムに有ったダークエルフの里がなくなっていたそうです。」
ダークエルフの里が無くなっている??
自滅したわけは・・・・ないか。
そうするとどういう事だ?
「各国の遺跡襲撃の折にダークエルフを見たという証言が出始めています。おそらく里を捨てて世界中に散らばったのではないかと思われます。
「里を捨ててまでですか!?」
驚くティアナ。
しかし師匠は新しいお茶を注ぎながら話を続ける。
「十二使徒はどうやら私と同じのようです。『時の指輪』をしているそうです。」
師匠のその言葉にあたしは驚く!
そんな、エルフの裏切り者がいるの!!?
いや、ちょっと待て?
ダークエルフ??
まさかっ!!?
「師匠、まさかダークエルフが『時の指輪』を生み出したのですの!!?」
「おそらく。里を破棄したもう一つの理由と思われます。『時の指輪』を生み出した者をそのまま里に残すわけにはいきませんからね。」
とうとうジュメルは本腰で動き出してきたと言う事か?
「とにかくあなたたちも十分に注意なさい。ここから先は本格的にジュメルとの戦いになります。」
師匠に言われあたしたちは静かにうなずくのであった。
* * * * *
ボヘーミャにあるガレント大使館にあたしたちは来ていた。
「お久しぶりです、殿下。お変わり無いようですな?」
「フィメール殿しばらく厄介になります。ところで父は何処ですか?」
今回の連合会議にはうちのガレント王国よりアコード王子が出席する事となっている。
既にアンナさんに連れられてこちらに来ているはずだが姿が見当たらない。
「王子でしたらアンナ殿と研究室のはずですが?新規に依頼した魔装具の試作が出来たとかで見に行っているはずですが?」
魔装具?
また何か開発したのかな?
ちょっと気になるけど後でアンナさんに聞いてみるか?
「そうですか、分かりました。それより三日後の連合会議の方は?」
「我が国が全面的に協力しております、十二分に。」
自信満々の様子なので大丈夫だろう。
貸し出したマシンドールやアイミたちも今はここボヘーミャにいる。
たとえ融合怪人が出てもグランドアイミがいれば何とかなるだろう。
あたしたちはちょっとだけ安堵の息を吐いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
三日後、連合会議は満場一致で成立して連合軍が立ち上がった。
魔法騎士が中心となる各国の精鋭部隊が対ジュメルに関しては国境を無視して動けるようになり、参加国は連合軍に協力する事となる。
初代連合軍将軍にガレントの第一王子であるアコード様が就任してこれからますます忙しくなる。
「でもすんなり終わってよかったわね?」
「そうですわね、何もなかったのが意外でしたわ。」
「やだよ、また矢の効かない怪人相手の戦闘なんて!!」
「そうそう、それですが皆さん後で私の研究室に来てください。試作機ですが面白いものが出来ましたので。」
アンナさんに言われてあたしたちはその試作機とやらに興味を持つ。
前にアコード様が見に行っていたと言うやつだろう。
何だろうね?
と、会議も終わり宴の準備が始まった時だ!
一人の男性が慌ててアコード様に近寄り伝令の連絡書を取り出し渡す。
アコード様はそれをすぐに開いて読みだす。
そして・・・
「なんという事だ!!?本気か!!?」
アコード様の怒気が含まれたその言葉に会場にいた皆が注目するのであった。
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