第194話7-31ホリゾン布告
7-31ホリゾン布告
会場にいた人々はアコード様が吐き捨てた怒気の含まれた言葉に注目する!
「いったい何が有ったのでしょうか?アコード将軍?」
凛とした良く通る声の師匠がみんなの疑問を代表して聞く。
アコード様は書面から目線を会場の人々に戻し、巡らせてから重々しく話始める。
「先ほど正式に布告が出たそうだが、北のノージムにあるホリゾン帝国が正式に国教であるジュリ教の迫害を懸念し、今後要請が有ればジュリ教の保護の為迫害を行う国に対して聖戦を仕掛けるとのことだ!!」
ざわっ!!!
「それは真ですかアコード将軍!?」
「ホリゾン帝国が聖戦を仕掛けると!?」
人々は口々に疑問を言う。
それもそのはず、軍事国家としてその力を国内外に誇示してきたホリゾン帝国が正式に布告してきたのだ。
「お静かに!皆さんお静かに!!」
そのざわめきがこれ以上大きくなる前に師匠が自粛を促す。
「ここにお集まりの皆様もご存じの通り、連合軍は今後ジュリ教と協議を行いながら秘密結社ジュメルに対抗する組織、ホリゾン帝国に正式に各国のジュリ教が要請を出さない限り大事にはなりません!」
ざわざわ・・・
確かに大義名分がなければホリゾン帝国の保護を理由に仕掛ける聖戦は各国の支持を受けられないだろう。
場合によってはホリゾン帝国は一度に近隣諸国と戦争になるやもしれない。
そうなればいくら強大な軍事力を持つホリゾン帝国だってただでは済まない。
「皆さん、我々連合軍はジュリ教とも協議を行う組織、各国のジュリ教との協議に必要とあらば参加いたします。我々とてジュリ教を迫害する気など毛頭ありません!」
アコード様のその言葉に小さなざわめきは残るもののとりあえずはこの場は収まる。
そして様々な思惑が残ったまま連合結成の祝いである宴が開かれていくのであった。
* * * * *
「あー、最悪だったわ!!とてもじゃないけど結成祝いの気分じゃなかった!!」
ドレスを脱ぎ捨てながらティアナは苛立っている。
給仕のメイドの前でも思わず地が出てしまうティアナ。
「ティアナ、気持ちはわかりますわ。でも今はアコード様たちに任せるしかありませんわ。」
あたしも宴用の魔術師の格好からいつもの服装に着替えていた。
「でもこれでホリゾンはいつでも言いがかりで攻めてこれるって事でしょ?」
シェルもせっかくのきれいなドレスを脱ぎ捨てて下着姿になっている。
奇麗に結い上げた髪の毛を自分でほどく。
透明な金髪の髪の毛がさらさらと広がっていく。
しかしその瞳はいらだちの色を濃厚に漂わせていた。
「まさか連合の結成を狙って布告してくるとは、こちらの足並みをそろえさせない意図があからさまですね。」
アンナさんは宮廷魔術師のかっこうのままだが布告された内容をもう一度読み直している。
しかしそうなると真っ先にその矛先はガレントに向けられるだろう。
ガレント王都のガルザイルでジュリ教の神殿が襲われ多数の死傷者が出た話は記憶に新しい。
この件でガルザイルのジュリ教は閉鎖され事実上ガルザイルにはジュリ教がなくなってしまった。
一番近かった衛星都市ユエナのジュリ教は街の住人でさえその存在を知らなかったという程度なので無いも同然だった。
そうするとこのガレントではほぼほぼジュリ教自体が存在しない事となる。
「この件とは別に連合軍には既に水上都市国スィーフから既に出兵要請が出ています。」
みんなが着替え終わる頃アンナさんが驚くことを言ってくる。
「スィーフが要請?またずいぶんとホリゾンから離れた所よね?」
「はい、エルフの森を抜けたサージムの南にある湿地帯、ここにいるリザードマンたちと最近ごたごたが有るそうです。リザードマンたちは女神ジュリ様の信徒。直接ジュリ教とは関係ありませんが問題になっているようです。」
女神戦争の折、リザードマン族は女神ジュリ様に従っていた。
なので彼らは今でもジュリ様の従者と言う事を誇りにしている。
水上都市国スィーフはその昔ガーベルと共に襲い来るリザードマンを撃退し、双方領域を犯さない誓いを立ててたはずだ。
しかしそこでいざこざとは。
「アンナさん、そのごたごたと言うのは具体的にどういった事なのでしょうかしら?」
「人族のジュリ教信者がリザードマンの領域に神殿を立てているとのことです。リザードマンの代表は自分たちには自分たちの方法でジュリ様を祭るから人族の神殿は不要だと。しかしジュリ教の信者たちは一部のリザードマンを取り込み共に神殿の建設をしているようです。」
人族が神殿の建設を?
なんかものすごくジュメル臭がする!!
「あからさまに怪しいわね?ジュメルが関わっていそうね?」
「ええ、それなのでスィーフにしてみれば放っておくわけにはいきません。リザードマンの族長もその考えには賛成なので場合によってはジュリ教との戦闘になるかもしれません。それなので初仕事として連合軍はスィーフに行く事となるようです。」
「そうすると、北はあたしたちティナの町が重要か・・・ あたしたちがいればホリゾンの軍隊位なんとかできるわね?」
強気のティアナ。
まあ実際人間相手だけならそうなんだけどね。
「それより明日は私の研究室に皆さん来てください。グランドアイミをヒントにアコード様から要請のあった魔装具が出来上がりました。是非とも皆さんにも見てもらいたいですね!」
会心の笑みを見せるアンナさん。
どうやらかなりの物が出来上がったようだ。
あたしたちは快諾して明日はアンナさんの研究室に行く事となったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます