第110話5-16ノルウェンに出発
5-16ノルウェンに出発
陛下の計らいで開かれた宴はこれからノルウェンに向かうあたしたちの為に豪華な食事を準備していてくれた。
相変わらず豪快な食いっぷりだなぁ、ロクドナルさん。
あたしは一緒に獅子牛の丸焼きを食べているが、ティアナはアテンザ様にくっつかれて大変のようだ。
「ティアナ、陛下からお許しが出ました。これで私もあなたたちに正式に同行できます。」
「えっ、本気で同行なさるおつもりでしたの!?」
「当然です。いつ私が冗談を言いましたか?」
心底嫌そうな顔をしてからあたしの方を見るティアナ。
あたしは両手を軽く上げてお手上げのポーズをとる。
それを見たティアナはがっくりとうなだれて肩を落とした。
明日にはノルウェンに出発しなければならないからしっかり食べて今日は早めに休まないといけない。
あたしは宴もそこそこの時間に早めに引き上げ、久々に技術開発部に顔を出す。
そこにはアイミそっくりのマシンドールたちがいた。
この子たちは魔晶石核を双備型魔晶石核に換装しているところだった。
「お久しぶりですわ、皆様、お元気でしたかしら?」
あたしが挨拶すると数人の研究員が挨拶を返してきてくれる。
「エルハイミさん、お久しぶりです。これすごいですね、双備型魔晶石核!」
研究員の一人が興奮気味であたしに挨拶してきてくれる。
「ところで、北方の前線の換装はどうですの?ボヘーミャからは予定より先行で双備型が入っていると思いますが?」
「ええ、双備型魔晶石核は間に合っているのですが、ユーベルトのパーツが間に合っていないんですよ。双備型を収めるための胸部パーツが変更されているのですがもともとスペース的にきついんですよ。」
そう言う研究員にあたしは量産型マシンドールを見せてもらう。
細かいところの機構とかはよくわからないけど、素人目にも分かる、なるほど胸部パーツはぎっしりだ。
ここに倍近くなった魔晶石核を収めるのは確かに厳しい。
と、カバーの形状を見てあたしは思う。
「あの、もしよかったらこのカバーを魔法で少し形状変化させてもよろしいかしら?」
「え、形状変化ですか?まあ、エルハイミさんならいいか。どうぞ。」
そう言って研究員がカバーパーツを渡してくれる。
あたしはそれを【創作】魔法で変形させ研究員に渡す。
「こ、これは!?」
その形状に驚く研究員。
しかし即座に現在換装中の機体に取り付ける。
「これならかなり余裕ができる!エルハイミさん、流石です!」
もともと女性型のマシンドール、多少胸が大きくなっても問題はないだろうと胸部のふくらみを大きくしてみたらやはり余裕スペースが出来て双備型魔晶石核がきれいに収まった。
「早速今後のパーツはこの形状で発注をかけましょう!これなら簡単に換装できる!」
大喜びの研究員、あたしはにっこり笑ってもう一度挨拶してからこの部屋を後にした。
これで北側の防衛強化は進展するね。
安心して体を清め、あたしは割与えられた部屋で早めに就寝したのだった。
* * * * * *
「エルハイミ、エルハイミ!」
小声であたしを呼ぶ声がする。
誰だろうと思い、眠い眼を開くと、キャミソール姿で髪の毛を乱したティアナがいた。
「どうしたのです?ティアナ?」
「しっ!姉さまから追われているのよ!!」
そう言ってティアナはあたしの布団の中に隠れる。
ちょうど隠れたころ、あたしの部屋の扉がガチャリと開き、ネグリジェ姿のアテンザ様が入ってくる。
その顔は妖艶な笑みを張り付かせ、高揚した表情には肉食系の瞳がきらめいていた。
両手はワキワキと動き、美しい声なのに何故か黄泉の世界にでも誘うような声でティアナを探す。
「ティアナちゃ~ん、怖くなんてないわよ~。痛いのは初めだけ、すぐに良くなるから~。
お姉ちゃんにすべて任せなさ~い。」
「ひっ!?」
布団の中のティアナが小さく悲鳴を上げる。
「あ、アテンザ様ですの?」
「あら?あなたは確かエルハイミさん?おかしいわね、ここにティアナが逃げ込んだように見えたのだけど?あなた、ティアナ知らない?」
布団に隠れたティアナはあたしの手をぎゅっと握っていた。
なんなんだろう?
「え、えーと、アテンザ様、ティアナ殿下はここへはいらっしゃってはおりませんわ。」
「あら、そう?見間違えかしら?まあいいわ、夜はこれから。今晩こそは逃がさないわよ!邪魔したわね。」
そう言ってアテンザ様は部屋から出てった。
あたしはしばし間を置き、完全にアテンザ様の気配が無くなってからガタガタ震える布団の中のティアナに声をかける。
「もう大丈夫ですわ、アテンザ様は行ったみたいですわよ。」
「ほ、本当?ふあぁー、やばいよ今の姉さま、本気で犯されるかと思ったわ!」
おいおい、何しようとしてんのよ!?
あたしはもう一度扉を見てしまった。
「いったい何があったのですの?」
「胸のマッサージよ。本当はエルハイミにやってもらうつもりだったのに何故か姉さまがやるって言いだして強引に始めたのだけど、ものすごくやる気で胸のマッサージ以外もいろいろされそうになって逃げだしたのよ!」
おい姉、胸のマッサージ以外に何しようとしたんだ、実の妹に!
あたしは思わずため息をついてしまった。
しかしティアナはだいぶ安堵したようで、キャミソールをはだけその可愛い胸をさらけ出す。
「姉さまの事は置いといて、エルハイミ、今日の分お願い。あたしやっぱりエルハイミが良いの。」
そう言って覆いかぶさってくる。
こらティアナ、これじゃちゃんとマッサージできないでしょう!?
しかしティアナはそのままあたしの胸の上に顔をぽてっとうずめて動かなくなる。
どうしたのよ?
そう思って彼女を見ると安心しきった顔で寝息を立てている。
あれ?
可愛らしい顔に近づいてみるとちょっとお酒臭い。
まさか、宴でお酒飲んでたの?
「ティアナ、ティアナ。」
ゆすっても起きない。
あたしは仕方なく半裸のティアナに押し倒されたまま一夜を過ごすこととなった。
◇ ◇ ◇
「う~ん、昨日はようく眠れたわ!」
「ええ、そうでしょうね・・・」
あたしたちは今ノルウェンに向かう馬車の中にいる。
馬車の中にはあたしとティアナ、それとロクドナルさんとアイミ、マリアがいる。
出発する寸前に向こうの馬車のティアナがこちらに逃げ込んできたのだ。
あちらの馬車にはアテンザ様とアンナさん、それとマース教授がいる。
アンナさんとマース教授はアテンザ様に今回買い付ける魔結晶石について説明をしている。
購入の交渉に参加すると言った手前、アテンザ様はこちらに逃げ込んだティアナを追う事が出来ずおとなしく向こうの馬車で説明を受けている。
なので今はこちらの馬車でティアナはご機嫌でいる。
昨晩は結局お酒の入ったティアナは朝までぐっすりあたしの上で寝ていた。
しかしその、寝相が悪く、寝ているティアナはあたしの体の敏感な所とかを執拗に触るのであたしはほとんど眠れなかった。
おかげで太陽が黄色く見える。
寝不足の頭であたしはふらふらしながらティアナを見る。
ティアナはご機嫌でこちらを見てこういう。
「またエルハイミと一緒に寝りたいわ!よく眠れるもんね!!」
馬車に揺られながらあたしは思う、今晩だけでもいいからちゃんと眠らせてっと!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます