第101話5-7土の精霊

5-7土の精霊


 ソルガさんの協力で土の精霊の魔晶石核作成が出来ることとなった。



 食堂であるここで魔晶石核の作成をする訳にはいかない。

 なので部屋に戻ってやろうという話になったのだが、肝心の土の精霊がすぐ呼び出せないとのことだ。


 「部屋の中で土の精霊を呼び出すには媒介が無いと出来ないのでな、明日準備してくるがそれでもいいか?」


 ソルガさんの話だと属する媒介が無いと呼び出しても来てくれないことの方が多いらしい。

 確かにソルミナ教授の講義でもその辺は話していたので、こういったことは仕方ない。


 

 「じゃあ、明日午前中にお願いします。あたしたちはこの後はせっかくなので街の方を見て回ります。」


 「そうか、では明日の午前中にまた尋ねるとしよう。」


 そう言ってソルガさんは席を立つ。

 ユグリアの案内はお前がしてやれとか言ってソルミナ教授を指名する。

 そして準備があるから失礼すると言って宿から出て行ってしまった。


 あたしたちは仕方なしにソルミナ教授に街を案内してもらう事にした。


 

 ◇



 開けて翌日。

 昨日は女子会で眠るのが遅くなった。

 主にソルミナ教授を捕まえてソルガさんの何処が良いのかとか、的を得ない長話できゃっきゃ、うふふしまくった。

 

 最近ティアナはこういった話がだいぶ好きになってきたようで、もともとこういう話が好きなアンナさんと相まって昨日は最後の方がソルミナ教授が可哀そうになってくるほどだった。

 

 まだ少し眠い眼をこすりながら顔を洗い身支度をして女子組は朝食を取りに下の食堂に行く。


 「おはようございます殿下。それに皆さん。」


 既に下の食堂で朝食をとっていたロクドナルさんはあたしたちが下りてきたのに気付き挨拶をしてくれる。


 「おはよう、相変わらず早いわね、朝稽古?」


 「おはようございますですわ。」


 「おはようございます。」


 「お、おはようございマス。」


 ソルミナ教授はがっくりしていた。

 昨日の女子会で人間社会でも兄妹間で婚姻をする風習はない事を告げてから落胆している。

 どうやらこっちの世界に望みを託していたらしい。


 あたしたちは朝食を頼んで席に座る。

 

 「しかし、流石こちらの国に来ますと住人たちも変わりますな。」


 ベーコンをモリモリ食べながらロクドナルさんは昨日の事を話す。

 この街でも珍しいらしいが、リザードマンの冒険者がいたのだ。

 亜人編成のパーティーと言えばいいのか、リザードマンやエルフ、ドワーフも加わったパーティーだった。

 間近でリザードマンを見るのは初めてだったけど、意外と温和な個体だったらしく気さくに話しても問題なかった。


 そんな話で盛り上がっていると、意外と早い時間にソルガさんは来てくれた。


 「ふむ、まだ食事中だったか。早すぎたかな?」


 「いえいえ、もう食べ終わりますからちょうどよかったですよ。」


 アンナさんがソルガさんの為に果物の飲み物を注文する。

 あたしたちはソルガさんが持ってきた鉢植えが気になっている。


 「ソルガさん、その中に土の精霊がいるんですか?」


 ティアナの質問にソルガさんは軽く笑う。


 「いや、この鉢植えは土としての生命力が強く、ノームを呼び出す媒介には最適なんだ。この中にいるわけじゃない。」


 「ティアナさん、講義の中でも言いましたが精霊はその属する媒介の生命力や活性率が高い方が帰属し易いのですよ。」


 ソルミナ教授が以前の講義の事を持ち出す。


 「ソルミナが教えているのか?ではもう少しちゃんと理解させるようにしなければダメではないか。」


 「うう、わかっていますよ。」


 ソルガさんに良い所でも見せようとしたのが上手く行かず指摘されてしまっているソルミナ教授がへこんで知る。

 藪蛇だねぇ~。


 「では、そろそろ始めるか。」


 あたしたちは魔晶石核の融合を始めるのであった。


 ◇


 「融合とはすごいものだな、完全にノームが魔晶石に封じられて安定しているな。こちらの世界でここまで安定している状態を見るのは初めてだよ。」


 融合の一連を見ていたソルガさんは出来上がった魔晶石核を見ながら感嘆の声を上げていた。

 

 鉢植えの土を媒介に合計で三体の土の低級精霊ノームを呼び出すことが出来た。

 あたしたちはその精霊を手際よく魔晶石と融合して当初の目的を達成したのであった。


 「でももっとすごいのは共鳴させると精霊と会話できるんですよ、兄さん」


 「何っ!?精霊と会話だと!!そんなことが出来るのか!?」


 驚くソルガさん。

 

 「ええ、出来ますとも。短い時間ですがはっきりと会話できるんですよ。」


 ソルミナ教授はその薄い胸を張って偉そうに話す。

 前に聞いたけどエルフにとって精霊と会話するのは夢らしい。


 「ふむ、それは興味深い、はっきり言ってちょっとうらやましいぞ。」


 あら、ソルガさんも精霊と会話ししたいんだ。

 ソルガさんはあたしたちに向かって言う。 


 「エルハイミ、ティアナ、機会が有ったらぜひ私にも精霊と会話させてもらいたいものだ。」


 「いいわよ、今度うちの開発するところに来てください。」


 ティアナが快諾するけど、部外者見学っていいのかな?

 まあ、協力者って事で契約書取れば大丈夫だろうし、ソルガさんってそう言う所は堅そうだしね。

 むしろほかの精霊も呼び出し出来そうだからさらに色々出来るかも?



 「そうだエルハイミ、昨晩イチロウ・ホンダが戻ってきたぞ。一応先に話をしておいたので後で『緑樹の塔』に行くがいい。」


 ソルガさんはそう言いながら魔晶石核を興味深そうにいじっていた。


 

 予定より早くイチロウ・ホンダさんに会えそうだね。

 よかった、これで師匠のお使いもちゃんとできそうだ。


 



 あたしたちは午後には「緑樹の塔」に訪れることにした。

  

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