第74話4-11新たな使命
4-11新たな使命
えーと何個目だっけ?
あれから一周間くらい経ったかな?
俺は今技術開発部で三桁を超える魔晶石核を作っている最中だった。
もう無理!
いや、魔力はまだまだ有り余ってるよ!
でもこうも単純作業じゃ嫌になってくる。
ピコピコ。
うん、ありがとうね、アイミも頑張ってるのはわかってるけどそろそろアイミにも魔力供給しなきゃだよね?
アイミは沢山のサラマンダーのちびを召喚しているけど、流石に魔力を消費するのでたまに俺が魔力注入してやらなきゃならない。
通常は魔力循環と外部マナ吸収で自分だけの稼働分は十分に足りているけど、流石に三桁超える召喚していれば体内魔力が減少してしまう。
お腹減るよね~。
アイミに魔力注入しながら俺自身も空腹を感じていた。
「アンナさん、お腹すきましたわぁ~。」
「あら、そう言えばもうこんな時間?エルハイミちゃんご苦労様、休憩に入りましょう。」
アンナさんは複製用の記憶魔晶石の作成を止める。
結局あの後宮廷会議に試作機の報告をして大騒ぎになり、マシンドールの正式採用が即決で決まった。
従来のゴーレム兵は戦闘は出来るものの戦闘はいたって単純、同調しても鉄鎧タイプのゴーレムでは動きが悪く、魔力消費も大きいので各要所要所の壁役で使用する方針に変わった。
マシンドールはその都度記憶魔晶石のアップデートをすると蓄積された戦闘データーのおかげで素人が使っても低燃費でかなりの戦闘が行える。
しかも初期型三台は格闘型だが、その後の八台は遠距離魔法攻撃ができるタイプになったがためにその戦闘力は一体で小隊並みの戦力を保有する。
まさしく黒の集団に対する切り札となったのだ。
と、聞こえはいいのだが問題はその動力源の核となる魔晶石核と記憶魔晶石の生産性が非常に悪いと言う事だ。
はっきり言って俺やアンナさん、アイミがいないと出来ないというブラックボックス化している。
多分捕獲されて研究されるとしても解析に、そして生産にかなりの時間と労力を必要とするだろう。
「エルハイミ~、ティアナたちがマカロン持ってきてくれたよ~!!」
マリアが技術開発部に飛び込んできた。
見るとちょうどティアナがロクドナルさんとサージ君を連れてお茶請けのマカロンを持ってきてくれているところだった。
「ご苦労様です、エルハイミ殿、アンナ殿。夕食の時間にはまだ時間がありますがお菓子を持ってまいりましたわ。」
ティアナはそう言ってサージ君にお茶の準備をするように言う。
「ロクドナルさん、試作機たちはどうですか?」
アンナさんが同行したロクドナルさんに近況を聞く。
「すこぶる快調ですぞ。すでに試作機、初号機は基礎体術とガレント体術三十六式を覚え、これから武具を使った基本型を覚えるところですぞ。」
試作機を含む初期型三台は体術のデーターを叩き込み、第二世代八体は遠距離魔法攻撃についてのテストを行っている。
この計十一体のデーターを今俺とアンナさんが作っているブラックボックス搭載の量産型に導入していくわけだが、量産型初期生産で最低二十四体、その後ユーベルトの生産ラインで二百五十体合計二百八十五体生産しなければならないわけだ。
「マシンドール量産機の初期生産二十四体は早ければあと二、三日で義体が出来上がるそうです。技術開発部の職員も借り出しされて工房で徹夜で進めているそうです。」
お茶を飲みながらティアナは現状を教えてくれる。
うう、どうりで最近研究員の姿を見ないと思ったらそっちでこき使われていたのか。
おかげでこちらは事実上アンナさんと俺とアイミの三人でブラックボックス作成に勤しんでいる事になる。
「そうしますと、こちらの作業が終われば今度は量産初期生産二十四体の作成に入らなくてはですね。」
アンナさんはお茶を飲みながらカレンダーを見る。
「殿下、エルハイミちゃん、二十四体の生産に関しては私が技術員たちに指導をします。その後のユーベルトの大量生産については任せても大丈夫でしょう。そこで、相談ですが魔法学園ボヘーミャへは先に戻ってもらおうかと思います。」
「そんな、アンナさん私も手伝いますわよ!」
突然の申し出に俺は思わず異論を言う。
「そうですよ、アンナ殿。学園都市には皆で戻りましょう。」
ティアナもそう言うがアンナさんは首を横に振る。
「殿下、エルハイミちゃん、お気持ちはうれしいのですが私はこの後宮廷会議で学園都市ボヘーミャに更なる開発の協力を要請つもりです。エルハイミちゃんならもう気付いているのではないですか?」
そう言ってアンナさんは俺を見る。
・・・
まあ、そうだよなぁ、今のままじゃ多分ダメなんだよなぁ。
「エルハイミ殿、どういうことですか?」
「ティアナ殿下、この子たちはアイミと違い寿命があります。」
「?」
「やはり気付いていましたね、エルハイミちゃん。殿下、今次開発したマシンドールは多分もって二年。長くて三年で寿命が来ます。魔晶石核のサラマンダーがそれしか持ちそうにないのです。」
そう、アイミが召喚したサラマンダーは精神生命体。
魔晶石に封じ込めてもこの世界で存在できる時間が多分それくらいだろう。
別にサラマンダーが本当に死ぬのではなく、この世界に存在できる限界値がその位だと言う事だ。
俺が大量に魔力を注ぎ込めばあるいはもっとこちらに居られるかもしれないが、もともとイフリートに比べて格が違い過ぎる。
どんなに頑張ってもゆくゆくはそれは霧散していなくなってしまう。
つまり魔晶石核が機能停止してしまうのだ。
「ですので、殿下たちには先に戻ってもらい、師匠たちに開発協力をお願いしてもらいたいのです。私はこちらガレント王国側の資金調達等審議を通らせますので。」
むう、流石にアンナさん、既にそこまで考えての行動か。
このやり方の方が確かに合理的だ。
「そうですか、せっかく開発したマシンドールに寿命が有ったのですか・・・」
考え込むティアナ。
しかし黒の集団に対抗するにはまずはマシンドールの配備が先決だ。
「わかりました、私からも陛下にお願いをしておきます。アンナ殿、私たちは先に学園都市ボヘーミャに戻ります。そしてアンナ殿を待つことにします。」
ティアナの決断で方向性は決まった。
果たしてあちらで魔晶石核に匹敵する機関が開発できるかどうか。
ガレントの技術だけでは限界があるだろう。
師匠だって流石にこう言ったことは初めてだろうからな。
ティアナが戻り学園側に早期に要請をすればこのプロジェクトは正式に始まる。
師匠がもともと気にしていた抑制力としても大いに貢献できるだろう。
これは更なる努力が必要だな。
「分かりましたわ、アンナさん。あちらで待っていますわよ。」
俺は手に持つ魔晶石核を見つめた。
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