第66話4‐3将棋の魔力

4‐3将棋の魔力



 朝からティアナとオセロ対戦させられている。


 馬車に揺られる室内ではうーん、うーん、唸ってるティアナの声がこだまする。

 まさかこれほどはまるとは思っていなかった。

 昨日暇つぶしで作ったオセロのお披露目をしてティアナと遊んだのだがそれが悪かった。

 まさか大ヒットで宿場の村についてからも対戦やろうと結局朝方までやっていた。


 結果、寝不足なままで馬車に揺られる羽目となった。


 「ティアナ、一休みしません事?そろそろお昼でもありますし。」


 「まって、もう一局、もう一局だけお願い!」


 何度もう一局をやったか既に数える気も起らない。

 どうしたものかふと横を見るとアイミが暇そうに耳をピコピコさせている。



 うーん、どうかな?



 「アイミ、あなたもこれやってみません事?」


 ぴこぴこ?


 「ティアナもたまには対戦者を変えてみるのも面白いですわよ?」


 ぴこぴこっ!


 どうやらアイミもやってみたいようだ。


 「え?まあいいけど、アイミこれ出来るの?」


 マリアにやらせようとしたら駒を動かすだけで疲れるからいやだとか言ってたけど、アイミならできる。

 学習能力はそこそこあるからもしかしたれできるんじゃないかと試してみる。


 ぴこっ!


 耳をぴんと立てて胸を張る。

 どうやらできると言っているらしい。


 なので場所を代わりティアナと対戦を始めさせる。


 「流石に初心者のアイミに負けることはないけど、たまにはエルハイミ意外とやってみるのも面白いわね。さあ、アイミかかってらっしゃい!!」


 ぴこっ!


 こうしてティアナ対アイミのオセロ対決が始まったのである。




 ・・・

 ・・・・えっ?



 「な、なんで?これはどういうことっ!!?」


 しばらく見ていたが、なんじゃこれ?

 ティアナが駒置くとすぐにアイミは駒を置いてどんどん自分の色に変えていく。

 ほどなくティアナが負けてしまった。


 ぴこっ!


 なんか勝った、うれしいと言っているようだ。

 ティアナは肩をプルプル震わせ引くついた笑いをしている。


 「ア、アイミなかなかやるわね、今のはちょっと手を抜いたけど今度は本気で行くわよ!もう一回勝負よアイミ!!」


 ティアナは腕まくりするしぐさをしてアイミと再戦を始める。

 対戦することしばし、再びティアナの方が震える。


 「あ、ありえない!なんでアイミがこんなに強いのよ!!アイミ、もう一回やるわよ!!」


 あっさり負けたティアナはまたまたアイミと対戦を始める。

 しばらく様子を見ていたが、結局ティアナは一度も勝てず、馬車も止まってお昼の支度が始まる。

 

 「エ、エルハイミぃ~っ!!アイミが強すぎるぅ~っ!!」


 珍しく涙目のティアナ、あ、これ結構かわいいかも。


 「まあまあ、ティアナもずっとゲームのしっぱなしでしたから脳みそが疲れているんですわ。お昼ご飯を食べて一休みすれば次は勝てるかもしれませんわよ。」


 泣きついてくるティアナをよしよしとする。


 

 

 道中だが簡単な食事は作れるのでサージ君が中心で作ってシチューとパン、チーズがみんなに配られる。

 俺たちはそれを受け取り、食べ始める。


 「いやはや、ずっと馬車に揺られるというのはさすがに退屈ですな。」



 あ、ロクドナルさん、そういうことは今は控えた方が・・・



 「確かに、手持ちの魔導書も読み終わってしまいましたし。」



 アンナさん、フラグ立てないで!!



 「それならオセロやりましょうよ!!」



 はい、もう手に負えませんね。

 諦めます。

 今度は馬車の席配置変えてもらってロクドナルさんとアンナさんにティアナの相手してもらいましょうか。



 「殿下、オセロとは何ですか?聞いたことありませんが。」


 「エルハイミが作ったゲームよ!昨日からやっているのだけど、これが面白くて面白くて!」


 元気に答えるティアナにアンナさんやロクドナルさんの視線が俺に集まる。


 「エルハイミちゃん、いつの間にそんなものを作ったの?」


 「して、殿下オセロとはどういったものでありましょうや?」


 ああ、みんな意外と興味津々だ。

 

 「まっかせなさーい!あたしが教えてあげる!!まずはこのボードにね・・・」


 まあ、ルールは単純なのでティアナでも説明できるよな?

 俺はパンにシチューを浸しながら黙々と昼食を食べる。

 うーん、おいし。


 食べ終わるころにはティアナを中心になんと騎士団まで集まっている。

 そんなに珍しいのかね?


 「エルハイミちゃん!!これエルハイミちゃんが発明したの!?」


 と、アンナさんがこちらに慌ててくる。

 どうしたんだろう?


 「はい?まあ、発明というかなんというか、暇つぶしにいいかなって思いまして。」


 「素晴らしいです!!単純な中にも智略的戦略、そして会話の中でのやり取り!まさしくこのゲームは革命的知的戦略ゲームです!!」



 あ、アンナさん?

 ものすごく興奮しているのだが、大丈夫かな?



 「このゲームは他にはないのですか?」


 「えーと、オセロはそれだけですが、もう一つ『将棋』っていうゲームもありますわ。」


 生前、俺も将棋は下手の横好きで一応初段までは取れてた。

 よく田舎の爺さんと子供のころ打っていたので会社でも昼休みに同僚と遊んでいたので結構好きな方なんだが、初心者は覚えるまでに時間がかかる。

 なので、今回は先にオセロを出していたのだが、この流れって・・・


 「エルハイミちゃん、是非その『ショウギ』ってのも見せてください!」


 興奮したアンナさんは目を輝かせて期待してこちらを見ている。

 仕方ないので、将棋の盤と駒やルールなどが書かれたボードを取り出す。


 「えーと、こっちの方はオセロより難しいですが、慣れるとかなり面白いですわ。」


 そう言いながら将棋盤に駒を並べていく。

 それに気づいたティアナたちがこちらにやってきた。


 「なになにっ?エルハイミまだ面白そうなものがあるの!!?」


 「ええ、これは『将棋』って言って軍隊を率いて相手の王将を倒すゲームですわ。」


 「なんと!軍隊を率いてですとなっ!!?」


 なんかロクドナルさんがものすごい反応を示す。


 「ね、ねっ、それはどうやって遊ぶの??」


 俺はあらかじめ準備しておいたボードをみんなの前に出す。


 「具体的にはやりながら覚えなければならないですが、とりあえずわかりやすいようにここに駒の動かし方やルールの説明を書いておきましたわ。」



 そう言って、アンナさんに相手をしてもらうこととする。

 

 「まずは先攻後攻を決めて、駒を移動させますわ。」

 

 そう言ってとりあえず歩を動かすが、指先でつまんで盤にびしっと指すと心地よい音で パシンっ! と鳴る。

 周りからおおーっと感嘆の声が上がる。


 「これは何とも心地よい音が出ますな!」


 ロクドナルさんが顎に手を当てながらうんうんとうなづいている。

 まあ、これが将棋の醍醐味でもあるんだけどね。

 慣れないと指先でつまめないのも良いところなんだよな。

 アンナさんが考えながら同じく歩を動かすが、こちらはいい音が立たない。



 ふっ、アンナさんまだまだだな。



 それからしばらく説明をしながらやっていくが、結局初心者のアンナさんが負け、俺が勝った。


 終わった時には周りから歓声が上がる。



 「これはすごいですな!倒した武将を自分の手ごまとして使えるとは!」


 「そうですね、しかも相手の陣地に入ると力が数段跳ね上がるルールというのも斬新ですね。」

 

 「確かに、しかも守り一手では自軍がどんどん弱まってしまい、相手にどんどん隙を与えてしまうとは!伏兵のようにいきなり自分の駒を置けるというのも素晴らしい!」



 なんかみんなワイのワイの始まってる。


 

 えーと、皆さん??


 

 それからほぼほぼ全員でオセロと将棋にはまって何度も何度も対戦を繰り返している。



 「エルハイミさん、近くで狩りしてきますのでしばらくお願いしますね。」


 「えっと、サージ君??」


 「晩御飯の準備しますので。ではっ!」


 そう言ってサージ君はさっさと消えた。

 俺はみんなを見る。

 そして思った。





 だめだこりゃっ!!  




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