第65話4-2帰路

4-2帰路



 ティアナの十歳になる誕生日を祝うと言う事で俺たちは一時帰国することとなった。



 大使館のフィメールさんが殿下への献上品だと言ってこれまた大量の誕生日の贈り物を用意してくれた。


 以前に大使館でに盛大に誕生会を開いてくれたというのに、本国で誕生日を祝うと言う事でまたまた贈り物を用意するなんてご苦労なことだ。

 俺たちは買い込んだお土産とそれら大量の贈り物も馬車に積み上げる。


 「それじゃ、そろそろ行きますかぁ。」


 ティアナのやる気のない号令で馬車に乗車を開始する。

 


 今回は移動速度を最優先にしたため、護衛は最小限に抑えることとなった。


 国境の砦から護衛として隊長のバナードさんを含め五人の騎士が護衛につく。


 まあ、本来はいなくても大概なことが無ければ今の俺たちに問題は無い。

 山賊や魔獣が出たくらいではどうとでもなる。

 ましてや今回はマシーンドールのアイミもいるし。


 しかし、流石に全く護衛も付けずに移動することもできず今回はバナードさんたちにお願いする事となったのだが、指名を受けたバナードさんは大喜びでこの任務に就いた。



 今回ティアナの方には俺とアイミ、それにマリアが同席し、もう一つにはアンナさんとロクドナルさん、サージ君が上席する。


 ティアナ直属のメイドのラミラさんとサリーさんは今回居残りとなった。

 最近知ったのだがあの二人サージ君と同じ隠密行の一族だそうな。


 

 「出発!」


 バナードさんの号令で馬車が動き出す。



 さらば魔法学園ボヘーミャ!

 当分師匠のシゴキが無くなると思うと俺はものすごくうれしくなるのは内緒だが。



 「ねえねえ、ガレントってどんな国なの?あたしミロソ島とボヘーミャしか知らないからどんなとこだかおせーて!!」


 マリアがパタパタと俺とティアナの間を飛ぶ。


 ぴこぴこ!


 アイミが腕差し出しマリアに座るよう進める。

 マリアはおとなしくアイミの腕に乗っかってティアナの方を見る。


 「まっかせなさーい!ガレントの事ならあたしがいろいろと細やかなことまで教えてあげる!」


 早速暇つぶしの相手を見つけたティアナが上機嫌でマリアにガレントの話を始める。



 うん、そっちは任せて俺は最後の作業に入るか。



 え?

 なんの作業かだって?

 ふっふっふっ、実は今将棋とオセロを作っているのだよ!!



 今まで何で気付かなかったのだろう、旅のお供にして鉄板アイテム!

 俺はその事実に思い当たった時にかなりの衝撃を受けたものだ。

 

 お土産を買い出しに行ったときにこの鉄板アイテムを作るためにいっしょに部材を買い集めておいた。

 加工に関しては【創作魔法】を駆使してなかなかの力作ができた。

 

 そして、今、将棋の駒に最後の文字を書き込んでいるところだ。

 文字はもちろんコモン語で書く、じゃないと日本語じゃ誰も読めないもんね。

 駒に書き終わったら雑貨屋で買っておいた小さな袋に入れれば完成だ。

 後は分かり易くするためにボードにコマの動き方とルールの説明を書いておく。 

 今回こだわりは将棋盤も厚手の硬い板を探して駒を撃った時にいい音が出そうなものを選考している。



 それとオセロも今回頑張った自信作だ。


 ゲーム盤には滑り止めもかねてわざわざ探してきた緑色のカーペットを使用して、見た目が前世のそれと同じように仕上げている。


 そしてオセロの白黒の駒もたまたま見かけた重し石が白っぽいのと黒っぽいのがあったのでそれを買ってきて魔法で加工、髪の毛につける艶出しの油で磨き上げたので非常に手触りもいいし見た目も光沢が少し出ていい感じ。

 こっちはルールも簡単なので説明のボードは書かない。

 将棋同様に小さな袋に入れて完成だ!



 俺がコツコツと作業をしていると話がひと段落したのかティアナとマリアがこちらによって来る。


 「さっきから一人で何やってるのよ、エルハイミ?」


 「なになに?おいしい食べ物??」



 俺はにやりと笑ってこの二人にまずはオセロを見せる。


 「うふふふですわ!ティアナ、マリア、このゲームやってみません事?」


 そうしてオセロを見せる。

 

 「なにこれ?緑色の板?」


 「それと白黒のボタン??」


 二人は初めて見るそれに興味を持ったようだ。

 

 「いいえ、これはこうして遊ぶものなんですわ!」


 早速俺は遊び方を教える。


 「最初にこうして白と黒を二つづつ並べて、順番にコマを置いて行って相手の色を挟むと自分の色に変えられるんですの。そして最後に自分の色が多い方が勝ちですわ!」


 「ふうーん、面白そうね、早速やってみましょう!」


 まずは俺とティアナがやってみる。

 

 「よっと、これで私の方が白が多くなったわよ!」


 「ふっふっふっ、ティアナ甘いですわ!ここをこうすると~ほら、大逆転!!」


 「えっ、うそ、ずるいっ!」


 「ずるではありませんわ、二手三手は最低限読んでおかなきゃダメですわよ。」


 「くうううぅぅ、もう一回!もう一回勝負よ!!」


 「ええ、かかってらっしゃいですわ!」


 そうして俺たちは何度も何度も対戦を繰り返していた。



 ◇




 「殿下、宿場に着いたのですが・・・」


 「ごめんっ、アンナ、もう一局だけやらせて!エルハイミ今度こそは負けないわよ!!」


 「あの、ティアナ?いったん宿に入ってからにしませんかしら?」


 「お願い、もう一局だけでいいから今すぐやろう!」


 「ティアナ・・・」


 まさかここまでハマるとは思っていなかった。

 ここまでほぼほぼ無休憩でゲームをしていた。





 俺は思った。

 将棋は封印した方が良いのかもしれないと。

  

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