第53話3-28特別授業?

3-28特別授業?



 ぜぃぜぃ・・・ 

 

 肩で息をしている。



 なんなんだよこの授業!?

 学園長自ら魔術の実技に関しては特別授業と言う事で指導をつけてもらっているわけだが、すでにアンナさんとロクドナルさんは倒れている。

 辛うじて踏ん張っているティアナだってそろそろ魔力切れを起こすだろう。


 それほどまでに学園長、英雄の一人魔法戦士ユカ・コバヤシの授業は常識離れであった。



 聞いてないよぉおぉぉぉっ!!



 今俺たちは学園内で学園長が良く使う試験場で指導をしてもらっているのだが、これがまたでっかいドーム状の広場である。


 学園都市ボヘーミャはその運営資金調達の為各国からか魔術試験なども依頼される。

 当然危険な内容のものも有るのだが、物がモノなだけに秘匿されるようなものも有る。

 なのでこう言った試験場が必要となるのだが、今日で三日目のこの授業、いや、ティアナたちは十日目か? 念動魔法で両手両足についた鉄の重りをコントロールしながら学園長の攻撃をよけろって、何それっ!?

 

 そりゃあ、学生服着てるから多少の直撃でもほぼノーダメージで済むけど、常に四つの重りをコントロールしながら攻撃をよけるのって無理!!

 

 魔力の多い俺やティアナは何とか重りをコントロール出来てるが、アンナさんやロクドナルさんは早々に魔力切れを起こし学園長の攻撃で失神していたりする。


 流石にやり過ぎではないかと聞けば、中途半端なやり方では本当の魔力操作が身につかないとか。

 限界ぎりぎりまで魔力を使い、いかに無駄を削りいかにその精度を上げるかが重要で、使いこなせればやみくもに魔力を放出するようなことは無くなるとか。

 

 「はいはい、休んでないで次行くわよ!体内の魔力を循環させて放出ばかりでなく回収もしなさい!」


 そう言って学園長は【炎の矢】を無詠唱で三十本近く出現させ俺とティアナに向けて打ち出す。


 「うにゅあぁぁぁぁぁぁっ!!」


 「ひゃぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」


 俺とティアナの悲鳴がこだまする。



 こんな感じでいつも俺一人が最後まで残るのだが、そこからが本番と言わんばかりに学園長は攻撃をさらに激しくして来る。


「さて、他の子はもうダメみたいだからそろそろ本気で行きます。エルハイミさん、いいですね?」


 「よ、よくありませんわぁぁぁぁぁぁああああぁっっっ!!」


 こちらの言う事なんて聞かない、学園長は無詠唱でファイアーボール【火球】を一度に十二個も出現させ八方から打ち込んでくる。


 慌てて【絶対防壁】の魔法を展開するも全方向になんか展開しきれない。

 間に合わない所へは【氷の矢】アイスアローを打ち込んで相殺する。


 もうそれだけで魔力がぐんと減るのだが、それを最小限で押さえ、なおかつ余剰魔力の回収しろってどうやんだよっ!?


 「相手の攻撃魔法の魔力以上で対処するのは無駄です。ぎりぎりで迎撃しなさい。それと、迎撃時に余剰分はすぐに魔力に戻して回収!時間を放置すればするほど浪費です。」


 そう言って連続で今度は大地を突起させる【地槍】アーススパイクを発動させる。

 突起が発生する前に大地に魔法陣が現れるので出現場所はわかるもののその展開速度が速い。

 ほほを引きつらせながら防壁魔法を展開し、重力魔法で自分の体重と重りを軽くして跳ね飛ばされた後にも無事着地できるようにするのだが、学園長はそんなに甘くない。


 着地地点に今度は【氷の矢】を撃ち込む。


 冗談ではない! あんなのまともに喰らったらいくら優秀な制服でも防ぎきれない!

 死にはしないがその場で氷漬け確定である。


 急ぎ【炎の矢】で迎撃しようとしてふとさっきの言葉を思い出す。


 

 「攻撃魔法の魔力以上で対処するのは無駄です」



 その言葉に【炎の矢】の威力を半減程度の魔力で打ち出す。

 【氷の矢】と【炎の矢】はぶつかり合い、ほぼほぼ相殺するがわずかに【氷の矢】が残る。

 しかし威力はほぼ無く、その場で地面に落ちる。



 あっ!



 「よくできました。その感覚を忘れずに!次行きます!!」


 「いやっ、ちょっとまってですわぁあああぁぁぁぁっっ!!」


 流石に魔力切れを起こし、俺は次の攻撃であっさりと失神をした。

  



 全員が魔力を少し補給され、回復魔法で身体的に回復される。

 更に【浄化】魔法で体や服の汚れまできれいさっぱりにされてから本日の特別授業は終わり。


 学園長はあれだけの魔法を使ってもピンピンしている。

 そもそも無詠唱魔法使えるのはものすごくまれじゃなかったのかよ!?


 「あ、あの学園長、なんで魔術操作の実技で実戦さながらの戦闘させられるんですの?」


 一番疑問だったことを聞いてみると、あっさりととんでもない答えをしてきた。


 「そうね、私はこう言った方法でしか魔術操作の極意を伝える術を知らないのよ。毎日魔人たちと死闘を繰り返していたのでこの方法ならば確実に身につくことは知っているのだけどね。」



 おい、それって教育者としてどうなんだよ!?



 そりゃあ英雄の一人なんだから何度も死線をくぐっては来ているだろうけど、その感覚で俺たちにそれをやらせようとは無理があるって!!

 何かとんでもない間違えをしてしまったのではないだろうか?


 なぜこうなった?

 

 「エルハイミさん、先程の迎撃はなかなか良かったですよ、その調子で明日も頑張りましょう。」


 ものすごくうれしそうに言う。

 もしかして学園長、ストレス発散に俺たち使っていない??


 「学園長!明日もよろしくお願いします!」


 「流石ボヘーミャ、実技の授業も素晴らしい!ここまでハイレベルな魔法操作を目の当たりにできるなんて!」


 「いやはや、流石魔人戦争の英雄、感服いたしました。明日もぜひお願いいたしますぞ!!」



 えっ!?

 なんで??

 なんでみんな疑問持たずにやる気満々なんだよ!??



 ぴこぴこ~。


 なんかマシンドールのアイミが俺の元まで来て肩に手を当て相づちを打っている。

 

 俺は心な中で叫ぶ。




 なぜこうなったぁぁぁああぁぁぁぁっっっ!!??


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