第24話2-18後始末

2-18後始末


 

 国境の砦に到着早々問題が有ったがティアナのおかげですっかり解決して俺たちは砦に戻り始める準備をしている。



 と、馬に乗る前にティアナが寄ってきた。


 「うあー、疲れた、エルハイミ、悪いけど砦に着いたら休ませて。」


 「ふふっ、すごかったですわティアナ。でも魔力をほとんど使いきってしまったのでしょう?」


 「ええ、そうみたい、意識がもうろうとするわ。」


 二日酔いのようにこめかみを押さえティアナは軽く頭を振った。



 顔色もちょっと悪いな。

 かなり疲れてるのだろう、んでは。



 俺はティアナの額に手をついて魔力を流し込む。

 一瞬驚いたティアナだが、流れ込む魔力の心地よさに弛緩した表情を取る。


 「なにこれ、回復魔法?うあー、すごく楽になる。」


 「完全回復はできませんが、私の魔力をティアナに流し込んでいるのですわ。」


 「え?そんなことできるの?純粋に魔力を他人に流し込むのってできるの?」


 だいぶ元気になったので魔力を流し込むのをやめて俺は会い向かいになる。

 ぱちくりと瞬きをするティアナ、なんかかわいいなそのしぐさ。



 と、近くにいたアンナさんが慌ててこちらに来て質問をする。


 「エルハイミちゃん、魔力移転ってどういうことですの?」


 驚き顔のアンナさん、そんなに驚くことかな?


 「ええ、回復魔法の原理は魔力による肉体の回復促進ですが、その回復促進をさせず単に魔力を流し込んでるのですわ。」

 

 とりあえず包み隠さず事実を話す。 

 

 

 「つまり、効果を回復でなく単に魔力注入していると言う事ですの?」

 

 「そう言うことになりますわね、ただ、相性があるみたいで誰にでもできるというわけではないようですわ。たまたま私とティアナは相性が良かったようですわ。」

  

 にっこりとしてアンナさんを見る。


 またまた驚き顔になるアンナさん。

 アンナさんは何か考えるようなしぐさをしてぶつぶつと独り言を言い始めた。

 


 あー、また自分の世界に入り込んでいる。

 ロクドナルさんを見ると爽快に笑っていた。

 どうやらいつもの事らしい。



 「うーん、気分も良くなってきたから砦に戻りましょう!なんだかお腹も減ってきたわ!」


 元気にティアナが言う。

 俺はにっこりと賛同して、そっと建物の物陰にいるサージ君に彼だけが聞こえるように小声で話しかける。


 「殿下はもう大丈夫ですわ、お役目ご苦労様ですわ。」


 物陰からやや動揺する気配がしたと思ったらすぐに消えた。


 ふふっ、こう見えても感知魔法で周囲の状況位把握していたのだよ。


 もっとも、ティアナがイフリート呼び寄せるとは思わなかったけど。

 本来は近くの岩を使ってゴーレムで押さえつけようかと思ってたんだよね~、俺は。

 そんで岩を探すのに感知魔法を使ったら驚いたことにサージ君含め三人の反応があって驚いたよ。


 パパン、一人じゃなくて三人だったよ、まあ実働部隊の全容までは伯爵にまでは伝わってないのだろうけど。


 でもサージ君以外に感じたあの反応、いったい誰だろう?

 サージ君に面と向かって聞いても多分答えてくれないだろうし、早馬も無しに追いつけるなんてよほどの身体能力。

 これはもしかすると全くの別同部隊もいるんじゃないだろうか?


 以降も一応気をつけておこう。



 そんなこんなで馬にまたがり砦へと帰還した。





 砦では副隊長がティアナの安全な姿を見て心底安堵のため息をついていたが早急にティアナ殿下歓迎のやり直しを提案してきた。


 まあ、もともと歓迎の準備もされていたし、早い所ご飯も食べたいのでさっさと歓迎を受け、遅れ到着したバナード隊長とロナード護衛隊長を含めささやかな宴を開く。



 そう言えば何でこんな人里近くにあんな魔獣が出現したのだろう?


 この辺にまで来ると気候的には温かくなって食料も森には豊富にあるだろう。

 わざわざ人里まで魔獣が下りてくるなんて珍しい。



 そんな疑問をバナードさんに聞いてみると、最近森の中で不穏な動きがあるらしい。


 なんじゃそりゃと思ってよくよく聞いてみるものの、バナードさんたちもまだその全容を把握しきれていないとか。

 村の狩人も最近は森の中で獲物が少なくなっていると言っているらしく、徐々に影響が出始めていた矢先だとか。


 確かにここより先はガレント王国じゃないからあまり勝手な動きは出来ないけど調査ぐらい始めるべきじゃないだろうか?

 ティアナもそこんところが気になったようで、お姫様からの直接の命令が下った。


 「よいですか、いかに他国とは言えボヘーミャとは友好的な関係にあります。ボヘーミャ領の村とは言え我が国の砦に協調的なのですから今回の件も含め森での調査協力をするようになさいませ。」


 やんわりとご命令。

 バナードさんはかしこまって御意と言いながら片膝をついた。


 辺境の温和な場所だから兵隊さんも気が緩んでるのかな? 

 まあいい薬だから黙っておこう。


 後は彼らがやることだし、俺たちはもうすぐ学園だ。




 肉体労働をした後のアップルジュースは格別だね~。


 こんばんはしっかりとここで休ませてもらって、明日はいよいよ魔法学園ボヘーミャに到着予定だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る