第13話2-7招聘

2-7招聘



 ママンのご懐妊が発覚してからハミルトン家は大騒ぎになった。




 実はお世継ぎがいないハミルトン家はもしこのままいけば俺に婿を取らせる他無かったのである。

 もし男の子が生まれれば、俺としてはお役目御免で少し肩の荷が下りる。



 やだよ、男とくっつけられるの。



 ちょい悪親父の父親、ホーネスは上機嫌、もちろん爺様も期待をしている。

 できれば弟が生まれてほしいものである。




 と、そんなごたごたから約一週間が過ぎた頃である。


 王都から手紙が届いた。


 それはエドワード国王からの通知で二通あった。

 一つは俺の王宮への招聘。

 もう一つは招聘と同時にティアナの帰還である。


 ティアナの帰還はわかるとして、俺が王宮へ招聘されるってどーゆー事?

 

 手紙には公式の招聘で是非とも宮廷魔術師に面会させたいとか。


 うーん、なんかいい予感しない。

 面倒事しか無い様な気がする。

 しかし、国王陛下直々の招聘なので断るわけにはいかない。


 仕方なく俺とティアナは二週間後に迎えが来るまで大人しくしていることとなった。


 

 

 ジーナさんの講義も終わりいつもの午後のお茶を楽しんでいる。

 俺は気になってティアナに聞いてみた。


 「ティアナ、陛下が私をお呼びになるとはどういう事でございましょうか?」


 お茶をすすりながら直接ティアナに聞いてみる。


 「うーん、そうね宮廷魔術師に合わせたいって事だから、エルハイミの魔術素質を見たいんじゃない?なんかあたしも同行しろって書いてあるけど。」


 ティアナは相変わらずお行儀悪くマカロンを口に運んでいる。



 会わせてどうする?

 まさかそのまま宮廷魔術師について魔術を習えとか?



 ティアナはマカロンをもごもご食べながらお行儀悪くしゃべる。

 ほんと、ジーナさん居なくて助かった。

 

 「最近うちの国は魔術師の人材が乏しいってお父様が言ってたから、見込みのある子は早いうちに宮廷魔術師に鑑定してもらうらしいわね。」


 「鑑定ですの?」   


 「そう、鑑定。なんでもそれで素質を見出して魔術師としての方向性を指導するらしいの。それで大人になったときには宮廷魔術師として招聘される人もいるらしいわよ。」


 うーん宮廷魔術師か。

 ちょっと興味はあるな。

 将来安泰だし。


 「でもね、私たちってまだ十歳にもなってないでしょう?だから今回の鑑定はあまり期待できないと思うんだよねぇ。」


マカロンを口に運びながらティアナは言った。


 「ティアナ、それってどういうことですの?」


 「うん、なんでも普通は十歳くらいで鑑定をしてそれで師匠を決めてその人に合った魔法を習得させるのが普通らしいわよ。でも、あまりに小さい時に鑑定しても上手く行かないことが多いらしいからあまり期待はできないと思うんだ。」

 


 つまり、得意の魔法を習得させて早期に国益に繋げたいと言う事か?

 


 「最近北のホリゾンが活発な動きしてるって噂だしね~。」



 ん?

 北のホリゾン?

 確かホリゾン帝国だったよな?

 今は軍事国家で世界最強だって聞いた事あるけど。



 「ホリゾンがどうかいたしまして?」


 「うん、今はうちの国とは不干渉でいるけど、十年くらい前にあそことうちの国は戦争してたのよね。あなたのお母様もその時には参戦してたのよ?」


 「え?」


 俺は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。

 そんな俺を見ていたティアナはあきれ顔で言う。


 「前にも話したじゃない、叔母様は稀代の魔女ユリシアって。忘れた?」


 「いえ、そういうわけではないのですが、その話は聞かされていなかったのですわ。」


 もごもご咀嚼していたマカロンを飲み込んでティアナは紅茶をすすってからほうっと息を吐いた。

 そのしぐさは七歳の少女とは思えない愁いを帯びていた。


 「まあ、楽しい話じゃないからかな?いいんじゃない、そのうち教えてくれるわよ。」


 そう言ってまたマカロンを口に運んだ。

 


 ◇


 

 そんなこんなで約二週間が過ぎ、俺とティアナ殿下は王宮に向かう事となった。

 

 迎えの馬車や王宮騎士がずらずらとやってくる。

 ざっと見ただけで五十人近くいるよ。

 近衛隊らしいけど、なんか普通の鎧よりきらびやかな感じがする。

 

 「あーあ、来ちゃったわね。仕方ないけど帰るか~。」


 心底残念そうなティアナ。

 

 「また遊びに来られればよろしいではないですか?」


 「うん、是非ともそうしたいんだけど、なかなか自由が利かない身なのよ。ああ、次はいつになる事やら。」


 かなりぶうたれている。

 俺は内心苦笑して王家の人も大変だなと付け加えた。



 

 そして俺とティアナ、そして伯爵である父ホーネスとは馬車に揺られて王宮へと出発したのであった。

 


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