第3話1-2テリトリー拡張中

1-2テリトリー拡張中



 自分の置かれた状況を理解してからの俺はとにかく情報が欲しかった。



 あの後可能な限り体を動かし、おっぱいをもらい、寝返りをしたり四肢を駆使してほふく前進を始めたりと順調に人への進化を始めた。


 まあ、親ばかなのはどこでも変わらないのだろう、俺が寝返りしたりほふく前進したりするたびに母親は歓喜の声を上げ、父親を呼びに行く。

 律儀に父親も時間さえあればその様子を見に来る始末。


 子供の成長は親にとってうれしいんだろうなぁ~、俺にはわからんけど。  

  

 そうして部屋の中を動き回っていた俺はすくすくと育ち、二足歩行を成功させるにまでなった。


 この頃になると少しずつ声も言葉っぽくなり、母親をママと呼べるようにもなった。

 もちろん、言葉も少しずつ覚えてき始めママやパパと言う単語やごはんであるおっぱいも言えるようになってきた。


 初めて母親をママと呼んだときは父親がすごく悔しがっていたようにも見えたが何だったのだろう?

 やはり最初に呼ばれた方が良いのだろうか?


 そう言えばママンはあの時勝ち誇ったような顔をしていたなぁ~。



 さて、そんな感じで順調に育ち俺は自分のテリトリーを拡張していった。


 まずは部屋の中のものを覚え、文字らしきものがあれば確認をする。

 見たことのない文字なので最初は何かの模様かと思った。

 それと部屋にかけてあったタペストリーの様なものには何かの物語だろうか?

 騎士風の男性が女性をかばいながらグリフォンの様な怪物と剣を交えている。

 この世界にはもしかしたらゲームの世界と同じく魔獣や怪物がいるのかもしれない。



 その他にもよくよく観察すると給仕のメイドあたりでも簡単な魔法はみんな使えるっぽい。


 ママンと同じくごにょごにょ言った後に明かりの魔法が出てきてそれをいつも所定の場所に定着させている。

 人によって明るさや持続時間が変わるらしく、一番長く安定させられるのはママンであった。



 そして時たま抱きかかえられて部屋の外に連れ出されるが、この家でかくねえか??

 お屋敷、いや、ちょっとしたお城くらいあるんじゃないか?

 庭だってやたらと広く手入れのされた植物は見事な花を咲かせている。


 父親はよく外出するらしく、何度か馬車で移動するのを送迎したがその時に出迎えや見送りで並ぶ使用人の数が多い事。

 甲子園の試合前のあいさつで並ぶ高校生球児より並んでいる人数が多い。

 実際にこれ以外に料理人や庭師、馬の世話役や雑用人まで入れればまだまだ人がいる。



 もしかして、転生した俺って既に勝ち組??



 うーん、これで女じゃなけりゃ勝ち組決定だったんだろうなぁ。

 今は良いけど年頃になったら政略結婚か何かの道具にされるんじゃないだろうか?



 残念ながら俺は男相手に結婚なんて絶対にごめんだ!

 体は女でも心は立派な男の子です、わたくしめは!



 まあ、まだ時間はあるからまずは情報だ。

 言葉を理解し、この世界を理解し自分が何者で何ができるかを早急に見極めて自分の進む道を探さなければきっとどこぞの馬の骨ともわからない野郎とくっつけさせられてしまう。


 それは何としても阻止しなければ!




 そうかたくなに心に誓うのであった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る